旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2020年3月25日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

「OTTO SETTE TOMAMU(オットセッテ トマム」のイタリアンは北海道食材の宝石箱

イタリア語で「美食のカレンダー」を意味する「Calendario Gastronomico(カレンダリオ・ガストロノーミコ)」がコンセプト。zoom
イタリア語で「美食のカレンダー」を意味する「Calendario Gastronomico(カレンダリオ・ガストロノーミコ)」がコンセプト。
桜の開花が進み、早くも春本番の東京。北海道最大級のリゾート施設「星野リゾート トマム」でも、そろそろスノーシーズンの終盤を迎えています。「北海道パウダーベルトでゲレンデホッピング!」の締めくくりは、「リゾナーレトマム」のメインダイイング「OTTO SETTE TOMAMU(オットセッテ トマム)」で味わうイタリアンのコース料理をご紹介します。

北海道食材でイタリアの郷土料理を味わう
温暖な気候のイメージがあるイタリア。「北海道でイタリア料理」と聞くと、意外に思われるかもしれません。しかし、トマムは北イタリアのピエモンテ州やリグーリア州とよく似た自然環境にあるのだとか。このレストランでは海、大地、山の多様な食材から今の季節にいちばん美味しい食材を厳選した北イタリアの郷土料理を提供しています。
旬の北海道食材を味わい尽くすコースのスタートは、自家製グリッシーニから。ワインのペアリングとともに味わってみたい。zoom
旬の北海道食材を味わい尽くすコースのスタートは、自家製グリッシーニから。ワインのペアリングとともに味わってみたい。
小さな料理を小箱に詰めた『宝石箱』
テーブルで迎えてくれるのは、『挨拶』と名付けられたグリッシーニ。グラナパダーノチーズ、トマト、バジル、イカスミの4種類のグリッシーニがグラスの中で可愛らしく並んでいます。まずフランチャコスタのスパークリングでのどを潤し、細く繊細なグリッシーニを少しかじると、この後に続く料理への期待感が高まります。

続いて、見開きの書籍ほどの大きさの箱にアミューズ・ブーシュを詰め合わせた、その名も『宝石箱』。ルッコラのソースをのせた毛ガニのフラン、シュー生地のなかにはサーモンのムース、タラのコロッケ、マッシュルームのタルトなど、フィンガーサイズの前菜が8種類。まさに、宝石箱のようなきらびやかさです。
フィンガーサイズの小さな前菜8種類を詰め合わせたアミューズ・ブーシュ。zoom
フィンガーサイズの小さな前菜8種類を詰め合わせたアミューズ・ブーシュ。
口いっぱいに広がる潮の香りに、うっとり♬
冬メニューのスペシャリテが、冷たい前菜『海の太陽』。ウニをたっぷり使ったリーキのパンナコッタです。リーキとは西洋ネギ、ポロネギのことで、地中海沿岸が原産なのだとか。ひと口食べた瞬間、口いっぱいに広がる潮の香りが鼻腔に抜け、海の光景が目の前に広がるよう。濃厚なウニの甘みは、リーキのパンナコッタにも負けていません。コースの序盤から、すでに圧倒されっぱなし!
ウニをたっぷり使ったリーキ(ポロネギ)のパンナコッタ。ふわっと広がる潮の香りと、とろける食感がたまりません!zoom
ウニをたっぷり使ったリーキ(ポロネギ)のパンナコッタ。ふわっと広がる潮の香りと、とろける食感がたまりません!
中身がとろける白子のムニエルに、エゾシカ、旬の魚介、仔羊へと珠玉の食材が続く
お次は温前菜の『雲のたより』。冬が旬の白子を溶かしバターの上澄み部分だけを使ってムニエルにしたものです。網目模様の帽子のように見えるのは、ジャガイモのガレット。トロットロとカリカリの食感の変化も技あり!の一皿です。

パスタ料理『森の足跡』のラグーソースに使われているのは、エゾシカ。森の香りを思わせるジュニパーペリーを効かせた、爽やかな後味が特徴です。魚介料理『潮の温もり』のプレゼンテーションにも驚かされました。コンブとワカメで巻いて蒸し焼きにした松川カレイが鍋に入ったそのままの形で登場し、テーブルサイドで切り分けサーブされます。潮の香りをまとった白身のカレイに、付け合わせのカブにも魚介の旨味がたっぷり。スープの最後の一滴まで飲み干したくなります。

そして、いよいよメインの肉料理『大地の香』の登場。仔羊を肉の脂身で包み、香りと旨みを閉じ込めてローストした“ロートロ”という料理。付け合わせのユリ根とゴボウとの相性も良く、春を待ちわびるような大地の香りが伝わってきました。
上/白子のムニャイア(ムニエル)、中左/パスタはシカ肉のラグー、中右/海藻に包んで蒸し焼きにした鮮魚、下/仔羊のロートロ。zoom
上/白子のムニャイア(ムニエル)、中左/パスタはシカ肉のラグー、中右/海藻に包んで蒸し焼きにした鮮魚、下/仔羊のロートロ。
料理のジャンルを超えて北海道食材の素晴らしさを伝える
これだけの料理を完食しても、甘いものは別腹。6種類用意されたジェラートからは、リゾート内のファームで飼育されている牛のミルク「トマム牛乳」を使ったものとキイチゴを選びました。

最後に、雪山に見立てたイタリア風モンブラン「モンテビアンコ」と、マスカルポーネチーズにフルーツとメレンゲを合わせたイタリアの伝統菓子「メリンガータ」、チョコレートプリンを味わいながら、料理長の武田学さんにお話を伺いました。武田さんはもともとフレンチのシェフとして東京や道内のレストランで腕を振るっていた経験の持ち主。「北海道の食材を生かすにはイタリアンのほうが向いている」との思いから、このメニューを考案したのだそうです。
「イタリアンとフレンチの垣根を越えて、北海道の食材の素晴らしさを伝えていきたい」
と話してくださいました。
ジェラートとイタリアの伝統菓子「モンテビアンコ」をいただきながら、武田シェフのお話を伺いました。zoom
ジェラートとイタリアの伝統菓子「モンテビアンコ」をいただきながら、武田シェフのお話を伺いました。
「OTTO SETTE TOMAMU」の冬メニューは、コースで1万3,000円。ワイン好きなら、ぜひともワインペアリングコース2万円を試してみてください。イタリアの自然派ワインに一部国産ワインも取り入れた独創的な組み合わせは、間違いなく価格以上の価値があります。

今回ご紹介したコース料理の提供は3月31日まで。6月からは夏メニューが登場する予定です。また違う季節に訪れ、北海道の季節の味わいがどんなふうに姿を変えていくのか味わってみたいものです。

【協力】
星野リゾート トマム
https://www.snowtomamu.jp
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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