旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2020年3月6日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

スノーシーズンは終わらない!北海道パウダーベルトでゲレンデホッピング ~5月まで滑走できるパウダーの聖地・大雪山旭岳編~

パウダーを求め海外からも多くの人が訪れる「大雪山旭岳」。快晴ならこんな絶景を楽しめます。@iStockzoom
パウダーを求め海外からも多くの人が訪れる「大雪山旭岳」。快晴ならこんな絶景を楽しめます。@iStock
「Japow(ジャパウ)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
近ごろ、北海道の新雪を求めオーストラリアや欧米からやって来る人たちが増えているのはご存知の通り。北海道のドライパウダーは海外から訪れるスキーヤー&スノーボーダーにとっても憧れの存在で、彼らは「ジャパニーズ・パウダー」を略してこう呼ぶのだそうです。国内外から“パウダーの聖地”とあがめられているのが北海道最高峰の「大雪山旭岳」です。
「星野リゾート OMO7旭川」を拠点に北海道パウダーベルトで楽しむゲレンデホッピング2日目は、市街地から車で約1時間半の場所にあるこの「大雪山旭岳」を訪れました。

北海道最高峰の山岳スキーコース
北海道のほぼ中央に位置する大雪山は50kmにわたって連なる2,000m級の山々の総称。約23万ヘクタールの広がりをもつ山地は、大雪山のほかには日本国内でも例がありません。その主峰が標高2,291m、北海道最高峰の旭岳です。本州にはもっと高い山があり、標高だけをみるとそれほどでもありませんが、北に位置しているため本州の3,000m級の山々に相当する高山環境になるそうです。
ロープウェイ山麓駅の標高は1,100m。つららの長さが気温の低さを表します。zoom
ロープウェイ山麓駅の標高は1,100m。つららの長さが気温の低さを表します。
ちなみに本州で人気のゲレンデ、八方根スキー場の山頂は1,831m、スキー場としては日本最高地点で“天空のスキー場”の別名をもつ志賀高原・横手山渋峠が2,307m。これよりさらに1,000m近く高い標高の雪質を体感できることになります。この数字を頭のなかで計算しただけでわくわくしてくるのは、私だけでしょうか。

国際色豊かな乗客たちをのせ、ロープウエイは山頂を目指す
旭岳はゲレンデというより、山岳コース。全長2,361mのロープウエイが1本架かっているだけで、リフトはありません。またパトロールによるゲレンデ巡回は行っておらず、滑る人はすべて自己責任。そのせいか、標高1,100mの山麓駅から20分おきに発着するロープウエイ内には、本格的な冬山装備のライダーが目立ちます。同時に驚いたのは、外国人客の多さ。この日は乗客の1/3くらいでしたが、平日の多い日は7~8割近くが海外から訪れる人たちで占められることも珍しくないそうです。
100人乗りのロープウエイで旭岳の5号目付近までアプローチ。例年、5月上旬まで滑走できます。zoom
100人乗りのロープウエイで旭岳の5号目付近までアプローチ。例年、5月上旬まで滑走できます。
この日の朝、旭川市内は薄日が差す穏やかな天気だったものの、旭岳が近づくにつれ雲が空を覆い始め、山麓駅に着くころには小雪混じりに。山頂付近はうっすらガスもかかってきました。山麓駅から約10分で着くロープウエイの終点・姿見駅付近の気温はマイナス15℃。久しぶりに「鼻毛が凍る」感覚です。

もっと視界が良ければハイクアップすることを楽しみにしていたのですが、残念ながら冒頭の画像のような旭岳の全景は望めず……。それでも全長約4kmのコースはまさに“パウダー食べ放題”。時々、新雪の吹き溜まりに突っ込み、悪戦苦闘の脱出を何度か繰り返し、無事山麓まで帰還。さらにもう一度、ロープウエイで山頂を目指したものの、午後になって風と雪が強くなってきたため下山することとしました。
ロープウェイの終点、標高1,600mの姿見駅付近。天気が良ければ、ここからさらにハイクアップします。zoom
ロープウェイの終点、標高1,600mの姿見駅付近。天気が良ければ、ここからさらにハイクアップします。
秘湯の趣き漂う山の湯で凍った体を溶かす
ロープウエイ山麓駅から少し下った旭岳温泉には、天然温泉を引湯するホテルや山荘が点在し、日帰り入浴を楽しめます。上ってくるときにチェックしておいた数軒からチョイスした1軒に立ち寄り、氷点下で冷え切った体を温めました。
氷点下15℃のゲレンデで凍えた体を、麓の温泉で溶かしました。zoom
氷点下15℃のゲレンデで凍えた体を、麓の温泉で溶かしました。
私たちはレンタカーを使いましたが、「OMO7旭川」から大雪山旭岳には宿泊者が無料で利用できる送迎バスが出ていて所要時間は約75分。悪天候の場合、市内から15~30分でアクセスできるゲレンデが他にいくつもあるので、その日の天候次第で予定変更は可能です。

週末の夜は地元の「雪バカ」さんとスキー&スノボ談義
「OMO7旭川」で金曜日の夜に開かれているのが、「雪バカたちのFRIDAY」。地元のスキーヤーやスノーボーダーが集まり、スノースポーツの話題で盛り上がるイベントです。
この日、話を聞かせてくれたのは、地元・旭川生まれで2歳からスキーを履いて育ち、現在は「カムイスキーリンクス」や「大雪山旭岳」のガイドツアーも行っている筋金入りの雪バカさん。おすすめのゲレンデやローカルならではの楽しみ方、最近のスキー用具、さらに技術の傾向まで話題が及び、予定の終了時刻を大幅にオーバーしておしゃべりしてしまいました。
地元のスキーヤー&スノーボーダーが集まる「雪バカたちのFRIDAY」。ローカルな話題で盛り上がります。zoom
地元のスキーヤー&スノーボーダーが集まる「雪バカたちのFRIDAY」。ローカルな話題で盛り上がります。
旭川をベースにすれば、午前中だけ滑って午後から市内観光を楽しむことができますし、滞在中の1日、全く滑らずに観光だけの日を作るのもいいでしょう。朝の天気と気分次第でゲレンデや遊び方を選べるのも、都市型スキーの魅力です。

心残りは「大雪山旭岳」の天候がイマひとつだったため山頂の姿を拝めなかったこと。いつか快晴のもと、世界中のスキーヤー&スノーボーダーが憧れる「Japow(ジャパウ)」と戯れてみたいものです。

●大雪山旭岳ロープウエイ
北海道上川郡東川町旭岳温泉
TEL: 0166-68-9111
営業時間: 9:00~16:40(3月~ゴールデンウィーク最終日)
※気象状況により変更になる場合があります。
http://asahidake.hokkaido.jp/

【協力】
星野リゾート OMO7旭川
北海道旭川市6条通9丁目
TEL: 0166-29-2666(宿泊予約)
全237室 1泊4,500円~(2名1室利用時の1名あたり、税・食事別)
https://omo-hotels.com/asahikawa/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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