旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2020年2月17日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

ベンガル湾の宝石 チェンナイをみる

旅のハイライト マハーバリプラムの海岸寺院zoom
旅のハイライト マハーバリプラムの海岸寺院

チェンナイは、インド南部の東海岸でベンガル湾に面した都市。南インドの玄関口として、自動車産業や情報産業で日系企業が多く進出する工業都市ですが、観光にも力が入ります。

世界遺産に向かう
まずは世界遺産「マハーバリプラム建築遺跡群」へ向かいます。市街地を海岸線沿いに南へ約60キロ、移動は、配車アプリを使いました。インドで使えるアプリは2種類。アプリ元祖のUberと、インド企業が開発したOlaです。今回は、登録が簡単なUberの8時間プラン(1,999ルピー=約3,000円)を使い、見どころが散在するマハーバリプラムを効率的にまわります。

アルジュナの苦行とは
遺跡群の中央に位置する壁面彫刻「アルジュナの苦行」で車を降り、そこからは歩いてまわります。入場料600ルピーを支払い、敷地の中へ。アルジュナの苦行は31mの長さと9mの高さを誇る世界最大級の屋外彫刻です。象と猿を描いたヒンドゥー文化が、ち密な彫刻となって今に残り、7~8世紀の東西交易が盛んだった様子が窺がえます。

人気のバターボールへ
歩いて北へ向かうと、クリシュナのバターボールのある丘に出ます。人気の落ちそうで落ちない岩の前では、皆様々なポーズで写真を撮っており、触ってみてもやはりビクともしません。全くの自然現象のままの玉石であり、当時タミール系王朝のパラバ王が象を使って動かそうと試みましたが、叶わなかったという逸話があります。

アルジュナの苦行(上)とバターボールzoom
アルジュナの苦行(上)とバターボール

灯台と海岸寺院へ
車に戻り、少し離れた灯台に向ってもらいます。中に入ると、ところどころに小さな窓のある薄暗い螺旋階段が続いていました。歩いて昇るので足が張ります。塔頂へ着くと一変、明るい空の下で遠くまで建物群を見渡せる場所に出ました。爽やかな風の流れる場所は気持ちが良く、時間を忘れついつい長居をしてしまいました。

再度、車で向かうのは海岸寺院。海に向って建つ大小のほこらが散在しています。一番海側の大祠堂(だいしどう)は約18mの高さの5階建てで小祠同とともにシヴァ神をまつり、初期の南インド建築の手本になるものです。
ビーチでは、地元の人々がサリーなどの色鮮やかな民族衣装を着たままで水遊びをしており、見慣れない光景に、このような場所でインドらしさを感じることとなりました。世界遺産で、実際に壁画を間近に見たり、石室の中に入ったり、岩山に登ったり、灯台に上がったりなどの体験ができるのは貴重です。遺跡好きな人は、一日歩きまわっても飽きないのではないでしょうか。

灯台、海岸寺院前で踊る少女、人であふれるビーチzoom
灯台、海岸寺院前で踊る少女、人であふれるビーチ

鉄道博物館に行ってみた
市街地に戻って、チェンナイ鉄道博物館に向かいました。国道の横にいきなり建物が現れます。客車を半分に切った建物がチケット販売所になります。大人料金50ルピー(約75円)を払い、まずは、3階建ての建物の中から見ていきます。一階は、鉄道絵画が並び、プロが描く力作から子供の絵まで種々雑多。中には、感心する様な完成度の高いものもあります。二階に上がると、インド鉄道の歴史を車輌モデルの展示で表現しています。

屋外では蒸気機関車、ディーゼル機関車、客車などが展示されています。館内敷地には何故かレトロ自動車も。年式は不明ですが、ベンツ220Sが置かれていました。名車の往年の姿です。

売店に行くと「チケットを見せて」と言われます。こんなところで検札かと思ったのですが、実は10ルピーの飲みもの料金が含まれているとのことで、パックのアップルジュースを渡してくれました。何か得した気分です。

トイトレイン乗車
次に向かったのは、トイトレイン乗り場。機関車に窓の無い客車が2輌連結しています。いつ動き出すか時刻など何も書かれていません。10数分の後、ようやく係員がやってきて、発車となりました。ガタゴトガタゴトと緑濃い園内800mほどの円周線路を2週走ってくれ、童心に帰る楽しい時間となりました。

博物館内の様子あれこれzoom
博物館内の様子あれこれ

極彩色寺院を目指す
再び車に乗り、カーパーレーシュワラ寺院を目指します。市街地マイラポールの低層の商業施設の並ぶ変哲のない一角に突如現れるのがこの寺院で、インスタ映えのするスポットとしても人気の観光地です。40mほどの高さの四角すいの極彩色な搭門は鮮やかで思わず写真に収めたくなります。入り口では、靴を脱いで入場しました。インドでは多くの見学施設で素足になることが決められています。
寺院内にはいくつかの礼拝施設のような場所があり、目を閉じ座ってみると、静けさの中に早朝ヨガをしていた人々の姿や、聞こえてきたコーランが蘇りました。 ごったがえす街の一角にある寺院。目線は、普段の街の雑踏の様子。上を向いて塔頂部を見ていると、天上の極楽に思える極彩色劇場。その対比がユニークです。

圧倒的な色彩のカーパーレーシュワラ寺院zoom
圧倒的な色彩のカーパーレーシュワラ寺院

オートリクシャーでビーチへ
オートリクシャーとは、東南アジアでよく見かける軽便な三輪タクシーです。
ものは試しと思いマリーナ・ビーチの灯台まで乗ってみましたが、ドアがないので風が直接あたるため涼しく、また渋滞の中でも車の間をぬうように走ってくれ、意外にも快適でした。かなり飛ばすので、最初は少し怖い感じもしましたが、それもいつしか楽しくなっていました。

オートリクシャーに別れを告げ、紅白の壁面を持つ灯台の受付で入場券を購入し、エレベーターで展望台に向かいます。灯台の展望台は、狭い通路が円錐の建物を囲んで通っており、一方通行で見てまわるのがよくあるスタイルですが、ここの灯台は、途中で折り返すという驚きの構造でした。その為、狭い通路に見学者が押し合いへしあい行きかう状況になり大混乱です。案内者は一人いるのですが、あまり役になっているようには思えません。それでも上からの景色は、街並みとどこまでも真っ直ぐに続くベンガル湾の浜辺が見え、その混乱を忘れてしまいような素晴らしいものでした。このビーチは12㎞もあり、インドで一番、世界でも二番目に長いといいます。砂浜の幅も羨ましいくらいに広いです。

展望台から見たビーチに下りてみると、人の背ほどの高さのカラフルな手回し回転遊具が点在し、子連れの家族が遊んでいました。遠目にみる水が綺麗です。ここでは、時間の流れがゆったりしています。すぐそばには釣られた魚が天日干しの状態で並べられており、海鮮マーケットのような造りになっていました。

マリーナビーチの灯台とビーチの様子zoom
マリーナビーチの灯台とビーチの様子

街を歩くと
道路と歩道の境が曖昧で、気を付けながら進むのがアジアの都市部の歩く楽しさでもあります。牛も歩く中、多くの車輌の往来に、程よく緊張感を持ちながら進むと、インドでは家畜の糞で靴が汚れるのはあたりまえ。それが気にならなくなれば、旅の人生の中でインドが上位に躍り出る事でしょう。歩きながら、チェンナイは「ベンガル湾の宝石」ということばがふと浮かびました。

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航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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