旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2023年1月24日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

ひと足早い春旅は、「星のや沖縄」のおこもりステイで非日常の贅沢を満喫

冬は加温され、一年中楽しめるインフィニティプール。目の前に迫る海との一体感を楽しめます。zoom
冬は加温され、一年中楽しめるインフィニティプール。目の前に迫る海との一体感を楽しめます。
立春間近とはいえ、本州の寒さはこれからが本番。夏のビーチリゾートのイメージが強い沖縄ですが、1~3月は本州の春のような陽気でとても過ごしやすい季節。2月初旬には桜の花も見ごろを迎えます。この時期の沖縄では、歴史や文化に触れる旅がおすすめ。美しい海が目の前に迫るロケーションで非日常の贅沢とともに体験できるのが、沖縄を代表するラグジュアリーリゾート「星のや沖縄」です。

圧倒的な非日常を味わうラグジュアリー空間
「星のや沖縄」があるのは、本島中部の読谷村。那覇空港から車で約1時間ほどかかりますが、空港からは那覇中心部のバスターミナルを経由する高速シャトルバスが運行しています。東シナ海に突き出た半島部分にあたる読谷村周辺は、賑やかなリゾートというより住宅や畑が点在する静かなエリア。サトウキビ畑の向こうに水平線が見えるのどかな光景が、沖縄の原風景を思わせます。
そんなのんびりした景色に見とれていると、緩やかにカーブを描く石壁が近付いてきます。この壁の向こうが「星のや沖縄」です。
深海をイメージしたレセプションは幻想的な空間。一気に非日常の世界へ引き込まれます。zoom
深海をイメージしたレセプションは幻想的な空間。一気に非日常の世界へ引き込まれます。
琉球紅型の壁紙に彩られた客室で沖縄の昔話に思いをはせる
「星のや沖縄」のコンセプトは、“グスクの居館”。グスクとは沖縄の史跡のことで、聖域や有力者の住まいなどを囲ったと伝わる場所。海岸線に沿って1km以上続くグスクウォールは、その石壁からインスピレーションを得たものなのだとか。つまり、ここでは琉球王朝時代の貴婦人になったような、贅沢な時間を体験できるのが大きな魅力です。

広大な敷地内に客室はわずか100室。すべて室内から海を望めるオーシャンフロントです。室内に入ると、大きな窓から海の景色が広がり、部屋のなかのどこにいても海を感じられる造り。このあたりの海岸線は沖縄でも珍しい自然海岸で、この自然を守るため岩場や自生する植物をそのまま生かした設計を採用したのだそう。岩の景観はとてもダイナミックですが、入り江なので波は穏やか。バルコニーに置かれたソファから、沖まで続く青い海のグラデーションをずっと見ていても飽きることはありません。
沖縄の工芸品を取り入れた客室。食事の時間を気にせず、気ままにリゾート時間を過ごせる「ギャザリングサービス」も好評。zoom
沖縄の工芸品を取り入れた客室。食事の時間を気にせず、気ままにリゾート時間を過ごせる「ギャザリングサービス」も好評。
琉球紅型が施されたベッドルームの壁紙にも目を奪われます。これは、那覇市生まれの紅型作家・宮城守男氏によるオリジナルデザインで、よ~く見ると沖縄でなじみのある植物のほか、可愛らしいヤギやクロネコの姿も。ブーゲンビリア、サガリバナ、シークヮーサー、月桃の4種類パターンがあり、読谷村に伝わる民話や昔ながらの風習をストーリーにしたものなのだそうです。

海を眺めながら過ごせる「土間ダイニング」には、大型冷蔵庫と電子レンジなどの調理家電を完備。これが活躍するのが、シェフが下ごしらえした料理を客室に届けてもらい、食べたい時間に簡単なひと手間ででき立てを味わえる「ギャザリングサービス」。食事の時間を気にせず、気ままにリゾート時間を過ごせるのがいいですね。メニューも充実しているので、2~3泊連泊するゲストが多いのだとか。自分の家で寛ぐように過ごせるのは、のんびりと楽しみたい春旅にうってつけです。

