(「シリーズ『自由・芸術・交通の要衝フィラデルフィア』【6】」からの続き)
アメリカ(米国)東部ペンシルベニア州フィラデルフィアの近郊には南東ペンシルベニア交通局(SEPTA)の「ノリスタウン高速線」というまるで高速鉄道のような路線がある。仰々しい名称に反して1両だけのかわいい外観の電車が行き来しており、日本の中堅私鉄の電車と“激似”だけに「日本に親戚がいるの?」と尋ねたくなる。
▽開業から116年の“老舗”
ノリスタウン高速線はSEPTAの郊外電車「マナヤンク・ノリスタウン線」と接続するノリスタウン交通センター駅と、地下鉄「マーケット・フランクフォード線」や路面電車と乗り換えられる69番街交通センター駅の21・6キロを結ぶ。1907年の開業から116年が経過した“老舗”だ。
▽日中はほぼ30分に1本
沿線にはフィラデルフィア近郊の落ち着いた住宅街が広がっており、原則として午前4時台から翌日午前1時台まで毎日運行している。平日の日中ならばほぼ30分に1本走っている。
▽神鉄のそっくりさん
ノリスタウン高速線を走る1両だけの電車「N5」は銀色の車体で、先頭部に大きな2枚窓と二つの円形ヘッドライトを備えている。これらの特色が兵庫県を走る中堅私鉄の神戸電鉄(神鉄)の電車「3000系」と一致しており、見た目が「そっくりさん」なのだ。
▽まるで路面電車
ノリスタウン高速線は線路脇にある「第三軌条」から電気を集めて走っており、電圧は直流630ボルト。これに対し、神鉄3000系は架線から集電しており、電圧は直流1500ボルトだ。
69番街交通センター駅でノリスタウン高速線に乗車し、N5のややくたびれたビニール製の表皮に覆われた方向転換が可能なクロスシートに腰かけた。
軽快な音を立てながら走り出す様子はまるで路面電車のようだ。駅間距離が短く、下車したい駅に着く前に壁際のボタンを押して運転士に伝えるのも路面電車と同じだ。途中駅は20駅あるものの、プラットホームに利用者がおらず、下車ボタンが押されなかった駅は通過する。
▽いつまで頑張れるか
住宅が点在する雑木林の中を進み、スクールキル川に架かる鉄橋を渡ると終点のノリスタウン交通センターに着いた。
1973年に登場した神鉄3000系は老朽化が進み、一部は既に廃車になっている。ノリスタウン高速線の1両だけで走るかわいい電車もやや年季が入っているが、いつまで頑張れるだろうか。
(次回で本シリーズ最終回!シリーズ「自由・芸術・交通の要衝フィラデルフィア」【8】に続く)
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