- 2026.09.13
ホーチミンの北東約200k,海抜1500mにあるダラットは、フランス植民地時代に高原リゾートとして花開いた。フランス人による三日月形の人造湖が町の中心に設けられ、豊かな緑にアジサイ、ブーゲンビリア、バラ、ラベンダーなどが随所に咲き乱れる。
ここを愛したグエン朝最後のバオダイ皇帝の別荘が今もそのまま残り、随所にフランス風ヴィラや瀟洒なカフェが点在している。湖の西端にある賑わいのダラット市場の東約2kmには、1938年に開業したベトナムで最も美しいダラット駅がある。一帯は風情ある旧駅舎地区として親しまれているが、その一角の松林に2022年に開業したのが艶やかなフレンチ・コロニアル・スタイルのホテル「グランド メルキュール ダラット」。エントランス・ロビー、カフェ、レストランなどがある本館の裏手に、バラに囲まれたヴィラ・タイプの客室棟12棟(135室)が点在する。
1920年代のフランスの邸宅のような佇まいで、白を基調にした木目の落ち着いたクラシックな内装で、フランス風の出窓越しに手入れの行き届いた庭が望める。どこからともなくシャンソンのメロディが流れ、デイジーに縁どられた小道を辿っていくと、木立に囲まれた噴水も涼しげなプール。
日中ここでひと泳ぎしてから、スパへ。本場フレンチタッチとベトナム伝統の施術が取り入れられた心地よいマッサージ。すっきりした心身で、ダラット駅を抜けて湖畔まで散歩に。道中ジャスミンが香る店先でダラット名産のコーヒを味わった。
夕食はフランス系アコーホテルズならでは、フレンチ・インドシナ料理、それとも開業したばかりの本格派中国料理の選択に迷ったが、後者の洗練された味わいに舌鼓。フレンチ・インドシナの風味は、たっぷりと贅沢な朝食ブッフェでも。本場フランスを思わせるパンやペストリー、バター、チーズ、オムレツや各種ハム。べトナム名物の麺フォーや点心。新鮮な高原野菜、旬の果物が所狭しと並ぶ。
ふと、美食家だったバオダイ皇帝もこの朝食には大満足しただろう、などと思う。フランスを愛してやまなかったバオダイ皇帝は亡命後、一度もベトナムに戻ることなく30年前にパリに没した。この珠玉のようなホテルを知るよしもなく。
グランド メルキュール ラット(グランド メルキュール公式サイト)
https://www.grandmercuredalat.com
グランド メルキュール ダラット(ACCOR公式サイト)
https://all.accor.com/hotel/B8H0/index.ja.shtml
キャプション:
Photo1:松林の緩やかな傾斜に建つホテル本館
Photo2:アールデコ・タッチのフレンチ・インドシナ・レストラン
Photo3:庭園ヴューが楽しめる客室(左)/ヴィラの木立に囲まれた噴水プール(右)
寄稿記事
ジャーナリスト 篠田香子
《篠田香子 プロフィール》
国際不動産開発を専門に取材する傍ら、世界各地で激減する旅の原風景を私的に綴る。東京とミラノが拠点。著書に「世界でさがす私の仕事」(講談社)など



