- 2026.05.02
コロンバスの生誕地ジェノバは、今もイタリア最大の港だ。船荷の取り扱量だけでなく、クルーズ船も頻繁に寄港する。背景にアペニン山脈が押し迫ったジェノバの町は、海から眺めるとドラマチックな景観を見せる。
中世に海洋帝国として栄えたジェノバは、今も当時の豪壮な館が山腹に建ち並ぶ。そして、水辺に下りるにつれ、庶民的な町並みになる。細い路地が縦横に走り、小さな家や店が犇めき生活感あふれる探索ができる。
だが、徐々に廃れていった波止場周りを、1980年代後半から関西国際空港の設計で知られる、ジェノバの建築家レンゾ・ピアノ氏の指揮のもとで再開発が行われた。ヨーロッパ最大の水族館、南欧最大の海洋博物館などが建設され、今ではポルト・アンティコ(旧港の意味)と呼ばれる市民に人気のウオーターフロントに蘇った。
その水族館の隣の桟橋に築かれたのが「NHコレクション ジェノバ マリーナ」(140室)である。モダンな造りだが、パステルピンクの漆喰壁とスレート屋根はジェノバ伝統のもの。館内には昔の波止場の石組みや係船柱がインテリアとして残されている。先端にあるレストランは3方を港に囲まれ、ヨットクラブにでもいるような雰囲気だ。
客室の大半が港に張り出したバルコニーを備えており、すぐ目の前でヨットがマリーナを行き交う。東側の客室からは、水族館のプールで跳ねるイルカを眺められる。ホテル・エントランスの横には映画『パイレーツ』(1986年)のために建造されたガレオン船のレプリカが係留されている。
夕日で茜色に染まった湾のプロムナードを、大道芸人を横目で見ながら、倉庫を改造したレストラン・モールへ向かう。途中、色鮮やかなフレスコ画が残された建物は、1407年に開業、コロンブスへの融資を却下した記録が残る世界最古のサン・ジョルジョ銀行の本部として用いられた パラッツォ・サン・ジョルジョだ 。
失意に二度と故郷に戻ることのなかったコロンバスが船出したかもしれない桟橋は、今では遥か太平洋諸国からの旅人の憩いの宿になっている。
NH Collection Genova Marina
https://www.nh-hotels.com/en/hotel/nh-collection-genova-marina
キャプション
(1) 桟橋に築かれたヨット・クラブのような佇まいのホテル
(2) 朝日の中での朝食、夕暮れ時もムーディだ
(3) すっきりしたイタリアン・デザインの客室
寄稿記事
ジャーナリスト 篠田香子
《篠田香子 プロフィール》
国際不動産開発を専門に取材する傍ら、世界各地で激減する旅の原風景を私的に綴る。東京とミラノが拠点。著書に「世界でさがす私の仕事」(講談社)など



