- 2024.12.04
チュニジアで興った「アラブの春」、成果を問われながらはや10年余。首都チュニスにはリベラルな気風が漂うものの、厳しい経済状況が続いている。かつて地中海の交易都市として栄華を極めた古代カルタゴの遺跡が、チュニスの新市街地に光と影を投げかけていた。
チュニスの隣国でありながらアルジェリアには、アラブの春の訪れは遅かった。チュニスから約500km、アルジェリア国境近くにあるタバルカに向かう。アトラス山脈が白浜と紺碧の海に迫る、景勝地のリゾートだ。
到着と同時に旧市街地(メディナ)に浪々と響き渡るコーランに迎えられたせいか、アラブ色が濃いように感じた。メディナで、香辛料のきいたクスクスを食べてから市場(スーク)を歩く。かつては、地中海随一の珊瑚の産地として栄えたタバルカだが、今ではスークで売られている鮮やかな赤い珊瑚は偽物も多いとか。
迷路のようなメディナでアラビアンナイトの世界を垣間覗いてから、マリーナのスタンドでミント・ティーを飲み、半月型の入り江沿いに白浜の続くビーチ・リゾートに向かう。数分で豊かな緑に囲まれたリゾート・ホテル「ラ・シーガル・タバルカ」へ到着した。豪壮なシャンデリアが輝くロビー、5つのレストラン、チェニジア有数のタラソセラピー・スパ、正面には大きなプールとビーチ、裏手には広大なゴルフ・コースやテニス・コート、サッカー・グラウンドなどがあり、滞在客はその広大な敷地をカートで自由に走り回れる、アラビアンナイトの世界を秘めたタバルカでは予想外の、近代的なアメリカン・タイプの大型リゾートだった。客室(総数250室)はゆったりとした造りでベランダからは紺碧の海と、タバルカの町を守るように伸びた半島の小山に建つ中世の城塞が望めた。
夕暮れの海風に誘われるように、プール越しに海を望むアラビアン・カフェへ。絨毯を敷き詰め銀のランプが灯り、心地よさそうな大きなクッションが置かれていた。街中のカフェは男性ばかりで入りにくいが、ここでは寛げそうだった。花の風味がする薄いアラブ・コーヒーを飲んでいると、蜂蜜とジャスミンの風味の水キセル(スーシャ)を勧められた。吸っても煙草のような苦みはない。ゆっくりと淡い煙を吐き出すと、ジャスミンの香に心身を包まれた。アラブの春が、ジャスミン革命とも呼ばれていたことをふと思い出す。
チュニジア国家観光局(政府観光局)公式サイト (gotunisia.jp)も合わせて読んでみてはいかがだろう。
La Cigale Tabarka Hotel
https://www.lacigaletabarka.com
写真
1. ラ・シーガル・タバルカ全容。後ろの樹林にはゴルフコースなどスポーツ施設がある
2. スパのプールからは半島の先の城塞が望める
3. メディナの入り口はスークの店がひしめく
寄稿記事
ジャーナリスト 篠田香子
《篠田香子 プロフィール》
国際不動産投資を専門に取材する傍ら、世界各地で激減する旅の原風景を私的に綴る。香港記者クラブ所属、著書に「世界でさがす私の仕事」(講談社)など