旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2020年2月27日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

映画界の巨匠たちが愛する、ニュージーランドの美しき町・グレイタウンへ

アーティストの移住者も多い町として知られるグレイタウン。zoom
アーティストの移住者も多い町として知られるグレイタウン。
ニュージーランドワインの中心的な産地、マーティンボロがあるワイララパ地方の拠点となるのがグレイタウン。人口2,000人ほどの小さな町は、「ニュージーランドで最も美しい小さな町」に選ばれたことがあります。首都・ウエリントンから車で1~1.5時間でアクセスできるこの町は1800年代中頃、農地を求めて都市部からやってきた人々によって計画的に作られました。当時の知事であり、町作りの支援をしたジョージ・グレイ卿に敬意を表し町の名が付けられたそうです。

瀟洒な木造建築の町並みが続くグレイタウン
グレイタウンのメイン・ストリートは、通り名もそのまんま「Main Street」! 端から端まで歩いても20~30分程度のこぢんまりした町ですが、コロニアル風の可愛らしい木造建築が軒を連ね、のどかでのんびりした雰囲気です。
かわいらしい木造建築が並ぶメイン・ストリート。zoom
かわいらしい木造建築が並ぶメイン・ストリート。


ジェームズ・キャメロン監督が手掛ける農園直送野菜を味わえる店
以前にもご紹介したマーティンボロのワイナリー巡りやファームツアーで立ち寄る町としても人気があるグレイタウン。周辺は肥沃な土壌に恵まれ、とても味が濃くて美味しい野菜や果物が採れることでも知られています。そんな環境を求め週末を過ごすためにやって来る人や、移住してくるアーティストが多いのだとか。その一人がカナダ出身の映画監督、ジェームズ・キャメロン氏です。彼とニュージーランドとの出合いは、南極へ行くためにクライストチャーチに立ち寄ったときのこと。南極行きが延期となり、そのままニュージーランド国内を旅して、すっかり気に入ってしまったのだそうです。

数年後には自宅を購入し、移住を果たしたキャメロン監督。さらに広大な土地を購入し、オーガニック野菜や果物の栽培、養蜂などを行う農園まで作ってしまいました。そのファーム直送の農産物やハチミツ、加工品を販売するのが「Food Forest Organics(フード・フォレスト・オーガニックス)」です。店内に並ぶ野菜やハーブはどれも瑞々しく、元気いっぱい。私も旅先でなければたくさん買って自宅に持ち帰りたかったほどです。野菜は買えませんでしたが、強い殺菌作用と抗ウイルス力で知られるマヌカハニーと、マオリ族伝統のハーブ「カウカウ」入りのバームを見つけ、買い求めました。
ジェームズ・キャメロン監督が所有する農園直送の野菜やフルーツが並び、カフェではそれらを使ったメニューを味わえる。zoom
ジェームズ・キャメロン監督が所有する農園直送の野菜やフルーツが並び、カフェではそれらを使ったメニューを味わえる。
通りから見るとこじんまりした店ですが奥行きがあり、裏手には芝生の緑が眩しい庭が広がります。カフェも併設していて、自家農園の野菜を使ったサラダやサンドイッチ、プレートメニューやスイーツ、スムージーなどを味わえます。
●Food Forest Organics(フード・フォレスト・オーガニックス)
101 Main Street, Greytown, Wairarapa
TEL +64 6 304 9790
9:30~16:30
月・火曜休
www.foodforestorganics.co.nz


