旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2019年6月20日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

からだが機体と同化する、跳び飛びの旅の楽しみ

奄美空港に着陸してきたJACのATR42-600型機zoom
奄美空港に着陸してきたJACのATR42-600型機

アイランドホッピング
JALPAKの「跳び飛びの旅」、別名アイランドホッピング。鹿児島と沖縄の離島、南西諸島を飛び回ります。出発地は羽田と伊丹空港で、1泊2日もしくは2泊3日で、8~15フライトする4つのコースから選べます。今回は、2泊3日で15フライトのツアーに参加してみました。

羽田空港を飛び立ったJALのボーイング767-300は一路福岡空港を目指します。福岡空港では次の那覇行きの便まで乗り継ぎ時間が30分しかありませんが、降機後に係員の案内があり30分でも余裕で那覇行きのゲートに。ここからはJTA機の旅で、ボーイング737-800に乗り換えます。

出発は羽田空港から
「あれっ、どうして羽田から那覇まで直行便で行かないの」というような人はこのツアーに参加はしていません。一便でも多く乗ることのできるこのツアーの楽しさがわかっている人には楽しいワンストップになります。ギネス記録の中で「最も売れている製菓あんこ饅頭ブランド」に認定された「博多通りもん」を急いで購入し、那覇行きの機上の人となります。

徳之島空港(上)と与論空港のRAC DHC8-Q400CC型機zoom
徳之島空港(上)と与論空港のRAC DHC8-Q400CC型機

JALグループならでは
JAC日本エアコミューターが、創立35周年の2018年7月1日に新規開設したのは、徳之島⇔沖永良部⇔那覇を結ぶ航空路線。このツアーでは、この区間に離島の拠点ともなる奄美大島を加えて「奄美群島アイランドホッピングルート」が組まれていました。

アイランドホッピングは離島路線の多いJALグループでしかできない空旅を楽しむツアー。中型機、小型機、リージョナル機と乗り継いで、都会から離島へ向かうという行程自体がわくわくします。

ホッピングのスタートは那覇から
那覇では、新滑走路とともに建設の進む新管制塔の工事の様子を見ながら、ホッピング最初の便、沖永良部島行きに搭乗。ここからは、ボーディングブリッジではなくランプから直接乗り込みます。この先、幾度となく搭乗することになるATR42-600型機の乗り心地を楽しみました。この機体の特徴は、機体後方から乗り込むことと、ATR42型機では右舷前方の非常口を挟む座席が向い合せになっていること。後ろ向きの1CDと向かい合いとなる2CD席に座ると、シートピッチが広い快適な空間を楽しめます。

沖永良部へのフライトは、ちょうど昼過ぎだった為、那覇空港で買った「空人(そらんちゅ)マグロかつサンド」を機内に持ち込んでの昼食です。沖縄近海の分厚いマグロに沖縄県産のシークワーサーの香る特製ソースで、早くも旅気分満載です。

機内の様子、マグロカツサンドは3切れあります(一つ食べてから撮影)zoom
機内の様子、マグロカツサンドは3切れあります(一つ食べてから撮影)

一日目は6フライト、二日目に5フライト、三日目に4フライトする中で、北から奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島と5島を巡ります。

奄美空港へ
5島の中でホッピングの起点となり一番利用者の多いのは奄美空港です。
今回のツアーでは一日1回で合計3回経由することになるスケジュールとなっていました。JALグループ便は羽田、伊丹、福岡、鹿児島、沖縄に加え、喜界島、徳之島、与論島とも結ばれています。ターミナルビルは2階建てでボーディングブリッジもある立派な施設です。年間85万人近い利用者数は離島内では別格の規模があります。

今回、鹿児島から奄美空港への移動はツアー最長の路線で1時間15分のJAC3721便でした。
JAC便の離島路線ではドリンクサービス(一部路線)、月刊奄美新聞、キャンディ、ルートマップや絵葉書の配布があります。お子さんが乗っていれば絵本の貸し出しもあり、なかなかの充実ぶり。

