(シリーズ「富士急ハイランドに無事入らん!?」【第6回】から続く)
夏の猛暑で疲弊していた今年7月に向かった遊園地「富士急ハイランド」(山梨県富士吉田市)の園内のレストラン「フードスタジアム」では、夏ばて気味だった私を鼓舞してくれるように「暑さに負けるな!夏限定!肉フェア」を開催していた。肉フェアで提供されていた甲州ワインビーフのステーキは一口味わっただけで驚愕するほどの美味で、5月に訪れたアメリカの最大都市ニューヨークの有名ステーキ店「ピーター・ルーガー・ステーキハウス」の味を超えたとの印象を抱いた(個人の感想で、個人差があります)。
【ピーター・ルーガー・ステーキハウス】アメリカ・ニューヨークのブルックリン地区で1887(明治20)年に創業したステーキハウス。牛肉の滋味を引き出すためのドライエージング(乾燥熟成)手法を使い、温度500度の高熱ブロイラーで焼き上げたサーロインとフィレのTボーンステーキが看板メニュー。
店名は創業者であるドイツ系移民、ピーター・ルーガーに由来する。店の近くとニューヨーク中心部のマンハッタンを結ぶウィリアムスバーグ橋が1903年に開通したことでマンハッタンからの来店客が押し寄せるようになり、店の名声が一気に高まった。2021年10月には東京店(東京・恵比寿)を開業しており、2人用のステーキ「ステーキ・フォア2」の価格は3万4千円。
▽猛暑を乗り切る体験を重ね…
富士急ハイランドに足を踏み入れて以来、「これでもか」と言わんばかりに猛暑を乗り切るために清涼感を味わえそうな体験を重ねてきた。
冗談満載の看板に書かれた「オヤジギャグ」に「サブっ」と自分のことを棚に上げてつぶやき、ボートが坂を滑り降りるアトラクション「クールジャッパーン」が着水した際にずぶぬれになった。
乗れるのは54歳までと〝定年〟が迫ったジェットコースターに乗り込んで冷風を浴び、肝を冷やそうとお化け屋敷「戦慄迷宮(せんりつめいきゅう)~闇に蠢(うごめ)く病棟~」を全館踏破した。
▽普通のレストランに驚愕のメニュー
残るは食の夏バテ対策だとばかりに、「暑さに負けるな!夏限定!肉フェア」を実施していたフードスタジアムに飛び込んだ。
店内のフードコートの名称が「高B舎」や「戦慄麺Q」などとアトラクション名をもじった「お笑い」のセンスは富士急ハイランドらしいものの、一見すると遊園地にありがちな普通のレストランだ。
ところが、食事を注文するために券売機のメニュー画面を眺めていると、肉フェアの一環で普通のレストランではお目にかからないような驚愕のメニューが目に飛び込んできた。
▽価格は5桁!
その名は「甲州ワインビーフステーキセット」で、「山梨県を代表する甲州牛を贅沢に使ったステーキプレート」という触れ込みだった。1人分で価格は1万円、何と5桁だ!
甲州ワインビーフは、地元山梨県の特産品のワインを搾って残ったブドウの搾り粕を混ぜた飼料を食べさせて育てたウシの肉だ。関連サイトによると、ポリフェノールが多く含まれたぶどうの搾り粕の飼料を食べさせることで肉の酸化が進みにくく、肉の臭みも抑えられるとされる。
日々の昼食代をケチっている私の第一声は「なにコレ!?高っ!」と、ニュースサイト「47NEWS」や「Yahoo!ニュース」などに連載中のコラム名(『鉄道なにコレ!?』)に引っかけたような奇声を発してしまった(これは広告です)。
一方、今年5月までの勤務先のワシントン支局駐在中に新型コロナウイルス禍後の物価高と、追い打ちを掛ける円安ドル高で金銭感覚が麻痺して「ポチッ」と押したくなってしまう自分もいた…。節約と食欲の綱引きの結果は、火を見るよりも明らかだった。
▽〝高級〟ステーキを食べた結果は…
満を持して甲州ワインビーフステーキが手元に届くと、第一印象は「焼き肉のように薄いステーキ肉だなあ」とやや肩を落とした。
しかし、一口食べた感想は「なにコレ!?めちゃくちゃおいしい!」だった。柔らかい肉は一口かんだだけで肉の滋味が口いっぱいに広がり、まろやかながら実に奥行きが深い味なのだ。
添えられていたタレとも合うのだが、塩を付けるだけでも十分に堪能できる。その味わいは、今年5月にニューヨーク・ブルックリンのピーター・ルーガー・ステーキハウスで食したTボーンステーキを超越しているというのが個人的な受け止めだ。
1万円というのは遊園地のレストランのメニューとしては高額に感じられたものの、「この高クオリティーならばリーズナブルかもしれない」とさえ思えた。同じく8月31日に終了した肉フェアのメニューの一つで、甲州ワイン豚の韓国風焼き肉「甲州ワイン豚のサムギョプサル」(2200円)も美味だった。
かくして暑さを忘れさせてくれる冷涼感を求めて富士急ハイランドを訪れた私は、懐も寒くなった―。
(シリーズ「富士急ハイランドに無事入らん!?」最終回【第8回】に続く)
(連載コラム「“鉄分”サプリの旅」の次の旅をどうぞお楽しみに!)