旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2020年8月30日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

長崎・上五島、29の教会が迎える祈りと癒しの島へ6~島の美味しいものを食べ尽くす!~

抜群の透明度を誇る人気ビーチ、蛤浜海水浴場にある『はまぐりデッキ』のオリジナルスイーツ『かんころパルフェ』。zoom
抜群の透明度を誇る人気ビーチ、蛤浜海水浴場にある『はまぐりデッキ』のオリジナルスイーツ『かんころパルフェ』。
四方を海に囲まれた長崎・上五島。訪れる先々で目に飛び込んでくる自然の景観とともに、舌を楽しませてくれるのが、島のローカルフードの数々。上五島の連載コラム・最終回は、島の食の魅力をご紹介します。新鮮な魚介はもちろんのこと、島の歴史に育まれた逸品が、舌の記憶となって蘇ります。
長崎・上五島の旅コラム、最終回は島の美味しいもの情報です。

大陸との貿易がルーツとされる“幻のうどん”
まず、五島名物といわれているのが、讃岐うどん、稲庭うどんと並び『日本三大うどん』の一つに数えられている『五島手延うどん』。九州最西端に位置する五島は7~9世紀、遣唐船の寄港地となり、海外貿易で栄えた歴史があります。様々な大陸文化がもたらされたなか、中国から伝わった麺文化が島独自に発展し、『五島うどん』が誕生したといわれています。
『日本三大うどん』にも数えられる『五島手延うどん』。茹でたてを掬って食べる『地獄炊き』で味わいます。zoom
『日本三大うどん』にも数えられる『五島手延うどん』。茹でたてを掬って食べる『地獄炊き』で味わいます。
島のなかで細々と手作業で作られていたことから、“幻のうどん”とも呼ばれていた五島のうどん。小麦粉に海水塩を混ぜて熟成させ、表面に島で採れたツバキ油を塗りながら手延べする麺は、細麺でありながら独特のコシの強さがあり、のど越しの良さが際立ちます。

長い時間煮込んでも煮崩れにくい特徴を生かし、島で親しまれているのが『地獄炊き』という、なんだか恐ろしい名前の食べ方です。ぐつぐつと煮立つ茹でたての麺を鍋から直接掬い、“アゴ”と呼ばれるトビウオの出汁に付けて食べる、いたってシンプルな料理なのですが、これが驚くほど旨い! お好みで溶き卵にくぐらせると、また違った味わいになり、いくらでも食べられます。
上/『島dining とらや』のオーナー、南さん。下左/シンプルながら一度食べると忘れられない味。下右/自家製麺と塩はお土産に。zoom
上/『島dining とらや』のオーナー、南さん。下左/シンプルながら一度食べると忘れられない味。下右/自家製麺と塩はお土産に。
今回、地元の人のおすすめで訪れたのが、五島うどんの製麺所が手掛ける『島dining(ダイニング) とらや』。2019年6月のオープンのまだ新しい店ながら、その美味しさがすっかり評判となっています。

製麺所が手掛けるのだから、麺はもちろん自家製。さらに、うどんを仕込む時に使う海水塩も自家製なら、アゴ出汁を取る焼きアゴも自家製というこだわりよう。オーナーの南慎太郎さんの実家は塩が専売品だったころ、その権利を所有して塩づくりを行っていた歴史があるのだそうです。
「海に囲まれたこの地で海水塩作りが発達したのは、うどんを作るときに必要なものだったからなんですよ」と南さん。大陸から伝わった麺文化に、上五島の風土が育んだ海水塩とツバキ油、そしてアゴ出汁が混ざり合って生まれた五島うどんの美味しさは、五島の風土と歴史を味わうローカルフードと言えます。
BGMにジャズが流れるカフェ風の店内では、毎朝、港で仕入れてくる魚介をたっぷり盛り込んだ海鮮丼、自家製の塩が味の決め手でもある『塩こうじ唐揚げ』も、売り切れることがあるほど人気のメニューです。
●島dining とらや
長崎県南松浦郡新上五島町浦桑郷1349
TEL 0959-42-5733
11:00~14:00 月曜休
http://www.goto-toraya.com

