旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2016年1月16日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

世界最大のエアライン ‐ アメリカン航空のファーストクラスに乗った!

ロサンゼルス空港を離陸するアメリカン航空 ボーイング777-200ERzoom
ロサンゼルス空港を離陸するアメリカン航空 ボーイング777-200ER

人生で一度はファーストクラスで空の上のフルコースを堪能したいと思いませんか。
とは言え、自費でファーストクラスを利用するのは現実的ではありません。

上場企業の役員クラスでも出張時にファーストクラスを利用できるのは、たったの2.3%というデータがあります。一般にはマイレージ特典の利用が現実的ですね。

アメリカ大手でもデルタとユナイテッドを引き離して輸送規模で世界一の座にいるアメリカン航空(AA)のファーストクラスに乗る機会がありました。
ロサンゼルス空港から成田への169便の体験です。

落ち着いた空間が広がる機内zoom
落ち着いた空間が広がる機内

乗降用ドアを入り、いつもとは逆の左方向へ折れると、カリフォルニアの真っ青な空の下から、照明の落とされたファーストクラスの静かな空間へと変わりました。
1-2-1という座席配列の後方中央部2列席に座ります。
各座席のオットマンの上には、ビニールに入った羽毛布団類が高く積まれています。これがファーストクラスの証だと思ってしまうほどの厚みです。
ボーイング777-200ER型機で、コンパートメントの最前方部分が16人だけのスペースです。これがどれほどゆったりしているか国内線を飛ぶ同型機で数えると、およそ75人乗れるスペースです。

座ってみると、前方の席は見えません。身体が沈み込むような安堵感のようなものを感じます。ゆったりしていると、シャンパンなどのウェルカムドリンクを持ってきてくれました。

アメニティの他に、FAさんが手渡してくれる黒い布の袋には室内着が入っています。サイズがあるので、それぞれに目測で選んで渡してくれているようです。

まもなくして、オシボリが配られます。紙製が増える中で、布製のままなのは昔の航空旅行を知る者としては嬉しくなります。

窓際の乗客は旅慣れている様子で、いつも私がしているようにシェードを開けて外を見ていたりはしません。それでも近くの窓の一つが開き、ランウェイ24に向かっていることが垣間見えました。

左から食事、ワインとドリンク、デザートと3つのメニューがありますzoom
左から食事、ワインとドリンク、デザートと3つのメニューがあります

メインのテーブルは結構な大きさがあり、ビジネスデスクとしても充分に利用できるのではないかと思います。
FAさんのゆったりとした動きが優雅に感じられる雰囲気の中で、まずは白いテーブルクロス、その上に黒のランチョンマットが敷かれ、ランチのスタートです。

しっかりとした表紙のメニューには、フラッグシップ・ファーストと書かれています。
この響きはいいですね。アメリカを代表するエアラインの旗艦となる上質なサービスを意味する言葉です。

食前酒はシャンパーニュ・ムタールを選択しました。
シャンパン界の異端児と言われたムタール氏醸造の物だそうです。他に赤白が2種類づつ、ワインコンサルタント厳選ワイン、更にデザートワイン2種という品揃えです。

機内食はアミューズから始まりますzoom
機内食はアミューズから始まります

一口大のオードブルのアミューズブーシュから始まり、前菜二種、スープ、サラダ、メインと続きます。その中身はというとアミューズは、ベーコンのデーツとアプリコット巻きでカンタロープメロン添えでした。普段食べない取り合わせが新鮮です。程なくして前菜が運ばれてきました。選んだのは鮪のソテーでわさび醤油クレーム。
スープとサラダの後はいよいよメインです。4種類の中から牛フィレ肉グリルをチョイス。厚みのある牛フィレスにブルサンチーズ・クラストが添えられています。ステーキは、焼き加減も申し分なく、肉質はかなり上質な物で大満足でした。

