トラベルコラム

  • 【連載コラム】イッツ・ア・スモール・ワールド/行ってみたいなヨソの国
  • 2013年4月30日更新
夢想の旅人=マックロマンスが想い募らず、知らない国、まだ見ぬ土地。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス

イスラエル シーツの穴

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嘆きの壁(写真すべて ツジ タカヒロ)
おもしろい人と出会いましたよ。

青年実業家。都内に何店鋪もの飲食店を持ち、海外にまで進出してるそうな。若くて成功している人って、小太りで、腹なんか出ちゃって、せっかくのハイラグジュアリーブランドの洋服が残念なことになってるような方が多いんですけど、彼は身体も引き締まっててね。ややストリートよりのカジュアルな洋服をいい感じに着こなしていて好印象、もちろんハンサムです。野性的とでも言えば良いかしら。彼は僕の友達が紹介してくれたんですけど、その友達もやっぱりハンサムですね。ハンサムはハンサム同士で集まる傾向がある。と、僕は思っています。え?結婚してるかって?それは聞かなかったな。失礼、そこ大事なところでした。えーと。愛妻家タイプにも見えるし、世界中のあちこちにガールフレンドがいるようなプレイボーイにも見えます。もしかしたらその両方かも知れません。
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市場
独立する前はある貿易会社にいたそうです。

「で、イスラエルに飛ばされちゃったんです。」

「イスラエル、、って、あの何だか物騒な、。」

「そう思うでしょ?でも、行ってみるとこれが全然違うんです。観光国なんですよ、実は。世界中からたくさんの観光客がバカンスを楽しみに集まって来るんです。日本みたいにちゃんと四季があってね。自然は豊かだし、食べ物は美味いし、女の子はもうとにかくみんな奇麗だし、それに、あまり知られてないけどサッカーがすごく盛んなんですよ。」

サッカーね。どうやら彼のライフスタイルにおいて重要なのは、1、食べ物、2、女の子、3、サッカー、ということらしい。3をキックボクシングに入れ替えると僕になりますね。男子の思考回路なんて所詮そんなレベルってことでしょう。あ、いや、もっと緻密で複雑に思考してる男の人もいるでしょうけど。50も近くなって自分のことを「男子」なんて呼んでいるような人間の頭の中はとてもシンプルにできているのです。一生大人にはなれないの。
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城壁の中
「僕は子供の頃も外国で育ちましたし、仕事でもプライベートでも世界中あちこち行きましたけどね。どこが一番好きかって聞かれれば間違いなくイスラエルって答えます。ナイトライフも充実してるし、美味しいワインもありますしね。地中海、死海、建造物、歴史の遺産、、世界中の素晴らしいものをすべて詰め込んだような国なんだ。天国です。飛ばしてくれてね、会社にも感謝してますよ。あまりに気に入ったもんだから最初1年の予定だったところを自分で仕事作って結局3年延長したんです。」

「でもさ、その、宗教的なモノがあるんじゃない?何かいろいろ面倒な感じがするんだけど、。」

「宗教はもちろんあります。そもそもユダヤ教を信じる人がユダヤ人ですからね。だから黒人のユダヤ人もいるし、ややこしいですけどアラブ人のユダヤ人もいます。イタリア人のユダヤ人も。で、世界中に散らばってるユダヤ人を集めて作った国がイスラエルってわけ。ですからね、マックさん、イスラエルには世界のあらゆるタイプの美女がいるんです。」

ふうむ。ざっくりとした説明だけれど、とてもわかりやすい。

「例えばイスラエルの女の子を口説こうとするじゃない。その時に宗教が障害になるってことはないのかな?」

「それはあります。でも、他の宗教もそうですけど、信仰の度合いは信者によってまちまちです。ユルい人もいれば、ものすごく厳格な人もいる。セックス観も同じで、欧米並みにオープンなのもいますし、男女は同じ部屋の空気吸っちゃいけない、みたいな世界もあります。お互い触れ合っちゃいけなくて、シーツの真ん中に丸い穴が開けられてたり、とか。」

し、シーツに穴、ですか、。

「僕の場合は、やっぱり少しおカタいぐらいの女の子の方が口説きがいがあるかなあ。ソウイウコトはキソクでダメなんです。とか言われると、俄然やる気が出ますもん。」

ふむ。やっぱり、成功者になるためには、これぐらいの強引さとチャレンジ精神が必要なのかも知れません。
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城壁の中
梅雨明けの夏の日差しが目に眩しい午後。黄色いの、赤いの、花咲き乱れる丘の中腹で足を止める。眼下にはオリーブの畑。不等間隔に植え込まれた木々が勝手気ままに太陽に向けひらひらと葉を広げている。その向こうに市街。茶色い石を組み合わせた古い建物らが美しい地平線を織り成している。ところどころで教会の丸い屋根が金色に目映いている。よし、ここでランチにしようよ。丘の緑の上にシーツを敷いて、屋台で買った楕円形のパン、ハーブの入った塩、それからシャルドネ、もちろんオリーブオイル、ひよこ豆を揚げたのとか、たくさんの生の香菜とか、熟したトマトとか。地中海から辿り着いた優しい風が市街まで流れ、城壁に当たって折り返し、文化と宗教の香りを引き連れて戻って来る。
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丘の向こうはパレスチナ区域
あら?地面に敷いたシーツに丸い穴が開いてるね。僕と彼女の視線が交錯する。彼女は少し頬を赤らめる。

なんてね。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス
マックロマンス:プースカフェ自由が丘(東京目黒区)オーナー。1965年東京生まれ。19歳で単身ロンドンに渡りプロミュージシャンとして活動。帰国後バーテンダーに転身し「酒と酒場と音楽」を軸に幅広いフィールドで多様なワークに携わる。現在はバービジネスの一線から退き、DJとして活動するほか、東京近郊で農園作りに着手するなど変幻自在に生活を謳歌している。近況はマックロマンスオフィシャルサイトで。
マックロマンスオフィシャルサイト http://macromance.com
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