【編集部推薦映画】大自然に生きる老夫婦の姿を娘のカメラが映し出す、北欧の人生哲学ドキュメンタリー
期間:指定なし
[リスヴェル編集部]2024年09月 6日公開

エリア:ヨーロッパ  > ノルウェー / ジャンル:サービス・商品情報 , 自然 , 

生きるとは、老いるとは何か――厳しくも美しいノルウェーの四季と共に生きる老夫婦の姿を通して人生を探求するドキュメンタリー『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』が9月20日(金)からTOHO シネマズ シャンテ、シネマート新宿ほか全国で公開される。

この映画は、息を呑むような美しい大自然に囲まれたノルウェー西部の山岳地帯「オルデダーレン」が舞台。地球上でも有数の壮大なフィヨルドを誇るこの渓谷に暮らす老夫婦の姿を、この家を離れて30年が経つ娘でありドキュメンタリー作家のマルグレート・オリンが、自然は我々の「家」であるというメッセージを込めて、一年をかけて密着し制作した。

〈STORY〉をあえて述べるのであれば、壮大な風景と大自然の音である。そして、84歳になった父親がオルデダーレン渓谷の春夏秋冬を自分の少年期(春)〜青春期(夏)〜壮年期(秋)〜老年期(冬)にシンクロさせて案内しながら、彼の人生と最愛の妻、自然と共に生きてきた何世代もの人々の暮らしについて静かに語り始める。その話す言葉は詩的で美しい。また、母親が歌う歌は牧歌的な旋律を奏でている。

視覚的に驚くべきは自然の風景を撮った映像の美しさ。崩れ落ちる氷河や切り立った断崖が生み出す奇跡のパノラマ、夜空に降りてくる七色のオーロラや多様な動物達の生き生きとした姿など、大地は季節ごとに姿を変え、ドローンや最新の撮影機材を用いて捉えられた、誰も観たことのない荘厳で圧倒的な映像美と多角的で重厚な自然の音は、息を呑むような壮大な旅へと観客を誘っていく。

映画の舞台となったオルデダーレン渓谷は、ノルウェー西部に位置するヴェストラン県にある渓谷であり、長さ20キロメートルの渓谷は南北に走り、オルデン村のノールフィヨルドで終わる。自然と多様な野生動物達が同居し、約五千年の歳月をかけ溶けた氷河によって形成された青緑色のオルデバトネット湖や神秘的な山々に囲まれたフィヨルド、また四季には独自の魅力があり、その風景は太古の地球のまま保護されている。

壮大で豊かな大自然は美しさの反面、共に生きることは過酷である。そしてその自然に変化が起きている。鳥や昆虫は減少し、森林火災、洪水、氷河の崩壊。編集者である私も15年前から年に数ヶ月は自然の中で暮らしているが、森に生息する鳥や生き物、昆虫などがめっきり少なくなった。科学者、政治家、活動家、ジャーナリストたちによる事実を伝える社会派の作品は多くあるが、あえてなぜ自然を大切にしなければならないのか、都会に住む者には実感が湧きにくい。この父親の世代は、どうしたら人が自然を大切にできるのか深く理解できている最後の世代なのだろうか。130年前に父親の父(娘の祖父)が植えた立派なトウヒの木(松科の常緑針葉樹)のそばに、父親は次世代に繋げるトウヒの木の苗を植えたシーンは心に残る。

『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』 (2023年/ノルウェー/94分)
監 督:マルグレート・オリン
製作総指揮:リヴ・ウルマン、ヴィム・ヴェンダース
出 演:ヨルゲン・ミクローエン、マグンヒルド・ミクローエン
配 給:トランスフォーマー
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/songofearth/


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