ラテン・アメリカの激しい鼓動に誘われ コロンビア・メデジン
期間:指定なし
[リスヴェル編集部]2018年01月29日公開

エリア:南米  > コロンビア / ジャンル:観光情報・観光局・現地便り , 

かつて、グラン・コロンビア大国を成した南米大陸北東部の街はどこもよく似ている。険しく聳える山並みを背景に林立する高層ビル、山腹に蔓延る土色のスラム、旧市街地のコロニアル風の佇まい。通りを闊歩する混血の若い美男美女の群れ。どの街も危険や汚職が潜み、血みどろのドラマの舞台となってきたのも関わらず、ランドスケープも人々も一際美しい。

標高のせいだろうか、薄い空気の、微かに火薬を孕んだような旋律。それは、恋焦がれた人に出会った時のような胸の高鳴りを引き起こす。ぬるま湯のようにラクな東京が本妻だとしたら、ラテンの街は禁断の愛人のようなもの。決して長居の許されない地で、心身が炎上するような短く太い滞在を貪るしかない。

アンデス山麓、標高1500mのメデジン、首都ボゴタと比べると高度は1000mも下がるのに、足を踏み出した途端に心臓が波打つ。光彩が際立つのはカリブ海が近いせいか。1990年代に世界最高の殺人発生率を記録した街は、政府が麻薬カルテルと周辺ジャングルのゲリラをほぼ一掃し、現在は南米を代表する商都として力強く蘇っている。

すり鉢状の街の山腹から山頂までびっしりとスラムが覆うが、ここ数年の間にロープウェーや屋外エスカレーターなど交通インフラが整えられ、山麓の街と繋がったことで一挙に治安が改善されたという。魔境とされたスラムの中心部を350mに渡って上る、エスカレーター。この開通で、周囲の住民は家を明るく塗り替え、カラフルなアート・グラフティが随所に出現した。人々が訪れるようになり、カフェや土産物店もできた。

世界で唯一のスラム観光地。民家の軒先カフェで、コロンビア・コーヒーを飲む。家主に「いいとこね」というと、「ああ、でも暗くなる前に帰んな」と、笑顔だが強い眼光で返された。カフェインの効いた強いコーヒーは、「死人も生き返る」といわれる、ラテン・コーヒーならでは。そっと心臓を抑えながら、アントニオ・バンデラスに似た家主の横顔を盗み見していた。

ハイクオリティ・ライフスタイル誌「ナイルス ナイル(Nile’s NILE)」の公式ウェブサイト「WEB NILE」コロンビアの旅はこちらから

寄稿記事
ジャーナリスト
篠田香子


《篠田香子 プロフィール》
国際不動産投資を専門に取材する傍ら、世界各地で激減する旅の原風景を私的に綴る。香港記者クラブ所属、著書に「世界でさがす私の仕事」(講談社)など


プロコロンビア観光サイト
http://www.colombia.travel/ja

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