トラベルコラム

  • 【連載コラム】イッツ・ア・スモール・ワールド/行ってみたいなヨソの国
  • 2012年11月15日更新
夢想の旅人=マックロマンスが想い募らず、知らない国、まだ見ぬ土地。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス

中東 神秘のヴェールの中に

photo すべて by ツジ タカヒロzoom
photo すべて by ツジ タカヒロ
のっけから何ですけど、起きている時間の(そしてたぶん寝ている時間も)だいたい80%は女性のスカートの中身のことを考えながら生きています。物心ついたころからずっとそうで、こういうのは歳をとると薄れていくのだろうと想像していましたが、47歳になった今でも、あまり変化はありません。世の男性も口には出さないだけで、きっと僕といっしょだと思っていたのですけど、仲の良い同世代の友達の話を聞くと、どうもそうではないらしい。彼らの頭の中は、やれ政権がどうだとか、為替がどうしたとか、芸能人が結婚したのどうのなどで忙しく、とても女性のスカートの中身を考える余地はないようです。

秋も深まって最近めっきり寒くなって来ましたが、渋谷あたりを歩いていると、今でもミニスカートに生足姿の女性が通りを闊歩しているのを見かけます。あれはまことにけしからん。そんなに容易に中身が想像できてしまうようでは、スカートがスカートの役割を果たしているとは言えません。ああ嘆かわしい嘆かわしい、とか言いながら、やっぱり横目で見ちゃったりするんですけどね。はい。哲学とは別の話として、女性の美しい脚は好きです。

さて、そんな僕が思う、世の女性が最も美しく見えるコスチュームとは?
何と言ってもイスラム女性の民族衣装がナンバーワンでしょう。全身がヴェールに包まれた、あのミステリアスな風貌は、本当に美しい。その場にひれ伏してしまいたいぐらいの魅力を感じます。もっとも、その衣装が、イスラム社会においての女性抑圧を象徴しているところがあるのは事実でしょうし、女性たちがそれを好き好んで着用しているかどうかは知る術もありません。念のために言っておきますが、僕はその衣装に象徴されるルールやシステムを肯定しているわけではありません。それを語るには僕はあまりにも無知すぎます。ただ、美しいものを「隠す」ことが新たな「美」を紡ぎ出すというポイントには少なからず興味があります。

少し昔の話になりますが、フセイン・チャラヤンというデザイナーがデビューした時はぶっ飛びましたね。彼が発表したコレクションは、イスラムの女性衣装をモチーフにしていながらも斬新、顔までベールに覆われた漆黒のワンピース、丈がショートで太ももまで露出したデザインが、強烈なインパクトを醸していたのを20年近く経った今でも鮮明に憶えています。イラクではサダム・フセインが絶好調で、米英とドンパチやってた時代のロンドンに、敢えての中東色を引っさげてのコレクションは斬新でショッキングでした。

ともあれ、中東には、女性の衣装だけではなくて、何かといろいろ興味があります。だけど、普通に東京に暮らしていて、イスラム圏の文化的な側面を、日常生活の中で知り得ることはなかなか困難です。よほど興味を持って図書館とかにでも通わない限り、情報は入ってこない。でも、それはただ僕らが「知らない」というだけの話で、きっとそこには想像もできないようなクリエイティブで魅力的な世界が広がっているはずなんですよね。歴史、音楽、建築、アート、フード、習慣、ファッション、文学、、どの分野においても。
実は友人が数年前からイラクに住んでいて、ありがたいことに半年とか1年に1回、日本に帰ってくる度に顔を出してくれて、いろいろ話を聞かせてもらっています。例えば僕のような一般人がイラクに1人で旅行に行っても大丈夫なのか?聞いてみたら、やはりそれは無理っぽいですね。友人自身も傭兵の付き添いなしに市街を歩くことはできないし、ほんの数百メートル先で車が爆発したりとか、危険な目にも遭っているらしいです。

僕らはイスラム圏の国々を「中東」というくくりで、ひとまとめにしてしまうのですけど、彼に言わせれば、実際は国や地域によって様々(そりゃあそうだよな。)なんだそうで、中東全域が殺し合いをしているわけではないんですね。バカンスに行ける国だってある。彼のおすすめはヨルダン。中東の中では最も平和で人々も比較的裕福、欧米との交流も盛んで観光客も多いそうな。そして、何と言ってもヨルダンには死海があります。人が湖面にぷかりと浮いて新聞を読んでたりするのどかな光景を、写真などで見たことあるでしょう。あれです。

僕なら、哲学書を持って行くね。難解な言葉も、水の上ならすらすらと理解できそうだもの。青い空の下、ティアドロップのサングラスをかけて、どぎついオレンジ色のサーフパンツを履き、水面にぷかりと浮かんで、ローリングストーンズか何かを聞きながら、缶ビール片手に、読書をしている。すると、あっちの方から例の民族衣装をまとった女の子たちがやって来るんだな。そして、少し恥じらいつつ、するするとヴェールを脱いで、きゃっきゃ笑いながら水着姿で水に飛び込んでくる。「やあ、君たち、こっちへおいでよ。いっしょにビール飲もうぜ。」
マックさん。間違いだらけですよ。イスラムの国ですからね。*お酒は飲めません。それにね。ヨルダンの女の子は誰もあんな衣装着てませんよ。普通にジーパン履いてますから。日本人の女の子、着物、着てないでしょ。あれといっしょです。

そうなのか。うむ。でも、やっぱり行ってみたいなあ。

*高級ホテルなどで外国人向けにアルコールを提供する場所もあるそうです。一般のレストランなどではやっぱりアルコールはNG。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス
マックロマンス:プースカフェ自由が丘(東京目黒区)オーナー。1965年東京生まれ。19歳で単身ロンドンに渡りプロミュージシャンとして活動。帰国後バーテンダーに転身し「酒と酒場と音楽」を軸に幅広いフィールドで多様なワークに携わる。現在はバービジネスの一線から退き、DJとして活動するほか、東京近郊で農園作りに着手するなど変幻自在に生活を謳歌している。近況はマックロマンスオフィシャルサイトで。
マックロマンスオフィシャルサイト http://macromance.com
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