旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2020年2月22日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

クラフトビールの街・ウエリントンで訪ねたいユニークなブリュワリー

ハンナズ・レーンウェイにある「フォーチュン・フェイバーズ」は、天気がいい日のテラス席が最高に気持ちいい!zoom
ハンナズ・レーンウェイにある「フォーチュン・フェイバーズ」は、天気がいい日のテラス席が最高に気持ちいい!
「小さいけれどスタイリッシュな首都」「映画製作の街」「コーヒー文化の街」などなど、さまざまな呼び名をもつニュージーランドの首都・ウエリントン。最近では「クラフトビールの街」としてもぐんと注目度が高まり、「ニュージーランドのどこよりもおいしいクラフトビールが飲める」といわれているのだそう。市内から郊外にかけていくつものブリュワリー(醸造所)があり個性的なビールを作る一方、街中ではそれらを飲める醸造所併設のバーにも事欠きません。

このブームを盛り上げているのが、ウエリントンに住むミュージシャンやアーティスト、IT関連の技術者や学生たちなのだとか。彼らから圧倒的な支持を集めるブリュワリーをご紹介します。

にょっきり伸びた“巨大な手”がシンボルのビールバー
前回「世界でいちばん美しい小路を訪ねて」でご紹介したハンナズ・レーンウェイにあるのが、「Fortune Favours(フォーチュン・フェイバーズ)」です。
巨大な手の看板が、手招きしているように見えるのはビール好きの私だけ?zoom
巨大な手の看板が、手招きしているように見えるのはビール好きの私だけ?
ユニークなウォールアートがあちこちに見られるこの界隈でも、古いビルの壁からにょっきり伸びた手がひときわ存在感を放ちます。ニュージーランド産の小麦とホップ、ウエリントンの地下水で造られるビールは20種類以上。看板と同じ手のひらの形をしたタップから注がれる、フレッシュなビールを味わうことができます。
入り口がある1階は、カウンターバーのようにこぢんまりした雰囲気、開放的な2階は大きなテーブルがあるスポーツバーのような店内席と、開放的なテラス席があります。
醸造タンクがある店内では、タップから注がれる新鮮なクラフトビールを味わえる。6種類のテイスティングセットは25NZD。zoom
醸造タンクがある店内では、タップから注がれる新鮮なクラフトビールを味わえる。6種類のテイスティングセットは25NZD。
ずらりと並んだタップからどれを選ぶか迷うところですが、せっかくなら異なる6種類を味わえるテイスティングセットがおすすめ。
お店の人のアドバイスをもらいながら、ネーミングの楽しさとアルコール度数から選んだのは、青く瑞々しいアロマが特徴の「The Adventurer Pilsner(5.8%)」、店がある通りの名前が付けられた「Leeds Street Estate Rose Bier(4.5%)」、アルコール度数は高めだけれど苦みが少なくて飲みやすい「Wellingtonian NZ Hop IPA(6.1%)」、しっかりした飲みごたえがあるIPA「Hatman Double IPA(9.1%)」、香ばしさが特徴の黒ビール「The Necromancer Stout(5.8%)」、曜日限定でリリースされる「Experimental Tropical IPA(5.7%)」の6種類。
このセットは数人でシェアして飲んでもOK。ちなみに、12種類まで選ぶこともできます。
昼間から賑わう店なので、天気がいい日は2階のテラス席でハンナズ・レーンウェイを見下ろしながら飲むのがおすすめ。ひとりでも入りやすい雰囲気だし、この通りなら夜でも安心です。
●Fortune Favours(フォーチュン・フェイバーズ)
7 Leeds Street, Wellington
TEL +64 4 595 7092
11:00~23:00(金・土曜~24:00) 無休
https://www.fortunefavours.beer/


