旅の扉

  • 【連載コラム】舞台とハワイと時々ニューヨーク
  • 2020年2月3日更新
アート&トラベルライター:青山ルビー

ムーラン・ルージュが熱い!ブロードウェイ演目ガイド2020冬

寒い冬でもブロードウェイの賑わいは健在。世界中からの観光客でタイムズスクエアは人の波。zoom
寒い冬でもブロードウェイの賑わいは健在。世界中からの観光客でタイムズスクエアは人の波。

ミュージカルの本場といえばニューヨークのブロードウェイとロンドンのウエストエンド。ウエストエンドの最新事情は先日の記事「レ・ミゼラブルが新演出でリニューアルオープン! ロンドン ウエストエンド」でご紹介しましたので、今回は約半年ぶりのブロードウェイガイドです。

ブロードウェイではオン・ブロードウェイの主要劇場だけでも
40程あり、毎年40前後の新作が公開されています。演目の入れ替えが頻繁に行われているため、ガイドブックなどではロングランを続ける代表的な作品を紹介することになり、新しい作品はまだ載せられていないという場合もあります。そこで、このコラムでは、いまブロードウェイで観られるおすすめの演目を紹介させていただきます。

パリのキャバレー、ムーラン・ルージュのスターダンサーと脚本家の恋を描いた映画の舞台版。連日大盛況です。zoom
パリのキャバレー、ムーラン・ルージュのスターダンサーと脚本家の恋を描いた映画の舞台版。連日大盛況です。

ひとつめのおすすめは、2019年夏にブロードウェイでオープンを迎えた『ムーラン・ルージュ!(Moulin Rouge! The Musical!』、2001年公開の同名映画の舞台版です。映画はニコール・キッドマンとユアン・マクレガー主演で大きな話題になったので、記憶に残っているかたも多いのではないでしょうか。

パリのモンマルトル近くにある有名なキャバレーを舞台に、不遇のスターダンサー兼女優のサティーンと、ロンドンから来た若手脚本家クリスチャンが展開するラブ・ストーリーです。会話スタイルでのストーリー展開もありますが、一番の特徴はオリジナルソングと往年のヒット曲を切り貼りで上手に使って、主人公たちの気持ちを伝えていく手法(ジュークボックス・ミュージカルの変化形という感じ)です。

使われるのはビートルズやエルトン・ジョンの楽曲や、映画版にはなくミュージカル版で登場したレディ・ガガの楽曲などです。特にエルトン・ジョンのユア・ソングは効果的に配されていて強い印象を残します。 名曲を一曲丸ごと使うのではなく、切り貼り系ですので、「あれ?なんの曲だっけ」と考えているうちにシーンが移り変わっていく感覚もありますが、その場ではストーリーを楽しんで、あとで曲の解明をするというのも面白い見かたかもしれません。

特に音楽ファンに楽しんでいただける作品だと思いますが、舞台セットが豪華で、キャストも魅力的ですので、ビジュアル要素を求めるミュージカルファンのかたにもお勧めです。映画の中でも出てきたムーラン・ルージュを象徴する風車のオブジェや、外観が像の形をしているサティーンの部屋も再現されており、「ムーラン・ルージュの輝けるダイヤモンド!」と紹介されて華やかに登場するサティーン役のカレン・オリヴォは本当に美しく、ハリのある声は迫力があり、もちろん歌も上手。クリスチャンを演じるアーロン・トヴェイトは日本でも人気のあるハンサム俳優で、舞台上でも、とてもチャーミング。アーロンは映画版レ・ミゼラブルで革命家の美貌のリーダー、アンジョルラス役を演じたことで有名ですが、海外ドラマ好きの皆さんには「ゴシップ・ガール」のトリップ役として知られています。有名俳優の歌と演技を近くで愉しめるのも、ブロードウェイの魅力です。

座席でお知らせしておくポイントとしては、最前列の
2列くらいが、パリのムーラン・ルージュの雰囲気を出すボックス席になっていることです。短い花道とその先のミニステージに囲まれているので、ダンサーを至近距離で観ることができ、観客の皆さんもとても盛り上がっていました。ムーラン・ルージュの世界にどっぷりと浸りたいかたにおすすめです。予約の際にシートマップ上で「CAN-CAN Seats」と表示されている座席をお選びください。

