旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2019年5月4日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

1ユーロでカフェタイム。パスポートなしで楽しむイタリアはいかが?

3月にオープンしたばかりの『Daitalia(ダイタリア)』。すでに足しげく通う常連さんが増えているとか。zoom
3月にオープンしたばかりの『Daitalia(ダイタリア)』。すでに足しげく通う常連さんが増えているとか。
毎日でも通いたくなる、イタリア流社交場
『クッチーナ・ロカーレ・エ・カフェ』という言葉を知っていますか。イタリアでは地元の人が普段使いに通う、街のカフェと食堂が一緒になった店のこと。ごくごく普通の住宅地にあり、カフェタイムからアペリティフ、ディナーはもちろん、食後にもう1杯飲みたいときにも利用できる、気軽な店です。地域の社交場のような存在でもあり、イタリアの人にはお気に入りのクッチーナ・ロカーレ・エ・カフェが1軒や2軒、必ずあるのだそうです。
そんなイタリアの日常的な食習慣を日本に居ながら体験できるのが、井の頭線・新代田駅近くにある『Daitalia(ダイタリア)』です。

カフェタイムはユーロで! まるでパスポートのいらないイタリア
イタリア、フランスなどのヨーロッパ旅行の経験がある人なら、自宅の引き出しに余ったユーロが眠っているはず。この店では16~18時のカフェタイムに限り、そのユーロで支払いができるのです。エスプレッソは1.5ユーロ(日本円の場合200円)、ドルチェなら3.5ユーロから(500円~)。つまり、パスポートなしでイタリアのカフェ気分を味わえるというわけ。
カフェタイムは、ユーロの支払いOK!(ただし、お釣りは出ません)。日本円ももちろん、使えます。zoom
カフェタイムは、ユーロの支払いOK!(ただし、お釣りは出ません)。日本円ももちろん、使えます。
オーナーシェフの佐藤大介さんは、元プロのサッカー選手。お店のシステム同様、料理人としてはかなりユニークな経歴の持ち主です。引退後はイタリアに渡り、得意なサッカーをきっかけにしてさまざまな人と親しくなるなか、各地のトラットリアで手伝いをしながら郷土料理に触れる機会を得たと言います。

その佐藤さんの実家は寿司屋さん。子どものころから父親に同行し、築地市場で鮮魚の仕入れ現場を目の当たりにし学んでいた経験から、帰国後は都内のカフェやレストランのプロデュース、食材やメニューの提供を手掛けてきました。自らがオーナーシェフを務めるこの店をオープンしたのは、日本中にこんなにたくさんのイタリアンレストランがあるのに、イタリアならどんな小さな町にも必ず見つかる使い勝手のいい店が少ないことに気づいたから。「イタリアの郷土料理と日常的な食習慣をもっと知ってほしい」との思いもあり、地元で店を構えることにしました。
カウンター、テーブル席から調理の様子を眺められるオープンキッチン・スタイル。オーナーシェフの佐藤さんと奥さまの華子さん。zoom
カウンター、テーブル席から調理の様子を眺められるオープンキッチン・スタイル。オーナーシェフの佐藤さんと奥さまの華子さん。
オープンキッチンの店内は、すべての席がシェフズテーブル
メニューは、佐藤シェフが自ら豊洲市場に足を運び、仕入れてきた食材で作るイタリア各地の郷土料理。奇をてらった内容ではありませんが、新鮮で極上の食材にシェフなりの解釈を加えた料理で提供しています。
「シンプルだからこそ、その土地の料理やそこに暮らす人々の想いがストレートに伝わるのではないでしょうか。料理と一緒に、食文化も手渡しできるような店が理想」と佐藤シェフは言います。
オープンキッチンの店内はどの席からもシェフの調理風景が見え、視覚とともに包丁や鍋が触れ合う音、フライパンから立ち上る香りを感じながら、料理ができあがるのを待つ時間にわくわくが止まりません。
野菜とオレンジを合わせた水ダコのカルパッチョ(1180円)。zoom
野菜とオレンジを合わせた水ダコのカルパッチョ(1180円)。
前菜にいただいたのは、『水蛸のカルパッチョ』。瀬戸内産のブラッドオレンジを合わせた初夏にぴったりの一皿は、スパークリングワインやよく冷やした白ワインが進みます。
自慢のパスタ料理のなかでもぜひ味わってみたいのが『カルボナーラ』。もったりしたクリーミーなソースが定番ですが、この店では生クリームは使いません。皮付きパンチェッタとペコリーノチーズ、卵黄に、黒胡椒とやや強めの塩でエッジが効いた味に、カルボナーラのイメージが一新します。

皮付きパンチェッタとペコリーノチーズで作る『カルボナーラ』(1200円)。zoom
皮付きパンチェッタとペコリーノチーズで作る『カルボナーラ』(1200円)。
カフェタイムに、アペリティフに、ディナータイムにと、いろんな用途に使える店。こんな店が地元にも1軒ほしい!zoom
カフェタイムに、アペリティフに、ディナータイムにと、いろんな用途に使える店。こんな店が地元にも1軒ほしい!
明るい時間からスタンディングでエスプレッソや食前酒を楽しむもよし。カウンター席に陣取って目の前で繰り広げられる調理風景をライブのように楽しむのもよし。アフターディナーに軽くもう1杯飲みたいときにも使えます。また、ケータリング、デリバリー、テイクアウトの相談にも乗ってくれるのだとか。こんな店が自宅の近くにあったら、仕事帰りに毎日通ってしまうはず。
ふらりとどこかに旅したくなったとき、パスポートなしでイタリア旅行の気分を味わえる場所。そんな居心地の良さから、1日1回は顔を出す地元の常連さんとともに、少し離れた街からも頻繁に訪れるお客さんがじわじわと増えてきているそうです。

ゴールデンウィークもそろそろ終盤、「どこにも出掛けらなかったわ……」という人は、『Daitalia』でプチトリップ気分に浸ってみてはいかがでしょうか。

●DAITALIA(ダイタリア)
東京都世田谷区羽根木1-4-18
TEL 03-6379-2018
16:00~23:00(カフェタイムは16:00~18:00、L.O.22:30)
※ユーロが使えるのはカフェタイムのみ、ユーロのお釣りには対応していません。
不定休
https://www.daita-lia.com/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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