獲れたてピッチピチの魚介&見た目もユニークな料理に舌鼓!
島グルメで絶対に外せないのが、新鮮な魚介料理。黒潮と対馬海流が流れ込む上五島周辺では、海の恵みを堪能できます。島料理が評判の居酒屋『海舟(かいしゅう)』で、その味を堪能しました。
「おまかせで」とお願いしたお刺身は、アジ、真鯛、水イカ(アオリイカ)、メジナ、ヒラス(ヒラマサ)、アカハタといった豪華な内容にびっくり!
左/刺身はおまかせで1人前1700円~。『五島灘』は五島列島初の酒造として誕生した『五島灘酒造』が造る芋焼酎。右上/ネーミングとともに見た目もユニークな『かっとっぽ』。右下/クジラ串、きびなごの唐揚げ、イカワタ入りの蒲鉾など、存分に味わいました!zoom
左/刺身はおまかせで1人前1700円~。『五島灘』は五島列島初の酒造として誕生した『五島灘酒造』が造る芋焼酎。右上/ネーミングとともに見た目もユニークな『かっとっぽ』。右下/クジラ串、きびなごの唐揚げ、イカワタ入りの蒲鉾など、存分に味わいました!
また、上五島を訪れたら絶対に食べてみたいと思っていたのが『かっとっぽ』。ハコフグの味噌焼きのことで、古くから島に伝わる郷土料理です。ハコフグのお腹に、身とともに味噌とショウガを詰めて焼き上げてあり、ご飯のおかずにはもちろん、五島で栽培されるサツマイモから作る芋焼酎『五島灘』もどんどん進みます。ほかにも、クジラ串、アオサの天ぷら、きびなごの唐揚げ、イカワタ入りの蒲鉾など、おすすめを聞いているとどれも美味しそうで、気になる料理を次々に頼んでいたら、テーブルに乗りきらないほどになってしまいました。
●海舟
長崎県南松浦郡新上五島町浦桑郷1380
TEL 0959-54-2606
17:30~22:00 月曜休

海遊びも楽しみたい、浜辺のダイニング
美しいビーチにも事欠かない上五島で、抜群の透明度を誇るのが『蛤浜(ハマグリハマ)海水浴場』。どこまでも続く遠浅のビーチの近くには運動公園とキャンプ場があり、地元の人の憩いの場にもなっています。海水浴場の一角にある『はまぐりデッキ』は、食事はもちろん、バーベキュー、シーカヤックやSUPといったビーチアクティビティを楽しめるスポット。暖かい季節にはオープンエアの海の家風、風が冷たくなってくると風よけのシートが巡らされ、冬になるとこたつを備えた個室も登場。四季を通じて、目の前に広がるビーチを眺めながら過ごせます。
『はまぐりデッキ』にはカフェスペースのほか、こんなプライベートデッキが。曇り空でも海の透明度がわかるでしょうか。zoom
『はまぐりデッキ』にはカフェスペースのほか、こんなプライベートデッキが。曇り空でも海の透明度がわかるでしょうか。
訪れたのはまだ肌寒い季節だったので、ヒオウギ貝というカラフルな貝を使ったチャウダーを食べて温まりました。デザートにおすすめなのが、上五島の特産品でもあるかんころ餅を使ったオリジナルスイーツ『かんころパルフェ』。ソフトクリームにサツマイモのペーストと、カリカリに揚げたかんころ餅をトッピングしてあり、素朴な甘さにほっと和みます。
左/カラフルな貝殻が、チャウダーになるヒオウギ貝。上/『ひおうぎチャウダー』『ハッシュドビーフ』のほか、スパイスから調合して作るカレー、サンドイッチやハンバーガーも人気です。zoom
左/カラフルな貝殻が、チャウダーになるヒオウギ貝。上/『ひおうぎチャウダー』『ハッシュドビーフ』のほか、スパイスから調合して作るカレー、サンドイッチやハンバーガーも人気です。
ビーチから徒歩1分の場所に貸し切りで宿泊できる古民家のゲストハウスがあり、ファミリーや小グループの滞在にうってつけ。ここなら“密”になる心配もありません。ちょっと長めに滞在し、釣りやビーチスポーツ、サイクリングなどを楽しみながら、島暮らしの気分を体験してみてはいかがでしょう。残暑が収まり、過ごしやすくなるこれからの季節がおすすめです。
●はまぐりデッキ
長崎県南松浦郡新上五島町有川郷2460-1
TEL 0959-43-0510
朝食6:30~8:00(要予約)
カフェタイム:夏季(4月ごろ~10月)10:00~18:00、冬季(11月~4月ごろ)11:00~17:00
※金・土曜・祝前日は21:00まで。
http://h-deck.jp/

上五島に来なければ食べることができない、素朴だけれど味わい深い島グルメの数々。美しい島の風景とともに、その料理の味の記憶は消えることがありません。季節が変わり、今また無性にこの島を訪れたくなっています。
※各店舗には、営業状況と時間を確認してから訪れてください。

※上五島で必ず訪れたい教会と、温泉&グルメが楽しみなリゾートホテル、体験情報は、こちらから!
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長崎・上五島、29の教会が迎える祈りと癒しの島へ
 1 世界遺産の教会がある集落
 2 人々の暮らしに寄り添う教会を巡る
 3 白亜のキリスト像が見守る伝説の洞窟
 4 どちらも泊まってみたい! 2軒のマルゲリータ
 5 島の手仕事にふれる

【協力】
長崎県/新上五島町
https://shinakamigoto.com/tour/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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