旅の扉
- 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
- 2025年11月17日更新
- よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子
海から山へ! 兵庫県・但馬を旅する「ひょうごフィールドパビリオン」【前編】
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- 四季を通じてアウトドア体験ができる兵庫県の但馬エリア。なかでも、「玄武洞公園」の柱状節理に圧倒されます。
- 日本列島のほぼ中央にあり、日本海と瀬戸内海、南北ふたつの海に面した兵庫県。摂津・播磨・但馬・丹波・淡路という、歴史も風土も異なる5つの地域は、“兵庫五国”と呼ばれます。
兵庫というと港町・神戸や、世界遺産の姫路城のイメージが強いですが、まだまだ魅力的なスポットがいっぱい! 今回は、県のほぼ4分の一の広さを持つ但馬エリアを訪れ、全県で展開中の「ひょうごフィールドパビリオン」のプログラムを中心に旅をしました。
洞窟と奇岩が迫るビーチでカヌー体験
日本海と、兵庫県最高峰の氷ノ山をはじめとする山に囲まれ、一年中さまざまなアウトドアが楽しめる但馬エリア。冬は荒々しい波が押し寄せる日本海ですが、春から秋はとても穏やか。透き通った海と白砂の海岸は、ビーチアクティビティを楽しむのにうってつけです。
「山陰海岸ジオパーク」に認定されているのが、東は京都府京丹後市から西は鳥取市まで、3県にまたがる東西約120km・南北約30kmのエリア。地形・地質には、日本列島がユーラシア大陸から切り離されて日本海が形成されるまで、約4千万年の歴史が刻まれているのだそうです。
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- 抜群の透明度を誇る海にカヌーでこぎ出し、洞窟や奇岩を巡ります。(4月中旬~10月中旬)
- 「日本海を巡るジオカヌーツアー」では、透明度の高さから「沖縄より美しい!」と呼ぶ人もいる竹野海岸からカヌーでこぎ出し、洞窟や奇岩を巡りました。この辺りは広重の浮世絵に描かれたこともある風光明媚なビーチ。砂浜を出発し15~20分もすると、海水の浸食でできた洞窟が見えてきます。「淀の洞門」と呼ばれる場所はかつて“淀の大王”と呼ばれる鬼の集団が住み着いていたとの言い伝えから名づけられたのだそう。神秘的な洞窟の中にこだまする波音を聞いていると、古人が抱いた畏怖の念から生まれた昔ばなしに納得できます。
参加対象は小学生以上。半島に囲まれた竹野海岸は波が穏やかなうえ、出発前に陸上でパドルの操作方法などをしっかりレクチャーしてもらえるから安心。濡れても大丈夫な服装とタオルがあればOKです。来年の春以降の予定に、今から計画してはいかがでしょうか。
◎日本海を巡るジオカヌーツアー
場所:兵庫県豊岡市竹野町竹野海岸
https://expo2025-hyogo-fieldpavilion.jp/program/150
MERI Adventure Tours
https://t-motherearth.com/meri/
太古の自然が創造した大彫刻が圧巻! 火山活動から生まれたパワースポット
山陰海岸ジオパークの入り口にあるのが「玄武洞公園」。約160万年前の火山活動によって形成された柱状節理と呼ばれる、圧巻の光景を眺められる場所です。柱状節理とは、火山から噴出した溶岩が冷えて固まる過程で六角形の柱状に規則正しい割れ目が入ったもの。火山国の日本各地で見られますが、玄武洞公園はそのスケールの大きさで知られています。
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- 「玄武洞公園」内にはほかにも「青龍洞」「白虎洞」「朱雀洞」と名づけられた洞窟があり、パワースポットとしても人気があります。
- 玄武洞公園と合わせ、公園入口の向かい側にある「玄武洞ミュージアム」にも足を運びました。世界各国から集められた鉱物や宝石、奇石や化石など約4,000点の展示は、国内屈指の鉱物コレクションとして知られています。しかもこれらの大部分がもともと個人のコレクションだったというのだから、驚きです。膨大な鉱石を収集し、ミュージアムの礎を築いた館長の田中榮一さんは現在91歳。時々ミュージアムの一角におられて、来館者とおしゃべりすることもあるそうです。
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- 上/石や鉱石に魅了される「玄武洞ミュージアム」。下左/館長の田中榮一さん。下右/併設のカフェでは、但馬牛を使ったハンバーガーやユニークなカフェラテを。
- 「ご自身の誕生石を探してみるのも楽しいですよ」と、学芸員の中嶋灯奈さん。水晶、エメラルド、ルビーなどの巨大な原石や、菊の花が咲いているようにも見える菊花石、砂漠の鉱物が結晶化してできた“砂漠のバラ”など、自然の営みから生まれた奇跡とも呼びたくなる石の数々に、時間を忘れて見入ってしまいました。
◎玄武洞公園
兵庫県豊岡市赤石1347
https://genbudo-park.jp/
◎玄武洞ミュージアム
兵庫県豊岡市赤石1362
https://genbudo-museum.jp/
文人たちが愛した「城崎温泉」で、ゆるり湯めぐり
寒さが増すとともに恋しくなる温泉。「玄武洞公園」から車で約10分離れた場所には、「城崎温泉」があります。玄武洞が日本列島の地質形成の歩みが刻まれた場所なら、ここは但馬の文化や歴史の足跡に触れられる場所です。
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- これからの季節は雪景色も美しい「城崎温泉」。外湯巡りとともに、レトロな街並み散策も楽しめます。
- 1300年前の開湯と伝わる城崎温泉は平安時代の歌にも詠まれ、古くから多くの文人・墨客が訪れたことで知られる名湯。7カ所の外湯巡りとともに、志賀直哉、与謝野鉄幹・晶子らのゆかりの地を訪ねる文学碑巡りがおすすめです。また、新鮮や魚介をはじめとしたお土産を扱う「朝市広場」や、その場で魚介を焼いて食べさせてくれる鮮魚店があり、冬の名物・松葉ガニも楽しみです。
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- 上/温泉街のホテルに宿泊すると、7カ所ある外湯を無料で利用できます。下/「川口屋城崎リバーサイドホテル」では、但馬の食材を取り入れた夕食を。大浴場のほか、貸切利用できる露天風呂があります。
- 今回滞在した「川口屋城崎リバーサイドホテル」は、温泉街の入り口にあり、温泉街まで送ってくれるバスがあるのが便利。一番遠い「鴻の湯」で下車し、外湯と温泉街巡りを楽しんでホテルに帰ってくると、夕食後のちょうどいいお散歩コースです。
◎城崎温泉
兵庫県豊岡市城崎町湯島
https://kinosaki-spa.gr.jp/
◎川口屋城崎リバーサイドホテル
兵庫県豊岡市城崎町湯島880-1
https://www.kawaguchiya.co.jp/
次回の『海から山へ! 兵庫県・但馬を旅する「ひょうごフィールドパビリオン」【後編】』では、自然の命に触れる狩猟体験とともに、映画『国宝』のロケ地がある城下町・出石とコウノトリの郷を訪ねます。
◆ひょうごフィールドパビリオン
https://expo2025-hyogo-fieldpavilion.jp/