旅の扉

  • 【連載コラム】舞台とハワイと時々ニューヨーク
  • 2019年12月26日更新
アート&トラベルライター:青山ルビー

レ・ミゼラブルが新演出でリニューアルオープン! ロンドン ウエストエンド

クイーンズ劇場から改名して、新たに「ソンドハイム劇場」としてオープンzoom
クイーンズ劇場から改名して、新たに「ソンドハイム劇場」としてオープン
リニューアルした新生レ・ミゼラブル

2019年12月18日、初演から35年を迎えるウエストエンドを代表する名作ミュージカル、レ・ミゼラブルが約半年の休止期間を経て戻ってきました。

この休演はクイーンズ劇場の改修に伴うもので、プロデューサーのキャメロン・マッキントッシュが細部にまでこだわってレミゼにふさわしいシアターとして内装に大幅に手を加えたものです。キャメロンの友人であり、数多くのミュージカル楽曲を手掛けるスティーヴン・ソンドハイムの功績をたたえて、ソンドハイム劇場として生まれ変わりました。

休演していたとはいえ、その期間は近くの劇場で歴代キャストによるレミゼコンサートが開催され、大盛況だったとの事です。
ウエストエンドのランドマーク的な存在、「パレス劇場」 2004年まではレ・ミゼラブルの拠点だった。zoom
ウエストエンドのランドマーク的な存在、「パレス劇場」 2004年まではレ・ミゼラブルの拠点だった。
今回訪れたのは12月23日、リニューアルオープンから数えて5日目の公演です(日曜は休演日)。ノドの療養に入ったジェラルド・カレーの代わりに、著名なコメディアンで、25周年記念コンサートやクイーンズ劇場で過去に酒場の主人役を演じていたマット・ルーカスが、人気の同役、テナルディエとして戻ってきた日です。キャメロン・マッキントッシュの声でマット・ルーカスの帰還がアナウンスされると劇場中から大きな拍手が起こりました。テナルディエは盗みやサギを働く悪役にも関わらず、明るいキャラクターでピエロ的な役割を果たす、陰の主役ともいえる重要な役どころです。

リニューアルされた内容は、これから観るみなさんのために控えますが、オフィシャルサイトで予告されていた通り、素晴らしい楽曲はそのままに、セットや衣装、演出やライティングなどに変化が見られました。大幅なリニューアルではありますが、従来からのレミゼファンを裏切らない、正統派な変革という印象です。

オープニングキャストとして主役のジャン・バルジャン役をつとめるのは、ロンドン版のハミルトンでのキング・ジョージ役で知られ、クイーンズでマリウスを、25周年記念コンサートで革命グループの美しきリーダー、アンジョルラスを演じたこともあるジョン・ロビンズ。インタビューで「20年来のあこがれの役」と話していたジャン・バルジャン役を、全力で演じているのが伝わってくる、素晴らしい熱演でした。

ジャン・バルジャンと対決する看守・警部のジャベールはブラッドレー・ジェイデン。リニューアル前のレミゼでも同役を務めていたほか、過去にはアンジョルラス役も経験しています。余談ですが、レミゼのキャストは、マリウス、アンジョルラス、ジャベールなどの役を経てからジャン・バルジャン役に昇格するキャストが歴代何人も出ています。ブラッドレーもジャン・バルジャンを演じる日が来るのでしょうか。

女性陣もご紹介。名曲「I dreamed a dream(夢やぶれて)」を歌うフォンテーヌ役はキャリー・ホープ・フレッチャー。数々の舞台関連の受賞歴を持つ人で、シンガーソングライターであり、作家だそうです。歌声が素晴らしかったです。

ザ・片思いの名曲として知られる「On my own (オン・マイ・オウン)」を熱唱するエポニーヌ役には、こちらもシンガーソングライターのシャン・アコ。圧倒的な声量と強さのある歌声で、一味違うエポニーヌを表現していました。美しきコゼットを演じるのはリリー・ケホアス。これがウエストエンドのデビューだそうですが、コゼットの可憐だけれど芯が強いイメージそのままに観衆を魅了していました。
2019年10月から再演されているメリー・ポピンズ。前回とは別演出。zoom
2019年10月から再演されているメリー・ポピンズ。前回とは別演出。
レ・ミゼラブルの舞台を彩る名曲たち

レミゼがスペシャルな所以といえば、ファンを魅了してやまない名曲の数々が挙げられます。その中でも、前述の片思いの名曲、
オン・マイ・オウン、歳を重ね行く女性の悲哀を歌った夢やぶれて、ジャベールが自らの信念を歌い上げるスターズ(星よ)、マリウスが戦いに散った友を想って歌うカフェソング(Empty Chairs at Empty Tables)、ジャン・バルジャンが娘のように育てたコゼットと恋に落ちた若者マリウスを、どうか生かしてくださいと神に祈るBring Him Home (ブリング・ヒム・ホーム)の人気が高いと思います。