ムーラン・ルージュ!
Moulin Rouge! The Musical
https://moulinrougemusical.com/new-york/home/

華やかさはなくとも感動的なストーリーで根強い人気を持つカム・フロム・アウェイ。zoom
華やかさはなくとも感動的なストーリーで根強い人気を持つカム・フロム・アウェイ。

二つめのおすすめ作品は、人間愛に満ちた『カム・フロム・アウェイ(Come From Away』です。2017年にブロードウェイ公演が始まり、2019年にはロンドンのウエストエンドでも始まった人気作品です。

2001年の911の際に、アメリカの空域が閉鎖されて多くの飛行機が行先変更を余儀なくされました。古くは給油のための経由地として使われていた空港があるカナダのニューファンドランド島の小さな町ガンダーに、主に欧州からアメリカに向かっていた計38便が着陸して、7000人近い乗客がガンダー街の人々に助けられた、という事実に基づいたストーリーです。

予測不能の出来事が起きた際に、人間はこのように助け合うことができるし、実際にカナダの小さな町でこんなことが起きていたんだと知ることができる、観終わったあとに他の作品とは全く違う感動が残る演目です。

舞台セットは至ってシンプルで、俳優さんたちも町の一般人と飛行機の乗客の役ですので普段着です。一人で何役も演じるために帽子を変えたりジャケットを着替えたりしますが、着替えても普段着と、見た目の派手さは一切ありません。しかし、乗客やの町の人が語る自分たちの人生、ガンダーの地で持て余す感情、この非常時にどうすべきか、という葛藤の吐露は見応えがあります。

主要な登場人物に、アメリカン航空の女性パイロット、ビバリー・バスさん(
Beverley Bass)がいます。彼女は実在の人物で、911の日はパリのシャルルドゴール空港からテキサス州ダラスのフォートワース空港に向かっている途中でした。空域閉鎖のためガンダーの街に降り立ったB777型機の機長を務めていました。このミュージカルが生まれるきっかけの一つは、彼女へのインタビューだったそうです。ミュージカルの中で出てくるビバリーのストーリーは、彼女だけでなく同じくガンダーに降り立ったほかのパイロットのストーリーも交えて作り上げられたようですが、ミュージカルの中でとても印象的な一曲「Me and the Sky」は、彼女自身の半生を歌ったものです。

小さいころから飛行機が好きで、
8歳で両親に「私は将来パイロットになる」と宣言した。当時は女性パイロットなど殆どいない時代だったけれど、大人になった彼女は短距離の輸送からはじめて修行を積んだあと、フライト・エンジニア(航空機関士)としてアメリカン航空に入る。フライト・エンジニアはパイロットと一緒にコックピットに入り計器類の確認など、パイロットを補佐する役割です。(航空機の機器の進化により、今は無い役割)。

1970
年代当時は女性がコックピットにいることは珍しく、第二次世界大戦で活躍したような年配パイロットには邪魔扱いされ、「コーヒーでももってこい」と言われ、フライトアテンダントには「どうせ自分のほうが上とか思ってるんでしょ」と言われた、というかなり生々しい体験も歌われる。その後彼女はアメリカン航空で3番目の女性パイロット、1986年にはアメリカの民間航空機初の女性機長に昇進します。結婚し母になり、パイロットもアテンダントもすべて女性というフィーメール・フライトも経験し、パイロットのインストラクターとして後進を育てるようなシニアなポジションにもなった。べテランの域に入る51歳になったときに、ガンダーにダイバートして着陸することになる。歌の後半にある、人生をかけて最も愛したもの(飛行機)が武器として使われたと聞いた。大きな何かが失われた。という部分は泣いてしまう観客続出です。

ビバリーだけでなく、乗客とガンダーの人々との国籍や言語を超えた交流は心温まるものです。最後は未来への希望をもって劇場をでることができます。なお、このミュージカルには休憩がありません。インターミッション無しの全
1幕、約1時間40分で、あっという間に過ぎた時間でした。 

カム・フロム・アウェイ
Come From Away
https://comefromaway.com/

アメリカの大物歌手ティナ・ターナーがスターになるまでを描いた感動作、ティナ。zoom
アメリカの大物歌手ティナ・ターナーがスターになるまでを描いた感動作、ティナ。

