(「シリーズ『北海道より大きいカナダの島』【2】」からの続き)
カナダにある北海道より大きな島へ向かうためにエア・カナダグループの航空便同士を乗り継ぐカナダ東部モントリオール国際空港で、誤算が生じた。入国審査がスムーズに済んだため乗り込む航空機の搭乗ゲートに早々に着くことができたものの、その先には新型コロナウイルス禍からの活動再開で航空便予約が膨らんでいる“副作用”で想定外の展開が待ち受けていた―。
▽異なる出発時刻を表示
アメリカ(米国)の首都ワシントンからの航空便で到着後、入国手続きが終わると乗り継ぐ航空便が出発するゲート「A1」へ向かった。出発時刻の午後1時5分まで45分ほどあるが、エア・カナダグループのハブ(拠点)空港であるモントリオールの旅客ターミナルは広大で国際線が発着するエリアと国内線エリアは離れている。出発時刻の30分前に始まる搭乗開始時刻に間に合うように早足で通路を進んだ。
午後0時半近くに目当てのA1ゲートに到着し、モニター表示を確認した。行き先の北海道より大きいカナダの島、ニューファンドランド島にある主要都市セントジョンズと、便名のAC7782が記されている。しかし、出発時刻が記憶していた午後1時5分とは異なる「13:50」になっている。
もしや出発時刻の午後1時50分を午後1時5分と読み違えたのかと思い、持っている航空券を再確認すると「13:05」と明記されている。そこで、ゲートの地上勤務係員に「出発が遅れたのですか?」と尋ねると、「はい、出発は45分遅れる見通しです」と説明を受けた。
▽バウチャー要請も却下
そこでいちるの望みを持って「バウチャーは出るのですか」と尋ねた。東京に住んでいた2018年6月にモントリオールから成田空港へ向かうエア・カナダ便に乗るためにゲートへ行くと出発遅れの案内放送が流れ、「バウチャー(金券)をご希望の方はカウンターまでお越しください」という魅力的な言葉が添えられていたのだ。
空港内とはいえ個人的に大好きな都市のモントリオールにより長くとどまることができた上、バウチャーを使って空港内のレストランでおいしいハンバーガーを味わうことができた。今回もその可能性があるかと思ってカウンターで尋ねたが、「45分遅れでは支給基準ではありませんね」とすげなく却下された…。
バウチャーは入手できなかったものの、搭乗開始時刻は午後1時20分になるはずなので空港内にあるカナダのドーナツ店チェーン「ティム・ホートンズ」に立ち寄ってドーナツとコーヒーを買うのには十分な時間がある。そこで記憶を頼りに店舗へ行くと注文待ちの長蛇の行列ができており、店内も満員だった。「考えることは他の人たちも同じだ」とぼやき、ターミナルの物販が集まっているエリアへ向かうことにした。
▽美食の街でクッキーを「大人買い」
すると質の良さそうな小分けのクッキーを売っている一角があり、女性店員は「このクッキーはオレンジの味で、これはイチゴジャム入りで…」などと説明してくれた。値段を尋ねると「税別で1個12カナダドル(約1200円)よ」と聞き、「ティム・ホートンズのドーナツと比べるとずいぶん高いな」と内心思った。だが、モントリオールは優れたレストランが多い美食の街であることは何度も訪れて熟知しており、おいしいパンを売っていて店員もフレンドリーな魅力的なベーカリーも多い。
クッキーを売っている店の女性も感じの良い方だったので、思い切ってお土産用に「大人買い」をした。1パックだけ自分用に買ったいちごジャムのクッキーを食したところ、ほどよい甘さで良い食感の期待通りの味だった。米国に多いしつこい甘さのクッキーとは一線を画しており、さすがは美食の街にふさわしい味だと改めて感心した。
▽遅れを繰り返す理由は…
A1ゲートに戻って待ち合いスペースのいすに腰かけていると、ゲートの女性係員がフランス語で「皆さん、こんにちは」と案内放送を始めた。「ようやく搭乗開始案内か」と胸をなで下ろしたのもつかの間に、次の瞬間に予期しなかった言葉を耳にした。「航空便に乗務するクルーの到着が遅れており、出発時刻がさらに20分遅れることになりました」
それを聞いて米国の航空関係者から聞いた話を思い出した。それは「新型コロナの入国規制などが緩和したこともあって夏のレジャーシーズンの航空便予約は好調に推移しているが、航空会社は新型コロナ流行時にレイオフ(一時帰休)をした従業員を十分呼び戻せておらず、新規採用した人のトレーニングも追い付いていないので人手不足に陥っている」という内容だ。おそらくエア・カナダも同じような状況だと推察される。
▽ようやくエンブラエルの機内へ
午後2時が近づいてそろそろ搭乗案内があっても良い時刻だと思っていた頃、今度は係員が「何度もすみません」と殊勝に切り出した。「クルーがこちらに向かっているとの連絡を受けましたが、機内が暑くなっているため搭乗時刻を遅らせるように指示を受けました。つきましてはあと10分から15分ほどお待ちください」
結局ブラジルの航空機メーカー、エンブラエルのジェット旅客機「E175」に乗り込んだのは午後2時半ごろになってからだった。機内は冷房の利きが悪くて暑いが、E175のエコノミークラスの座席幅は約46センチと、ワシントンから乗った旧ボンバルディア(現三菱重工業)のジェット旅客機「カナダエア・リージョナル・ジェット(CRJ)900」より約3センチ広くやや快適だ。利用者がおおむね着席したため、「これから滑走路へ向かってテークオフ(離陸)かな」と思った私の見通しは再び外れる…。
(「シリーズ『北海道より大きいカナダの島』【4】」に続く)
(連載コラム「“鉄分”サプリの旅」の次の旅をどうぞお楽しみに!)