北海道八雲町でヒグマ共生を考える体験型ツアー実施
期間:指定なし
[リスヴェル編集部]2026年03月11日公開

エリア:アジア  > 日本  > 北海道 / ジャンル:自然 , 

北海道八雲町で2026年2月2日から4日まで、ヒグマからの恩恵を受け取ってきた町で熊と生きる社会を再設計するリジェネラティブツアーが実施された。町の歴史や文化、冬の自然環境、地域で暮らす人々の声に触れながら、人とヒグマの関係を見つめ直す3日間の体験型プログラムが実施された。

今回の舞台となった八雲町は、道南エリアの広域観光サイト「Discover Southern Hokkaido」でも紹介される地域の一つ。ツアーには東京、徳島、北海道内から参加者が集まり、八雲町の象徴として位置づけられる「熊」を軸に、自然と人の境界を考える行程が組まれた。単に景観を巡る旅ではなく、土地に根づく歴史や営みを手がかりに地域を理解していく構成である。

初日は、八雲町郷土資料館での講義や解説を通じ、縄文土器に刻まれた熊の意匠や、アイヌ文化における「キムンカムイ」の精神性、すなわち熊の捉え方、八雲の名産として知られる木彫り熊の背景に触れた。キムンカムイは、アイヌ語で「山にいる神」を意味し、アイヌ文化においてヒグマを指す最高位の神の尊称である。また、木彫り熊は土産物として知られる一方、その背景には開拓期の暮らしや狩猟、自然への畏怖と感謝が重なっている。そこには「排除」だけではない、厳しい開拓期を生き抜くための「共生」の形があった。

2日目は、現役の猟師や自然活動家とともにスノーシューで冬の山に入り、雪上のフィールドワークを行った。木に残る爪痕や地形の変化を手がかりに、ヒグマや鹿など野生動物の気配をたどる内容。白い雪に覆われた森を歩く体験は、動物を目にすること自体よりも、そこに生き物の痕跡が残されている環境を感じ取る時間に重きが置かれていた。冬の道南の自然を体感しながら、来訪者が自分たちも自然の一部であることを考える場になったと同時に、「よそ者」であることを肌で感じたという。

夜には、生産者、猟師、ガイド、観光事業者らが集まり、ヒグマの出没増加や農業被害、駆除をめぐる考え方などをテーマに対話の場が設けられた。参加者も質問を交えながら議論に加わり、最終日には人とヒグマとの向き合い方や、この取り組みの今後について話し合うワークショップも行われた。答えを一つに定める内容ではなく、それぞれの立場や地域の現実を持ち寄って考える構成であった。

滞在拠点には、八雲町上八雲にある廃校活用施設「ぺコレラ学舎」。自然、文化、滞在を組み合わせた地域滞在型の旅先として位置づけられている。今回の実施内容は、道南の旅に地域課題や自然観を重ねて捉える新しい切り口の一例として受け止められ、「共生」という美辞麗句では片付けられない、痛みや責任を伴う「再設計(リジェネラティブ)」の第一歩であったと言える。主催者側は2026年6月と10月の開催を検討中としている。

ヒグマからの恩恵を受け取ってきた町で、熊と生きる社会を再設計するリジェネラティブツアー
実施日:2026年2月2日(月)~4日(水)
実施地:北海道八雲町
主 催:Discover Southern Hokkaido、birch株式会社

Discover Southern Hokkaido
https://discover-donan.com/ja/

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