寒い日も心配なし! 敷地内のアクティビティ&温かいプールで夕刻のアペロタイム
敷地内には沖縄の植物が植えられた中庭が広がり、宿泊棟とレストラン棟、アクティビティ棟が点在します。赤瓦の屋根に、海に向かって大きく開け放たれた窓と縁側がある建物が「道場」と呼ばれるアクティビティ棟。チェックイン後は、ここで沖縄の伝統茶「ぶくぶく茶」で旅の疲れを癒しました。このお茶は琉球王朝時代、宮廷でお客様をもてなしたときに振る舞われていたもの。旅人には、幸せな航海の願いを込めて振る舞っていたのだそうです。
インフィニティプールに面した「集いの館」と夕刻のアペリティフ(上)。「道場」では、沖縄の伝統茶「ぶくぶく茶」を。zoom
インフィニティプールに面した「集いの館」と夕刻のアペリティフ(上)。「道場」では、沖縄の伝統茶「ぶくぶく茶」を。
真冬でも最低気温が15℃を下回ることはめったにない沖縄。プールで泳ぐには少々寒い気がしますが、インフィニティプールの水温は最高40℃。天気や気温を気にせず、海の上に浮かぶような感覚を味わえます。夕刻にプールサイドで過ごすアペロタイムも楽しみ。プールからは東シナ海に沈む夕日を眺めることができ、温かいプールで泳いだ後に冷たいシャンパーニュや泡盛カクテルを味わいながら過ごす時間は、まさに大人ならではの贅沢です。
※「夕映えホットプールアペロ」は2月28日まで。

沖縄の食材がたっぷり詰まった「琉球朝食」
眠る前と、翌朝の目覚めにぜひ体験したいのが、夜の「調律深呼吸」と朝の「鍛錬深呼吸」。どちらもアクティビティ棟「道場」で行われ、夜は1日の疲れをリセットし深い眠りに、朝は1日の始まりに新鮮な空気を体いっぱいに取り込みながら、シャキッとした目覚めへと導いてくれます。
沖縄の食材をたっぷり味わえる「琉球朝食」。連泊するなら、2日目は洋食メニューの「シチリア朝食」がおすすめ。zoom
沖縄の食材をたっぷり味わえる「琉球朝食」。連泊するなら、2日目は洋食メニューの「シチリア朝食」がおすすめ。
「琉球朝食」と「シチリア朝食」の2種類から選べる朝ごはんは、まずは沖縄食材をたっぷり味わえる「琉球朝食」を味わって。オオタニワタリ、ゴーヤーなど島野菜のサラダ、月桃の葉に包まれた魚のマース煮、ゆし豆腐のほか、沖縄風炊き込みご飯のジューシーなど、素材や調理法から沖縄の食文化を体験できます。

沖縄の植物と文化に触れる朝散歩
外壁の役割を果たすグスクウォールと客室棟の間には、グァバ、シークヮーサー、アセロラなどの果樹や、月桃、ハイビスカスなど、南の島でおなじみの草花が植えられた畑が広がっています。「ゆんたく庭めぐり」は、この庭をお散歩気分で散策する朝のアクティビティ。海風を感じながらスタッフの案内で歩き、植栽を通じて沖縄の歴史や文化に触れることができます。タコの木、アダンなどはその名を聞いたことがありましたが、初めて知ったのが「モンパの木」という植物。潮に強いことから防風林、防砂林として植えられ、葉っぱは食用に、幹の部分は明治時代、水中眼鏡として利用されていたのだとか。ハイビスカスの原種や、小さな実を付け始めたグァバもありました。2020年7月のオープンから2年半が過ぎ、すでに自然林のように育ってきた場所もあり、訪れるたびにその成長ぶりを楽しめそうです。
朝のアクティビティ「ゆんたく庭巡り」では、植物を通じて沖縄の歴史と文化を体験。ハイビスカスの原種「アカバナー」と、モンパの木で作った水中メガネ(下)。zoom
朝のアクティビティ「ゆんたく庭巡り」では、植物を通じて沖縄の歴史と文化を体験。ハイビスカスの原種「アカバナー」と、モンパの木で作った水中メガネ(下)。
たびたび訪れている友人は、「沖縄は冬から早春がいいんだよ」と教えてくれました。その言葉どおり、この時期の沖縄は琉球野菜や鮮魚の種類が豊富で、美味しいものを味わう旅にもおすすめ。気温と湿度もちょうどよくて、カラカラに乾燥した冬の東京から訪れると、全身がみるみると潤ってくるのを感じました。沖縄には針葉樹林が少ないので、花粉症の心配もありません。縮こまった体をほぐすひと足早い春旅は、こんなふうにラグジュアリーなリゾートでのんびり過ごすのがいいですね。

※「星のや沖縄」で味わいたい、ディナーコースはこちらから。

沖縄食材の新しい魅力を堪能する、「星のや沖縄」のディナーコース「琉球シチリアーナ」

●星のや沖縄
沖縄県中頭郡読谷村字儀間474
TEL 050-3134-8091(星のや総合予約)
1泊136,000円~(1室あたり、税・サービス料込み、食事は別) 全100室
https://hoshinoya.com/okinawa/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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