リニューアル後の新生レミゼでも、これらの名曲は健在ですので、ご安心ください。(なお、一部レミゼファンに不評な、映画用に制作・追加された楽曲Suddenly サドゥンリーは、もちろん舞台には追加されていません)


20年以上にわたりレミゼを観てきて感じるのは、受け取り手である観客の年代やこころの状況、人生の浮き沈みのなかで、どの時点で舞台を見るかによって、感情移入をする役や心に響く楽曲が変わっていくことです。たとえば筆者の場合、20代のときはオン・マイ・オウンにもらい泣きをし、30代で夢破れての歌詞に共感できるようになり、40代にはついに人間愛・博愛主義に目覚めてブリング・ヒム・ホームで大泣きする、という感じです。

男性はわりとジャベールに共感する人が多いと聞きます。レミゼは何度観てもいろいろな楽しみ方ができる舞台ですが、このように色々な受け止め方ができるストーリーと名曲の存在が成せる業なのかもしれません。 
マンマ・ミーアを上演するノベロ劇場、ウェイトレスを上演中のアデルフィ劇場、2020年秋にアナと雪の女王がはじまるロイヤル・ドゥルリー・レーン劇場zoom
マンマ・ミーアを上演するノベロ劇場、ウェイトレスを上演中のアデルフィ劇場、2020年秋にアナと雪の女王がはじまるロイヤル・ドゥルリー・レーン劇場
新生レミゼ以外にも話題作がたくさん

レミゼの紹介が長くなってしまいましたが、新生レミゼ以外にも話題作がたくさん上演されています。



2019年10月に再演が開始されたのが、いかにもロンドン!という演目「メリー・ポピンズ」です。子守りというよりは、総合的な教育係として子供たちと接する「ナニー」を、魔法を使いながら務める人気のキャラクターです。2000年代前半に現代版メリー・ポピンズが上演されていましたが、その内容・演出とも違う、新しいステージです。

主演ジジ・ストラレンが演じる完ぺきなメリーは最高にキュートでエレガント。チムチムニー~で始まる名曲を歌うバート役はチャーリー・ステンプ。前の演出よりも出番や見せ場が多くなったバートには大注目です。
マチルダ、カム・フロム・アウェイ、ライオン・キング、ティナを上演する各劇場zoom
マチルダ、カム・フロム・アウェイ、ライオン・キング、ティナを上演する各劇場
このほか、歌手のティナ・ターナーの半生を描き、NYブロードウェイでも人気のティナや、トロントやブロードウェイでも人気のカム・フロム・アウェイ、ロングランを続けるライオン・キング、オペラ座の怪人、マンマ・ミーア、ブロードウェイでの大成功を受けて2020年秋にロンドンでも上演が開始される予定のアナと雪の女王(Frozen)など、ウエストエンドで観ていただきたい演目は増えるばかりです。

ニューヨークのブロードウェイと並んでミュージカルの本場として知られるロンドンのウエストエンド。伝統ある街並みの中に点在する劇場は築100年を超えるものが多く、続々と改装され次代につなぐ活動が続いています。

アナと雪の女王が上演される予定の、シアター・ロイヤル・デゥルーリーレーンは歴史ある王立劇場で、コヴェント・ガーデンにほど近い由緒正しきシアターですが、現在大幅は改修工事が進行中です。2020年秋のオープンを飾るアナと雪の女王の舞台は、きっと大変な人気になることでしょう。今から楽しみです。
冬のロンドンも美しい。観劇の合間には歴史ある美しい街並みを堪能できるzoom
冬のロンドンも美しい。観劇の合間には歴史ある美しい街並みを堪能できる
*記事中の情報は2019年12月後半時点でのものです。ロンドンで観劇を予定する際は、事前に公式ウェブサイト等で最新情報を入手することをお勧め致します。
アート&トラベルライター:青山ルビー
ミュージカルやバレエなど、舞台に魅せられて約20年。ロンドン、ニューヨーク、東京で足しげく劇場に通う。「オペラ座の怪人」は25回以上、「レ・ミゼラブル」は15回以上、「RENT」は10回以上鑑賞。新作巡りやキャストにもこだわりが。また、ハワイの大自然と文化をこよなく愛し、ハワイ渡航歴25回以上。ハワイ州観光局公式ハワイスペシャリスト上級(ハープウ)を保持。温泉ソムリエ協会認定温泉ソムリエ。
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