旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2016年6月19日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

キャセイパシフィック航空のジャンボジェットで退役前に香港旅を!

羽田空港でのキャセイパシフィック航空ジャンボジェットzoom
羽田空港でのキャセイパシフィック航空ジャンボジェット

キャセイパシフィック航空の旅客型ボーイング747-400は今年の秋に全機退役となります。アジアの空からも徐々にジャンボジェットが消滅していくのは寂しい限り。

退役前に搭乗し、機内の様子をカメラに収めておこうと思います。
過去のキャセイパシフィック航空ジャンボジェットの飛行経験は何と26年も前。-400型のデビューの頃でした。長い間、緑の翼に縁の無かったことを悔やみつつ、今回は羽田空港から飛び立ちます。

この日はプレミアム・エコノミークラスですので、専用チェックインカウンターを利用して早めに出国しました。ジャンボを近くで見るのが目的です。
普段目にする展望デッキからは伺い知ることの出来ない145番ゲートに向かいます。

美しい曲線を描くガラスの向こうにお馴染みながら見る機会の減ったジャンボジェット。機体番号B-HKTが23年の飛行歴を感じさせず、堂々たる姿で出発準備をしています。斜め前方からの機体のシルエットが実に美しい個性を見せています。没個性となった双発機とは一線を画す圧倒的な存在感。機首部分の安心感をもたらす二階建ての厚み、たくましい4つのエンジン。
やはりジャンボはいいです。

プレミアムエコノミークラスの贅沢な仕様のシートですzoom
プレミアムエコノミークラスの贅沢な仕様のシートです

優先搭乗で、早目に機内に入ります。この日は富士山も見ることのできる右舷30Kを指定しています。このクラスは、3列ほど26席だけのこぢんまりとした空間でとても落ち着きます。窓の外を見れば、二基並ぶエンジンが見える好きな場所です。
緑のファブリックシートは、余裕のある2-4-2の配列で、エコノミークラスよりも2席少ない配置です。20センチのリクライニングと、同じ長さのシートピッチの余裕は思ったより大きく、ゆったりと過ごせました。

最前列は、フットレストが装備されており、引き出すとレッグレストが出てきますので快適です。その他の座席では3段階に調節可能なフットレストがあり、好みの位置を選ぶことができますので、こちらもかなり快適に過ごせそうです。
IFEとテーブルは収納されています。隣席との間に幅があり、肘掛けの取り合いとは無縁です。カクテルテーブルが見えており、更に引き出して使う別のテーブルもある使い勝手のいいデザインです。

プレミアム・エコノミークラスではノイズキャンセリング・ヘッドホンが用意されています。ヘッドレストは、4方向に調節可能で、首や頭をしっかりサポートしてくれますので安定感があります。前方の壁のラックには、ビニール袋に入った機内誌「DISCOVERY」が。新品の機内誌は気持ちがいいです。間もなく使われなくなる貴重な安全のしおりも見納めです。

二つのエンジンの先には富士山が見えましたzoom
二つのエンジンの先には富士山が見えました

前方を見ると、自然にギャレーが目に入ります。
客室乗務員さんの働く姿の奥に、二階への階段の裏側となる斜めの空間が広がっています。このような場所に小さなジャンボの特徴を見つけて嬉しくなりました。

初めにスナックと共にウェルカムドリンクが用意されました。
雲の合間でしたが、予想通り富士山を眺めることができ満足です。
機内では、ランチの時間となります。
フランス ブルゴーニュの赤ワイン ジャンロロンや、南アフリカの白ワイン ボッシェンダル シャルドネが
用意されていました。
機内食は、肉と魚の2種類から選びます。魚料理は、しっかりとした味付けで柔らかく、ワインともよく合うものでした。
食事をしながら外を見ると、セントレア、続いて関西空港も視界に入ってきました。

目を見て丁寧に接客してくれましたzoom
目を見て丁寧に接客してくれました

客室乗務員さんに、過去に取材したキャセイパシフィック航空の雑誌の記事を見せると、リタイアした知り合いの方が写っているとのことで、懐かしいと喜んでくれるなど、皆さん明るくフレンドリーで楽しい時間を過ごすことができました。

退役の近い機体ですので、改めてまずはエコノミークラスから見ていきます。
座席は、後ろの席にリクライニングが響きにくい、エコノミークラスでは珍しい構造でした。ジャンボで
定番の3-4-3の配列です。
ジャンボはドアに付いている窓も客席と同じで大きく、外を眺めることができます。
身体を動かしたい時の機内散策で外が良く見えるのはジャンボならではです。

ビジネスクラスでは、ゆったりとした1-2-1のヘリンボーンシートが美しく並びます。逆Wの字で、
窓際に背中が向くという変則の配列です。
中2列は、目線が離れるので、知らない人同士にはプライベート感があって嬉しい配慮です。

そしてファーストクラス。
ジャンボ特有の前に向かって狭くなる最前方コンパートメントの9席。広々としたソフトレザーの座席と
厚みのあるマットレスで豪華さが際立ちます。
世界の航空会社の中でも最大級のフルフラットのベッド。
トイレは窓が2つある明るく大きな空間でした。
ジャンボジェットのファーストクラスは最前方のコンパートメントになりますので、通過する人もなくエンジンからも離れており、静かでゆったりとしたプライベートの時間が持てる贅沢な客室でした。

憧れのファーストクラスは客室乗務員さんのサービスも優雅ですzoom
憧れのファーストクラスは客室乗務員さんのサービスも優雅です

疲れの残らない4時間のフライトを経て山と海が見える自然豊かな香港の地へ着陸します。
キャセイカラーの緑と赤の照明が映える二階席への階段を昇りきって振り返ると、アッパーデッキ客席が並ぶのが見えてワクワクします。前方には、ドアの開いたコックピットから明るい外の光が漏れています。

キャプテンに「間もなくの退役は残念ですね」と声を掛けると、「僕もそうだが貨物機で-8に乗るんだ」と教えて頂き、ジャンボのDNAはフレーターに残されて生きていることを再確認しました。

今回のフライトを操縦したパイロットのお二人、着陸後の笑顔です お疲れ様でした!zoom
今回のフライトを操縦したパイロットのお二人、着陸後の笑顔です お疲れ様でした!

現在3機のジャンボが近距離国際線で活躍中です。9月30日の香港⇒羽田線CX542便と10月1日の羽田⇒香港線CX543便でキャセイパシフィック航空の旅客型ジャンボジェットの退役が決まっているそうです。

毎日、羽田空港で馴染みのあった機体ですので、この秋に向かって退役が大きく取り上げられることでしょう。
まだ、時間はあります。この羽田空港午前発の利用し易い便で改めてキャセイパシフィック航空ジャンボジェットの雄姿を、乗って確かめてみませんか。



キャセイパシフィック航空 

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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