「ウマミ・モンスター」を生み出した刺激的なブリュワリー
ニュージーランド国内ばかりか、世界のクラフトビール業界でも注目されているのが「Garage Project(ガレージ・プロジェクト)」です。ウエリントンの中心部から少し離れた住宅街にある醸造所は、イギリスの高級車「ジャガー」の修理工場だった建物を活かしたもの。2011年にブリュワリーとして稼働を始めました。
「ガレージ・プロジェクト」はその名のとおり自動車修理工場だった建物を改装したブリュワリー。zoom
「ガレージ・プロジェクト」はその名のとおり自動車修理工場だった建物を改装したブリュワリー。
IPA、ピルスナー、スタウトなどの定番ビールも造っていますが、特徴は何といっても斬新なフレーバーのラインナップ。例えば、ソーヴィニヨン・ブランのような香りをもつホップを使い、スパークリングワインのような味と香りに仕上げたものから、燻製ハラペーニョ、カカオニブ、カカオとリュウゼツランを使ったラガーや、コーヒー、バニラ、ココナッツなど、さまざまな材料を取り入れ、ユニークなビールを次々と生み出しているのです。

「日本のカルチャーや食材からインスピレーションをもらうこともある」と話してくれたのは、創業者の一人でもあるジョス・ラッフェルさん。日本から持ち帰った黒糖を用いて数量限定で造っているのが「Kuro(黒)」、ラベルに“初恋”の漢字があるのは「Neo Tokyo Lager」。さらに大量の昆布とカツオを投入して造るビールはその名も「Umami Monster(ウマミ・モンスター)」。麦芽そのものの濃厚な旨みが感じられる黒ビールは、世界中から選ばれたクラフトビールが集まるビアフェスティバルで大絶賛されたそうです。
20種類のビールを味わえるタップルーム。ガレージっぽいインテリアも楽しい。zoom
20種類のビールを味わえるタップルーム。ガレージっぽいインテリアも楽しい。
現在、レギュラーメニューのビールは20種類以上。さらに20種類以上のテイストがあり、季節や日替わりで出番を待っています。ここではテイスティングをして気に入ったビールのボトルや缶ビールを購入できるほか、量り売りも行っています。持ち帰り用の専用ボトルのほか、持参したリターナブル・ビン、ペットボトルでテイクアウトもOK。こんなブリュワリーが近所にあったら、足繁く通ってしまいそうです。

また、ブリュワリーから徒歩2~3分の場所にあるのが、そのビールを味わえる直営のタップルーム。奥に細長く、スタンディングスタイルの店内は、夕方にもなると仕事帰りのビジネスマンや近所の人でぎゅうぎゅうの満員御礼状態です。でも、新しいお客さんが入ってくると、誰からともなく詰め合って場所を開けてくれるのも、フレンドリーで親切な人が多いウエリントンならでは。先ほどご紹介した「フォーチュン・フェイバーズ」とはひと味違ったローカル気分が楽しい店です。
●Garage Project(ガレージ・プロジェクト) ※タップルーム
91 Aro Street, Aro Valley, Wellington
TEL +64 4 802 5324
15:00~22:00(土・日曜は12:00~) 月曜休
https://garageproject.co.nz/
斬新なテイストのビールを続々と提案する創業者の一人、ジョスさん。zoom
斬新なテイストのビールを続々と提案する創業者の一人、ジョスさん。
人気のブリュワリーをハシゴするセルフツアーでクラフトビールを満喫する
ウエリントンの市内中心部に店を構えるバーやレストランで提供される生ビールは、1/4以上が地元産のクラフトビールなのだそう。注目のお店を飲み歩くなら、「Capital Craft Beer Trail(キャピタル・クラフト・ビール・トレイル)」のルートをセルフツアーで回ってみてはいかがでしょうか。
マップをダウンロードすると、市内のバーやブリュワリー、最高級のクラフトビールを扱うリカーショップなど約30軒のお店の概要と場所が紹介されています。近場のお店を徒歩で回ったり、定期的に運行している路線バスを利用してもよく、市内観光気分で出かけてみるといいですね。
●Capital Craft Beer Trail(キャピタル・クラフト・ビール・トレイル)
http://www.craftbeercapital.com/trail/download-map

毎年8月に開催されるのが、ニュージーランド最大のクラフトビール祭り「Beer Vana (ビアーバナ)」。200種類以上のクラフトビールが並び、人気ブリュワリーの醸造家とコミュニケーションできるのも楽しみ。ニュージーランドといえばワインのイメージがありますが、乾燥した気候のウエリントンで飲むビールの美味しさもまた、格別です。
●Beer Bana (ビアーバナ)
http://beervana.co.nz/

【協力】
ニュージーランド政府観光局 Tourism New Zealand
https://www.newzealand.com/jp/
ニュージーランド航空 AIR NEW ZEALAND
www.airnewzealand.jp
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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