60種類のチョコレートと“チョコレート占い”が楽しいファクトリー
同じ通りにはテラス席があるカフェやレストラン、ハーブ園を併設するガーデニングショップ、アンティーク雑貨を扱う店や上品なセレクトショップなどが並びます。表通りから延びる小さな路地にも趣がある小さな店が点在し、1軒1軒のぞいていると時間を忘れます。
小さいけれどセンスがいいもの、クオリティが高い雑貨などを扱う店が多い。zoom
小さいけれどセンスがいいもの、クオリティが高い雑貨などを扱う店が多い。
ユニークなチョコレート屋があると聞き訪れたのが、「Schoc Chocolate Factory(ショック・チョコレート・ファクトリー)」。フェアトレードのカカオとニュージーランド産のフルーツやハーブなどを使って作るチョコレートは60種類以上。定番のミルクチョコレートやダークチョコレート、最近、日本でも知られるようになったピンクカカオのルビーチョコレートのほか、ストロベリー、アプリコットなどのフルーツ入り、カレー風味やチリ、カルダモン、ジンジャーなどのハーブを練り込んだものなどがあります。すべて試食でき、斬新な組み合わせから生まれる初めての味に、チョコレートの可能性の大きさを感じました。
約60種のチョコレートはすべてテイスティングOK。お気に入りの味を見つけたい。zoom
約60種のチョコレートはすべてテイスティングOK。お気に入りの味を見つけたい。
ぜひ試してみたいのが好みのチョコレートのテイストから性格を判断する「Chocology(チョコロジー)」、つまりチョコレート占い。私が選んだのは「キャロット&コリアンダー」。いろいろ食べ比べてみて、滑らかな口どけのミルクチョコレートに、ちょっとだけほろ苦いニンジンのピールとコリアンダーの食感が残る組み合わせが気に入りました。占いの結果の方はというと、当たらずとも遠からず。思わずニヤリとする内容だったことだけお伝えしておきましょう。
●Schoc Chocolate Factory(ショック・チョコレート・ファクトリー)
177 Main Street, Greytown, Wairarapa
TEL +64 6304 8960
10:00~16:30 無休
www.schoc.co.nz


名監督のシアタールームがあるレストラン
映画界の巨匠として知られるジェームズ・キャメロン監督ですが、ニュージーランドの映画界で忘れてはならないのが、『ホビット』『ロード・オブ・ザ・リング』を制作したピーター・ジャクソン監督。彼らは自宅が近く、互いに行き来する間柄だといいます。その二人の巨匠にちなんだシアタールームがあるのが、グレイタウンから車で10分ほどの場所にある「The Screening Room Cinema and Eatery(ザ・スクリーニング・ルーム・シネマ・アンド・イータリー)」。タパススタイルの軽食や、地元の食材を使った季節の料理とニュージーランドワインを楽しめるカジュアルなレストランです。
シアターをイメージしたインテリアが楽しいレストラン。地元食材を使った料理からは、この土地の豊かさが伝わってくる。zoom
シアターをイメージしたインテリアが楽しいレストラン。地元食材を使った料理からは、この土地の豊かさが伝わってくる。
店の奥にある2つのシアタールームは、その名も「The Cameron's Room(キャメロンズ・ルーム)」と「The Jackson's Room(ジャクソンズ・ルーム)」。映画を観た後にディナーを楽しんだり、遅めのランチの後で映画を楽しむこともできます。ふたりの巨匠が近くに暮らす町で観る映画は、また異なる感動を与えてくれるに違いありません。
●The Screening Room Cinema and Eatery
(ザ・スクリーニング・ルーム・シネマ・アンド・イータリー)
435 Queen Street, Masterton
TEL +64 6 378 6191
10:00~22:00  無休
www.thescreeningroom.co.nz

日本のガイドブックには、まだまだ紹介されることが少ないグレイタウン。今回は半日ほどの短い滞在でしたが、この小さくて美しい町を訪れる機会に恵まれた幸運に感謝せずにはいられません。またいつか足を運び、1日かけてのんびりと散策を楽しんでみたいものです。

【協力】
ニュージーランド政府観光局 Tourism New Zealand
https://www.newzealand.com/jp/
ニュージーランド航空 AIR NEW ZEALAND
www.airnewzealand.jp
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
risvel facebook