三つ目のおすすめは、アメリカのロック界の元祖歌姫、ティナ・ターナーの半生を描いた『ティナ・ターナー・ミュージカル(TinaThe Tina Tuner Musical)』です。ウエストエンドで20183月にプレビュー、4月にグランドオープンし、大成功を収めたあとに、201910月にブロードウェイでプレビュー開始、11月に本格オープンしたばかりのミュージカルです。テネシー州での不遇な幼少期から苦労して歌手として成功するまでを描きます。途中、DVなどの問題も描きながら、シリアスな部分もありますが、見せ場であるティナのパワフルな歌唱シーンに圧倒されながらストーリーが進みます。

ティナ・ターナーといえばこの曲!というほどの代表曲「What’s Love Got To Do With It
」(1984年リリース)が生まれる過程も描かれ、当時を知る人にはたまらない感動を与えます。ティナ・ターナーは今年81歳になるそうで、彼女のファンも年配の方が多く、会場は元気なシニアで溢れています。後半になると観客も一緒に歌う、踊る、叫ぶ!中、コンサート会場にいるかのような大迫力には圧倒されますが、とても楽しい時間が過ごせます。大迫力の歌声と会場の一体感を味わいたい方にはお勧めの作品です。

ティナ・ターナー・ミュージカル
TinaThe Tina Tuner Musical
https://tinathemusical.com/

ハミルトンやファントム、エイント・プラウドなど、推したい作品がもりだくさん。zoom
ハミルトンやファントム、エイント・プラウドなど、推したい作品がもりだくさん。

上記3作品のほかにも、前回ブロードウェイ演目紹介記事で取り上げた『ヘイデスタウン(Hadestown) 、『ディア・エヴァン・ハンセン(Dear Evan Hansen)』、『エイント・トゥ・プラウド(Ain’t too Pround)』も相変わらず高い人気を維持しています。

また、ディズニー作品も安定の人気です。『アナと雪の女王(FROZEN)
』、『アラジン(Aladdin)』、『ライオン・キング(The Lion King)』はいつ見ても、何度見ても、誰と見ても、外さない面白さと完成度の高さは流石です。そして、大定番の『オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)』や『シカゴ(Chicago)』も継続して上演されています。

冬のニューヨークは寒くても美しい。ミュージカルの合間は街のライトアップや自然にも癒される。zoom
冬のニューヨークは寒くても美しい。ミュージカルの合間は街のライトアップや自然にも癒される。

2020年オープンの注目作品

最後に、これからオープンを迎える注目作をいくつかご紹介します。
201912月にすでにプレビューが始まっており、220日に正式オープンを迎えるのが、ニューヨークを代表する演目、『ウェストサイド・ストーリー(West Side Story)』です。根強い人気を誇る作品の新たな展開が楽しみです。7月にプレビュー開始予定なのは、マイケル・ジャクソンの名曲をちりばめた『エム・ジェイ・ザ・ミュージカル(MJ The Musical)』です。また、個人的に一番注目しているのが、あのヒュー・ジャックマンがブロードウェイに戻ってくる『ザ・ミュージック・マン(The Music Man)』で、99日にプレビュー開始予定です。これらの作品も追ってブロードウェイ紹介記事で取り上げたいと思います。 

冬のニューヨークは少し寒いですが、ミュージカル鑑賞には悪くない季節です。暖かい劇場で、熱い作品の数々を、ぜひお楽しみください。 

*当記事で紹介した内容はすべて
201912月末時点でのものです。実際にブロードウェイを訪れる際は、各演目の公式ウェブサイトにて最新情報をご確認ください。 

アート&トラベルライター:青山ルビー
ミュージカルやバレエなど、舞台に魅せられて約20年。ロンドン、ニューヨーク、東京で足しげく劇場に通う。「オペラ座の怪人」は25回以上、「レ・ミゼラブル」は15回以上、「RENT」は10回以上鑑賞。新作巡りやキャストにもこだわりが。また、ハワイの大自然と文化をこよなく愛し、ハワイ渡航歴25回以上。ハワイ州観光局公式ハワイスペシャリスト上級(ハープウ)を保持。温泉ソムリエ協会認定温泉ソムリエ。
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