空港あれこれ zoom
空港あれこれ 

徳之島へ
徳之島の空港は徳之島子宝空港と呼ばれます。全国でも出生率の高いことや、島内に妊婦が横たわるようにも見える「寝姿山」があることが名前の由来です。一階のレストラン「ブルーマリン」では発着する航空機を眺めながら食事をすることができます。ここでは奄美地方名物の鶏飯を食べてみたいところ。その地方の名物料理や特産品を買えるのも離島めぐりの楽しみのひとつです。

徳之島を結ぶ路線は、鹿児島、奄美大島と沖永良部便があって、鹿児島は機材によって55分~1時間20分、奄美大島と沖永良部へは30分で結ばれます。

沖永良部へ
沖永良部空港は、えらぶゆりのしま空港とよばれます。テッポウユリの原産地として知られ、当地の花はえらぶゆりとして親しまれているそうです。那覇から沖永良部空港へは、今回のツアーで3番目に長い1時間で結ばれます。南風で運用となる滑走路22への着陸の場合、左窓際に座っていると長い沖永良部島の北端に位置する空港の滑走路を眺めながら着陸していく様子を見ることができます。

目線の低い搭乗風景zoom
目線の低い搭乗風景

喜界島へ
喜界空港は、本ツアーで2番目に長い65分かかる鹿児島行きと、最短で20分しかかからない奄美大島からの便で繋がります。空港の特徴は、到着から出発までの動線がひとめでわかること。当日は見送り客が多く、ローカル鉄道の駅のような空港ビルは人でごった返します。喜界空港売店では、サトウキビが機械に吸い込まれ、グラスに黄色い液体が注がれる様子を見ることができます。その場で搾りたてのさとうきびジュースは最高でした。

与論島へ
与論空港は、ツアーで滞在時間が最大となる二泊目の宿泊先となる場所です。利用者数は年間8.2万人と奄美の10分の1の規模でしかありません。それでも、干潮でしか出現しない百合ケ浜の美しさがあって、ダイビング客が多数訪れる観光の島です。最終日の出発前は午後からの出発に備え空港の「ブルースカイ」で名物のもずくそばを食べました。

梅雨でもこの風景を見ることができたzoom
梅雨でもこの風景を見ることができた

ツアーと天候
今回の旅行時期はあいにくの梅雨空。それでツアーの楽しみが減るかと言われるとそうではありません。曇天ではまた、閉じ込められた空気感の中で景色がみずみずしく見えてきます。航空機は、常に天候に左右されながら飛ぶもの。晴れ間を見つけて、美しく光り輝く地上が見えた時には、いつも以上の感動があります。

最終日に喜界島の訪問の後、鹿児島空港で離島旅は終了です。最後に羽田行きの便を待つ間に、鹿児島土産を手に入れるのも楽しい時間。「さつま揚げ」や地元のお菓子「げたんは」を購入しました。空港内のファミリーマートでは少量買うことができるので自分へのお土産にちょうどいいです。

最終的に搭乗できた機体は、記述の機体の他にRACのDHC8-Q400CC、J-AIRのE170とJALのBoeing767-300の合計6機種。バラエティに富んでいます。

旅に出たくなる仕掛けのあるツアー
一日に4~6回のフライトですが、出発空港で当日中の全フライトの搭乗手続きを済ませることができますので、その後の乗継ぎで慌てることはありません。一回一回フライトが完結しており、その集大成で出来上がるこのツアー。座る座席も毎回スマホで簡単に変更できます。機窓を楽しむのはもちろんのこと、空港で展望デッキを探して、自分の乗ってきた、また乗っていく航空機を眺めているとなんともいえない愛着がわいてきます。

ターミナルビルで垣間見る観光ポスターの楽しさや、見送り客でごった返す雑踏に身を置く感覚は、旅に出てみないとわからないものです。3日間で15フライトを終え、羽田空港に帰り着いた時の達成感はまた味わいたくなること間違いありません。次の旅程に想いを巡らせるきっかけとなる楽しいツアーでした。

協力:JALPAK 跳び飛びの旅 ⇒ https://www.jal.co.jp/domtour/kyu/amaminosora/

前回の旅 沖縄アイランドホッパー ⇒ https://www.risvel.com/column/645

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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