【編集部推薦映画】父親の介護から、仕事、子育て、恋まで、懸命に生きようとする女性の物語
期間:指定なし
[リスヴェル編集部]2023年04月18日公開

エリア:ヨーロッパ  > フランス  > パリ / ジャンル:サービス・商品情報 , 

父の病に対する“悲しみ"と、新しい恋の始まりに対する“喜び"、正反対の状況に直面するシングルマザーの心の揺れを繊細に描き出すヒューマンドラマ『それでも私は生きていく』が2023年5月5日(金・祝)より 新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国で順次公開される。

〈STORY〉
サンドラ(レア・セドゥ)は、夫を亡くした後、通訳者として働きながら、パリの小さなアパートで8歳の娘リンとふたりで暮らしているシングルマザー。彼女の父ゲオルグは、かつて哲学の教師として多くの生徒たちから尊敬される存在だったが、アルツハイマー病に由来する神経変性疾患を患い、徐々に視力と記憶を失いつつある。別居する母フランソワーズと共に、彼のもとを頻繁に訪ねては、変わりゆく父の姿を目の当たりにし、無力感を覚えるサンドラ。
そんな中、旧友のクレマンと再会。クレマンは南極調査のためにフランスを離れていたが、宇宙化学者として宇宙の物質を研究するためにパリに戻っていた。夫を亡くして5年、仕事や子育て、介護に忙殺され、恋する喜びを忘れていたサンドラは、知的で楽しいクレマンと過ごしているうちに、彼が既婚者で子どももいることを知りながら惹かれていく。病を患う父に対するやるせない思いと、新しい恋の始まりに対するときめきという相反する感情をサンドラは同時に抱くが...。

この映画は、親の死を意識したときに誰もが感じる無力感や恐れだけでなく、サンドラの場合は恋愛という新しい情熱が生まれる可能性もあることを描いているわけだが、これは娘からの視点であり、この映画を観る世代が病気の父親世代であれば、老いていく恐れや子ども達への負担を考えてしまうのではないだろうか。不治の病にかかり、記憶と視力を失っていく父親の日記に記された言葉が印象に残っている。「書くことで病を克服し、私は勝利する」、自分の人生は病に冒されたことで不幸になったのではなく、豊かな人生であったと締めくくる、ささやかな抵抗のように感じ、それを読んでいるサンドラの姿が印象的だった。

また、この映画は、フランスの老人介護の現状も問題提起しながら、サクレクール寺院や画家のモネの「睡蓮」が展示されているオランジュリー美術館(たぶんそうであろう)などのパリの有名な観光スポットも舞台になっている。加えて、監督が35ミリフィルムにこだわり、自然光との組み合わせで草木の緑や空の淡い青などの色合いを活かした美しい画面を作り上げている。

『それでも私は生きていく』(フランス) 上映時間 112分
原 題:Un beau Matin
公開日:2023年5月5日(金・祝)新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国で順次公開
監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ
出 演:レア・セドゥ、パスカル・グレゴリー、メルヴィル・プポー、ニコール・ガルシアほか
配 給:アンプラグド
公式HP:http://unpfilm.com/soredemo/

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