- 2026.01.21
インドのヒマラヤ山脈の麓に位置する、シックスセンシズ ヴァーナは、10年以上にわたりリゾートのキッチンで実践されてきた独自の食の在り方を体現する料理哲学「Anayu(アナユ)」を発行しました。本書『Anayu – Recipes and Stories from Vana(アナユ:ヴァーナのレシピと物語)』は、その哲学と実践を通じて、ヴァーナが提供する料理の本質を伝えるものです。
シックスセンシズ ヴァーナの料理は、単なるレシピの集合ではありません。食を「滋養」「思いやり」、そして人と自然をつなぐより大きな生態系の一部として捉える考え方そのものです。このアプローチの基盤である「ヴァーナ・キュイジーヌ・フィロソフィー」は、創設者ヴィール・シンのビジョンから生まれました。彼が思い描いたのは、いわゆるヘルシーなウェルネス料理と言われる、食材や内容を制限した料理ではなく、人に寄り添う食。アーユルヴェーダの理解を礎に、ヴァーナのドクター(専門家)とシェフによって日々の実践として育まれてきたこの食文化は、流行に左右されることなく、静かに進化を続けてきました。
「Anayu」という名は、「食」を意味するAnnaと、「生命」「長寿」を意味するAyuに由来します。ヴァーナにおける料理は、「Food for Life(生命のための食)」という考え方のもと、時間をかけて身体を支える滋養として提供されます。そこには「医食同源」という共通理解があります。すべての食材は丁寧に選ばれ、すべての料理は身体への作用を考慮して組み立てられ、すべての食事がゲスト一人ひとりのウェルネス・ジャーニーを支えます。盛り付け、香り、食感、味わいも等しく配慮され、目的を保ちながら五感すべてに働きかける食体験が完成します。
ヴァーナの料理を当リゾートの外にも伝えたいという本書の著者ヴィールの長年の想いは、メーヘルとの緊密な協働を通じて形になりました。素材は何度も見直され、磨かれ、ヴァーナの食の在り方をそのまま映し出すかたちでまとめられています。
シックスセンシズ ヴァーナのキッチンから提供されているものは日常の環境でも実践できるよう配慮され、無理のない調理法、限られた食材、過剰を避けた構成が特徴です。食品ロスや水資源への配慮も重視され、アーユルヴェーダが説く季節性や個々の体質(ドーシャ)への理解が一貫して流れています。これは、個人の健康だけでなく、環境全体を支える食の選択へとつながっています。
さらにヴァーナの料理は、現代の食料システムが抱える課題にも目を向けます。単一栽培や工業化農業の影響、調達や消費の倫理に触れながら、食を通じて、農家、生態系、動物、コミュニティとつながる相互依存の関係性を意識することを促します。
Anayuは、キッチンと静かな読書の時間の両方に寄り添う構成で、料理の背景にある思想や実践的な知見を織り交ぜています。目的は指示ではなく、食との関係性を育むこと。時間をかけて、より意識的で、持続可能な食の在り方へと導きます。
10年以上にわたり静かに育まれてきたヴァーナの料理哲学。そのキッチンを外に向けて開き、食を通じた気づきを日常へとつなげる招待状が、アナユ:ヴァーナのレシピと物語です。