一息つくと、デザートのメニューを持ってきてくれます。その中からトッピングを自由にカスタマイズできる特製サンデーを選びました。アメリカで人気のベン&ジェリーズのものです。塩キャラメルがたっぷり添えられた、アメリカンサイズの生クリームを乗せると、アメリカ旅行の余韻を振り返るのに相応しく思えました。
甘い物が苦手な方には、お好みでチーズプレートやフルーツを選ぶこともできます。アメリカンコーヒーと共に頂けば、フルコースも終了です。
個々のタイミングに合わせた丁寧なサービスの中で頂くコース料理は、ここが機内だということを忘れてしまう程のゆったりとした贅沢な時間でした。

AAでは、プレミアム・ターンダウンと呼ぶ就寝用のベッドメイク準備をFAさんがしてくれるサービスがあります。
食事が終わるとさっさと寝てしまう乗客が多いのもファーストクラスの特徴なのでしょうか。
もっと起きていてせっかくの時間を堪能していたいと思いながらも、ふかふかの枕と羽毛布団に包まれるとアッという間に眠りに落ちて行きました。

 

これが機内とは思えないベッドになるシートzoom
これが機内とは思えないベッドになるシート

3時間程経過したでしょうか。このような短時間でも、熟睡した感覚は嬉しい限りです。

まだ寝ている乗客が多い中、起きたことに気がついたFAさんが静かに近づいてきて、ドリンクと軽食はどうかと勧めてくれます。日本蕎麦とのことでしたので、スモールポーションなのを確認してお願いしました。

エンターテインメントにつなぐヘッドセットはBOSEのノイズキャンセリングシステムでした。これで驚くほどエンジンノイズが消えてしまいます。
映画を観ていると到着の二時間前になり、再度、軽食のサービスが始まります。日本にもあるUNOのピザか牛肉ホットパイのチョイスです。さすがに空腹ではないので、メインを外してフルーツをお願いしてみました。FAさんは快く応じてくれ、パフェグラスに様々な果実を盛りつけて持ってきてくれました。これにサラダとタルトが付きますので、充分です。

今回は、肘掛横のテーブルを使ってみました。座席は90度動き、隣の乗客と向かい合わせで食事する事ができますので、夫婦での旅には最適だと思います。また足元のオットマンを利用すれば最大4人で談笑することもできるくらいのゆったりしたスペースです。機内での向かい合わせで頂く食事は、普段とは全く違った不思議な感覚でした。

ワンワールド連合の機体が集合する成田空港zoom
ワンワールド連合の機体が集合する成田空港

アメリカの大手航空会社は3社ともに合併が一段落し、経営が落ち着いています。燃油費の低廉もあって売上を伸ばしており、それにより投資が加速、サービスのレベルも上がって来ているようです。

アメリカン航空ではボーイング777-300ERをフラッグシップに加え、機材更新が進んでいます。成田からシカゴ路線にはすでに、2月からは羽田からロサンゼルス線にボーイング787が飛び始めます。

欧州、南米路線にはファーストクラスを残しつつ、太平洋線に就航する旧来のボーイング777-200ERではファーストクラスを無くしています。今後は2クラスにしてビジネスクラスをアップグレードする計画とのことを、FAさんが聞かせてくれました。

成田までの11時間半、疲れを残さずに到着することが出来ました。

世界一の規模のアメリカン航空のサービスは、こちらから声を掛ける前に動いてくれる自然な接客と、個々の要望にも応えてくれるパーソナルなサービスで優雅な時間を過ごすことができました。
このファーストクラスが無くなってしまう前に、ぜひもう一度乗ってみたいと思いながら、機内をあとにしました。

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

ブログ「あびあんうぃんぐ」:http://blog.livedoor.jp/avianwing
facebook「あびあんうぃんぐ」:https://www.facebook.com/avianwing
Twitter「あびあんうぃんぐ」:http://twitter.com/@avianjune
risvel facebook