旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2015年6月22日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

「航空黄金時代はいつなのだろう」

MGMグランドエアのサービス風景 とても機内とは思えないですねzoom
MGMグランドエアのサービス風景 とても機内とは思えないですね
同世代の仲間で「航空旅行の黄金時代はもう来ないね。昔の空の旅は楽しかったなあ」と言う話題になります。本当にそうなのでしょうか。世界の航空業界は過去の二つの出来事によって劇的に変りました。

一つは、技術的な出来事です。ボーイング747ジャンボジェットの誕生です。それ以前は、単通路機(ナローボディー)という機内の通路が1本の最大でも250人以内のお客様を輸送する機体しかありませんでした。ジャンボジェットが登場すると、一気に最大旅客数500人を超える機体となりました。余裕のある長距離国際線では、ファーストクラス、エコノミークラスでも400席近い輸送力が魅力でした。

飛躍的に座席が増えた事により、旅行会社が団体旅行を組み易くなったのです。航空旅行は庶民のレベルに降りてきたと言えます。高値の華の海外旅行が手の届く範囲になったのがこの頃です。

もう一つは、航空先進国の米国で1979年に始まったデレギュレーションです。当時のカーター政権で航空規制緩和が起こり、多くのエアラインが誕生しました。又、それによる過当競争で消滅する会社も多くありました。現存するエアラインの多くは、この波をくぐり抜けて来ました。アライアンスやマイレージなどもこのデレギュレーションの産物です。最近の航空業界は、この二つの事象の多大なる影響の上に成り立っていると言えます。

話を航空黄金時代と言われる時に戻してみましょう。確かにパン・アメリカン航空の運航した太平洋を越えていたボーイング・ストラトクルーザーには寝台になる座席が設置されていました。ジャンボジェットの2階には、ファーストクラスの旅客専用ラウンジがあり、誰にも指定されていないゆったりしたソファーで寛ぐ姿が当時の雑誌のも取り上げられたものです。自身の経験では、米国ではMGMグランドエアという全席ファーストクラスという航空会社の搭乗経験があります。この先、当時の様子をこのコラムでご紹介したいと思いますが、究極のエアラインサービスと言えるものでしょう。このエアラインも消滅しています。

このように、ファーストクラスの旅客に対してのみ特別なサービスが提供されていましたが、一部の超富裕層だけが享受できる庶民には手の届かない世界の事でした。

その航空の栄華は、パン・アメリカン航空に代表されるアメリカの資本力を持ったエアラインやフラッグ・キャリアと言われる国の資本が入った一国を代表するエアラインの時代と共に終わりを告げ、航空大競争時代へ突入します。
伊丹空港に駐機し出発準備を行うパンナムのボーイング747ジャンボジェットzoom
伊丹空港に駐機し出発準備を行うパンナムのボーイング747ジャンボジェット
サービス競争時代になると、ファーストクラスとエコノミークラスの2クラス制から、その中間にビジネスクラスとプレミアムエコノミークラスの4クラスを持つ会社が多くなってきました。ファーストクラスは無理にしても、ビジネスクラスであれば乗った方は多いでしょう。

かくいう私も、ビジネスクラス黎明期で名前だけビジネスクラスのJAL「たちばな」に搭乗した経験があります。座席や食事は、エコノミーと同じ。違うのは、ジャンボジェットの中で、ドアとドアの一区画を「たちばな」と呼んで静かな空間を売っていた事です。今、このような事をしたら「ばかにするなあ」となってしまいますよね。

初めて海外に行った時に搭乗したタイ国際航空ジャンボはまだましでした。座席は同じものの、区画の一番前は、向かい合わせのエコノミー座席があって、テーブルが設置されていましたので、会議室のようで落ち着けました。鉄道好きな方には、新幹線以前の東海道線特急「こだま」号クロ151パーラーカーに設置されていた個室の雰囲気を思い浮かべて頂ければ近いものがあります。

KLMオランダ航空の場合、ジャンボジェット前方の右舷に縦長のギャレー(調理室)を持っていましたので、その左舷席はエコノミーながら、2-2アブレストの空間をビジネスクラスとしていました。
KLMオランダ航空初期のビジネスクラスシート 壁の奥はギャレー(調理室)zoom
KLMオランダ航空初期のビジネスクラスシート 壁の奥はギャレー(調理室)
今や、日本を含むアジア系や中東系が牽引し、続いて欧米系でビジネスクラスの革新が続いています。少し背伸びすればこのクラスに乗れる時代になったのです。食事も格段に美味しくなって来たじゃないですか。これを新しい航空栄華の時代と言わずして、何と言いましょう。素晴らしい航空旅行のできる時代はこれからもずっと続きます。

海外旅行へ向かう殆どの人は、旅客機で目的地へ向かいます。旅行に掛かる時間の相当の割合を航空機の中で過ごす事になります。

この航空機の移動が楽しくないと、旅行の楽しみは半減してしまうと思います。エコノミークラスであっても、どんどん快適性はUPしています。

今年に入って、最新のエコノミークラスシートが発表されました。Thompson Aero Seatingという英国のメーカーのものです。横一列が常識だったシート配列をスタッガード(格子状)にしました。これですと、見知らぬ横のお客様と肘掛け競争をしなくて済みます。シート幅に加えて身体を横たえる場所が自身の自由になる空間です。

メーカーのカタログによると、エアバスA380だと一階にこのシートを配列すると452席を並べる事ができます。比べてみると、ルフトハンザドイツ航空が一階全てをエコノミークラスにしており、その数420席です。快適性をUPさせて、30席以上も座席を増やす事ができるのは画期的だと思います。早く、このシートを装着したエアラインに乗ってみたいものです。
Thompson Aero Seating HPから A380に搭載された横11列の超ハイデンシティ仕様zoom
Thompson Aero Seating HPから A380に搭載された横11列の超ハイデンシティ仕様
このような色々な話題で、航空旅行の楽しさを発信して行きます。

それでも、昔は良かったと言う方に朗報をお届けします。
ロスアンゼルスにエアハリウッドなる施設があります。
映画の中でも航空アクションは人気がありますが、ここは航空映画に特化した映画サービス会社なのです。

ここでは、パンナムのジャンボジェットの機内を再現した「パンナム・エクスペリエンス」が行われています。インターネットでチケットを購入して、当時のサービスを受ける事ができるというものです。ここでは、Glamorous(魅力的な)という表現が使われていますが、気持ちが伝わります。
Photos courtesy of Mike Kelley / Air Hollywoodzoom
Photos courtesy of Mike Kelley / Air Hollywood
ジャンボジェットの1階メインデッキでのサービスと、2階のアッパーデッキのもので、値段は違います。USD295からは高いか安いか経験してみたいと解らないですね。

Panam Experience
http://airhollywood.com/panamexp/

LAまで行く時間の無い人は、パンナムフライトの経験をしているつもりで、私と一緒に「あびあんうぃんぐ」の旅に出掛けましょう。
航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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