旅の扉
- 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
- 2025年11月18日更新
- よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子
海から山へ! 兵庫県・但馬を旅する「ひょうごフィールドパビリオン」【後編】
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- いったんは絶滅したコウノトリを日本の空に蘇らせた但馬の地。豊かな自然とともに、歴史ある町並みを訪ねる楽しみもあります。
- 摂津・播磨・但馬・丹波・淡路という、歴史も風土も異なる“兵庫五国”と呼ばれるエリアからなる兵庫県。「ひょうごフィールドパビリオン」で体験する但馬エリアでは、ここでしかできない自然体験とともに、話題の映画の舞台になった近畿最古の芝居小屋がある城下町を訪問しました。
自然と向き合い“命をいただく”狩猟体験
野生動物の食害や人間の生活圏を脅かすクマの出現などから、近ごろは狩猟に興味を示す人が増えているといいます。猟師に同行して山に入り狩猟現場を見学し、ジビエ料理とともに田舎暮らしを体験できるのが、「命をいただくを実感する狩猟体験ツアー」。究極の自然体験ができる1泊2日のツアーです。
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- 猟師に同行する1泊2日の狩猟体験ツアー。罠の設置や捕獲シーンからは、自然と共存する暮らしと命に対峙する姿勢が見えてきます。
- ツアーを実施しているのは、宿泊施設を運営する田尻和幸さん・茜さん夫妻。ツアーは昼過ぎに最寄り駅に集合。山に入ってイノシシや鹿を捕獲するするための罠の設置や、実際にかかった動物を仕留める現場を見学し、夜はゲストハウスでジビエ料理やバーベキューなどを味わいます。季節や天候によって、ナイトツアーを実施することもあるとのこと。
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- 地元出身の田尻和幸さんと、妻の茜さん(写真下)が営む「スミノヤゲストハウス」。食事はジビエ料理とともに庭のレンガ窯で焼いたピザが自慢。
- 「命が失われる瞬間に立ち会うことで、命の尊さを感じていただければ」と茜さん。単なる田舎暮らし体験とは異なるリアルな自然体験。改めて命の重みを感じるとともに、人と野生動物のかかわり方の大切さ、難しさも見えてきます。
◎命をいただくを実感する狩猟体験ツアー
https://expo2025-hyogo-fieldpavilion.jp/program/220
◎スミノヤゲストハウス
兵庫県美方郡香美町小代区貫田197
https://www.suminoya55.com/
名物そばと映画『国宝』の舞台になった芝居小屋を訪ねて
江戸時代の情緒を今に伝える出石は、出石城跡とともに豪商の邸宅など歴史ある町並みが残る城下町。国の重要伝統的建造物群保存地区に指定され、ノスタルジックな路地散策も楽しいところです。
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- 江戸時代の街並みが残る城下町・出石は、そば通が訪れる町としても有名。
- “但馬の小京都”と呼ばれる城下町の名物が、お皿に小分けにしてに提供される「出石皿そば」。通常のメニューは5枚のそばと薬味がセットになって1人分ですが、3軒の店を巡って食べ比べができる「出石皿そば巡りセット」が観光センターで販売されています。また、町内のそば店店主からそば打ちを学び、自分で打ったそばを食す「出石でそば打ち体験」はそば通に人気です。
◎但馬國出石観光協会
https://www.izushi.co.jp/
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- 明治から大正時代に賑わった芝居小屋の風情をそのまま残す「出石永楽館」。映画『国宝』のセットの一部が残っています。
- 最近、にわかに注目度が高まっているのが、1901(明治34)年に開業した近畿最古の芝居小屋「出石永楽館」。戦後は映画上映のほか、宝塚歌劇団や歌舞伎公演に使われていたものの、昭和の後半にいったん閉館。大改修を経て2008(平成20)年に復活しました。花道や桟敷、人力による廻り舞台、明治から昭和にかけて繁栄した地元商店の看板など、華やかなりし往時の姿を今にとどめています。
毎年、秋には片岡愛之助さんらによる上方歌舞伎「永楽館歌舞伎」が上演され、多くの歌舞伎ファンに親しまれている芝居小屋です。さらに、映画『国宝』のロケ地になったことから、全国的にその存在が知られるようになりました。
公演日、貸切利用時以外、館内は一般公開され、落語や講演会などのイベントが催されていることもあります。
◎出石永楽館
http://eirakukan.com/
コウノトリと暮らす町で、野生復帰までのドラマチックな歩みを知る
但馬といえば、国の特別天然記念物で兵庫県の県鳥・コウノトリの最後の生息地。コウノトリは翼を広げると2mにもなる大型の鳥。田んぼや湿地、河川を好み、かつては日本各地に生息していましたが、乱獲や農薬の影響により1971(昭和46)年を最後に日本では絶滅してしまいました。その後、ロシアから譲り受けたコウノトリを飼育し、日本の空によみがえらせたのが、但馬エリアの豊岡市。1999(平成11)年には「コウノトリの郷公園」を開設し、飼育とともに試験放鳥を行っています。
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- コウノトリの野生復帰を実践する「コウノトリの郷公園」。園内の飼育施設のほか、市内には約50羽が野生で生息しているそう。
- 「野生復帰したコウノトリが教える地域環境づくり」のプログラムでは、コウノトリの生態と絶滅までの経緯、さらに繁殖と野生復帰までの歩みが紹介されたのち、屋内展示と屋外の飼育施設を見学します。コウノトリの営巣の特徴や、繁殖と飼育、放鳥までの道のりとかかわった人たちのエピソードは、映画の題材にしたくなるほどドラマチック。但馬で繁殖し日本各地に渡った個体の追跡調査の方法も、とても興味深いものでした。プログラムは5名以上のグループが対象ですが、公園施設の一部は一般公開され、ガイドウォークや餌やり体験などのイベントも行われています。
赤ちゃんを運ぶ鳥のイメージがあるコウノトリ。今回は1泊2日の滞在中に飼育施設以外で3回、野生の姿を見かけることができました。大きく翼を広げてはばたくその姿はとても力強く、昔の人がコウノトリを誕生や再生の象徴としてとらえ、“幸運を運んでくる鳥”と呼んだ理由もわかる気がしてきました。
◎兵庫県立コウノトリの郷公園
兵庫県豊岡市祥雲寺128
https://satokouen.jp/
◎野生復帰したコウノトリが教える地域環境づくり
https://expo2025-hyogo-fieldpavilion.jp/program/experience/6
今回、初めて訪れた兵庫県・但馬の地。日本海と山々に囲まれた自然豊かな地には、再訪してじっくり体験したいプログラムやアクティビティがあり、まだまだ知られざる魅力を発掘できそうです。
『海から山へ! 兵庫県・但馬を旅する「ひょうごフィールドパビリオン」【前編】』はこちらから。
↓
https://www.risvel.com/column/1422
ひょうごフィールドパビリオン
https://expo2025-hyogo-fieldpavilion.jp/