旅の扉

  • 【連載コラム】「“鉄分”サプリの旅」
  • 2022年9月4日更新
共同通信社ワシントン支局次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎

大ヒット映画のキャラクターのモデルは“癒やし系” シリーズ「北海道より大きいカナダの島」【13】

△ニューファンドランド島の主要都市セントジョンズ近郊を飛ぶニシツノメドリ(2022年7月、筆者撮影)zoom
△ニューファンドランド島の主要都市セントジョンズ近郊を飛ぶニシツノメドリ(2022年7月、筆者撮影)

 (「シリーズ『北海道より大きいカナダの島』【12】」からの続き)
 カナダ東部の北海道より大きな島、ニューファンドランド島の主要都市セントジョンズ近郊で乗った大西洋を航行する遊覧船のツアーで、観察できることを保証していなかったクジラを3頭も目の当たりにすることができた。このツアーが「必ず見られる」と保証している名物の鳥がおり、その鳥は大ヒット映画に登場するキャラクターのモデルになったという。

△セントジョンズ近郊の大西洋で海面を跳ねるカモメ(7月、筆者撮影)zoom
△セントジョンズ近郊の大西洋で海面を跳ねるカモメ(7月、筆者撮影)

 ▽「ピーピー島」以外にも生息
 船が巡るウィットレス湾自然保護区にはガル島、グリーン島、グレート島、ピーピー島の四つの島がある。お目当ての鳥は鳴き声を聞くと最後の「ピーピー島」が似つかわしいが、船を運航するギャザオールズの共同経営者、マイケル・ギャザオールさんは「四つの島全てに生息している」と説明する。
 海面の近くを銀色のマンボウが泳いでいる姿も見ることができた。自然保護区だけあってどの生物も悠然としている。

△セントジョンズ近郊の大西洋を泳ぐニシツノメドリ(7月、筆者撮影)zoom
△セントジョンズ近郊の大西洋を泳ぐニシツノメドリ(7月、筆者撮影)

 ▽口にしない島の名前
 島に近づくと、「ピーピー」というけたたましい鳴き声が聞こえてきたが「ここはピーピー島だ」と教えてくれているわけではもちろんない(笑)。乗組員は船内放送で「目的の島に着きました」と伝えたが、どの島なのかを口にしなかった。万が一、特定の島が旅行者に知られて他の船で押し寄せられると「オーバーツーリズム」状態になり、環境や自社の商売に悪影響が出ることを懸念しているのだろうか。

△セントジョンズ近郊の大西洋を泳ぐマンボウ(7月、筆者撮影)zoom
△セントジョンズ近郊の大西洋を泳ぐマンボウ(7月、筆者撮影)

 ▽カモメとウミガラスを“ガン無視”
 島の岩肌に灰色の翼を持った白い鳥と、白と黒のツートーンの鳥が密集しているのが見えた。それぞれカモメとウミガラスだ。羽を休めてくつろいでいる様子がかわいらしい。だが、乗組員は「この辺はまだあまりいませんね」と彼らの存在を“ガン無視”した。
 次の瞬間、乗組員が船内放送のマイクを握りながら「オー、この辺の右手の丘にたくさんいるのがみえるでしょう!」と絶叫した。

△セントジョンズ近郊の大西洋で“海上散歩”をするようなニシツノメドリ(7月、筆者撮影)zoom
△セントジョンズ近郊の大西洋で“海上散歩”をするようなニシツノメドリ(7月、筆者撮影)

 ▽待ち受けていた「保証付き」の鳥
 海岸の丘には、ツアーで「保証付き」とうたった目当ての鳥が鈴なりになっていた。くちばしにオレンジ色が入っているのが特徴的な黒と白の毛で覆われた“癒やし系”の外見の鳥「アトランティック(大西洋)パフィン」だ。日本語でニシツノメドリと呼ばれる。外見はペンギンをほうふつとさせるが、体長が40センチ程度とペンギンより小さい。
 ニシツノメドリは北半球の大西洋沿岸に分布しており、大ヒット映画「スターウォーズ」のキャラクター「ポーグ」のモデルになったという。ロケをしたアイルランドの島、スケリッグ・マイケル島にニシツノメドリが多く生息していたのに着想を得て、海洋惑星「オク=トー」に生息しているという設定のまん丸の目をした愛らしいキャラクターを考えついたという。

△セントジョンズ近郊の島にいるニシツノメドリ(7月、筆者撮影)zoom
△セントジョンズ近郊の島にいるニシツノメドリ(7月、筆者撮影)

 ▽スターウォーズのポーグは丸焼きにされるが…
 スターウォーズシリーズの作品「最後のジェダイ」には森林惑星「キャッシーク」出身のウーキー族のキャラクター「チューバッカ」がポーグを丸焼きにして食べようとする場面がある。
 モデルとなったニシツノメドリの顔は、狩猟するのは残酷に思わさるような愛らしさがある。人間に攻撃的なわけでもなく、小柄なので味わえる部分は少なさそうだ。しかし、大西洋の対岸のスコットランドでは「スナックとして食べられていた」と英国人から衝撃的な情報を聞いた。
 クジラを「おいしそう」と言って非難のまなざしを浴びたささやかな“反撃”で、地元住民の女性に「ニューファンドランド島ではまさかニシツノメドリを食べていないよね?」と質問した。すると、その女性は「今は食べていないけれども、昔は食料事情が厳しい時代もあったから…」と何とも歯切れの悪い回答だった。
 (「シリーズ『北海道より大きいカナダの島』【14】」に続く)
 (連載コラム「“鉄分”サプリの旅」の次の旅をどうぞお楽しみに!)

共同通信社ワシントン支局次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎
1973年4月東京都杉並区生まれ。国立東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒。1997年4月社団法人(現一般社団法人)共同通信社に記者職で入社。松山支局、大阪支社経済部、本社(東京)の編集局経済部、3年余りのニューヨーク特派員、経済部次長などを経て、2020年12月から現職。アメリカを中心とする国際経済ニュースのほか、運輸・観光分野などを取材、執筆している。

 日本一の鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」(http://www.tetsutabi-award.net/)の審査員を2013年度から務めている。東海道・山陽新幹線の100系と300系の引退、500系の東海道区間からの営業運転終了、JR東日本の中央線特急「富士回遊」運行開始とE351系退役、横須賀・総武線快速のE235系導入、JR九州のYC1系営業運転開始、九州新幹線長崎ルートのN700Sと列車名「かもめ」の採用、しなの鉄道(長野県)の初の新型車両導入など最初に報じた記事も多い。

共同通信と全国の新聞でつくるニュースサイト「47NEWS」などに掲載の鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」(https://www.47news.jp/culture/leisure/tetsudou)の執筆陣。連載に本コラム「“鉄分”サプリの旅」(https://www.risvel.com/column_list.php?cnid=22)のほか、47NEWSの「鉄道なにコレ!?」がある。

共著書に『平成をあるく』(柘植書房新社)、『働く!「これで生きる」50人』(共同通信社)など。カナダ・VIA鉄道の愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。FMラジオ局「NACK5」(埼玉県)やSBC信越放送(長野県)、クロスエフエム(福岡県)などのラジオ番組に多く出演してきた。東京外大の同窓会、一般社団法人東京外語会(https://www.gaigokai.or.jp/)の元理事。
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