トラベルコラム

  • 【連載コラム】イッツ・ア・スモール・ワールド/行ってみたいなヨソの国
  • 2012年8月22日更新
夢想の旅人=マックロマンスが想い募らず、知らない国、まだ見ぬ土地。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス

リヒテンシュタイン

photo by Yoko Iwabuchizoom
photo by Yoko Iwabuchi
今日はリヒテンシュタインの話をします。えーと、行ったことがない土地の話をするのがこのコラムの主旨だと、前回、皆さんに説明したばかりなんですけど、実は行ったことあるんだな。リヒテンシュタイン。

僕の書いた物を他でも読んだことがある人は知ってますね。僕はこのようにしょっちゅう嘘をつきます。特に「よーし、明日から禁酒するぞ。」みたいな宣言はたいてい守られません。言ってる自分ですら信じてないですもん。なので皆さんどうか僕の嘘に簡単にダマされないように。あ、人を陥れるような嘘はついてないはずです。知る限りでは。

リヒテンシュタイン。西ヨーロッパの中心、スイスとオーストリアに囲まれた小さな公国。アルプスの少女ハイジばりの豊かな自然に囲まれた環境の中、人々は森で撃った鹿の肉や湖で獲れた鱒の刺身なんかをつまみにワインを豪快に飲んでいる。と言ったイメージがありますね。実際は如何に?人口約3万人と少し。国民全員が国立競技場の客席に収まって、まだ1万4千人分の空席が出ます。

さて、その3万人リヒテンシュタイン人のうちの1人が東京に住んでいます。彼は結婚していて子供もいる。普通に社会人として会社勤めしている。満員電車にも乗ります。何でそんなことを知っているか?実は彼の奥さんってのが僕の実の妹なんだ。つまり彼は僕の義理の弟ってわけ。

僕がリヒテンシュタインを訪れたのは彼らの結婚式に出席するためでした。15年ぐらい前だったかなあ。式の前夜に到着して、当日は朝から深夜までずっとお祝いで飲み続けて、翌日の午前中に飛行機で帰って来たから、土地の事は何もわからずじまい。せっかくなのにもったいない。ってなわけでリヒテンシュタインは、僕が行ってみたい土地の中でもけっこう上の方にランクされているのです。ぜひゆっくり時間をかけて、いろいろ見て回りたい。
現地に住んでる人じゃないと知らないような小話がいくつかあります。えーと、そのイチ。毎年ある時期(季節はどれだか忘れました。)になると妙な風が吹く。その風に当たると国民全員が具合が悪くなる。頭痛がしたり、気分が落ち込んだりする。風が止むと、それまでが嘘だったかのように元に戻る。マジですか?

その二。山の上の森の中に人が住んでいる。その人たちは絶対に山を下りて来ない。街の人とは交流が全くない。出会ったとしても口もきかない。スーパーで買い物をしたりしないし、サッカーボールを蹴って遊んだりもしない。て、ことはたぶん自給自足してるんでしょうね。よくあるヒッピーのコミューンみたいのとはちょっと違うようだ。ずっと昔から山に暮らしていたらしい。果たしてその人たちは国立競技場にいる3万人の中に登録されているのかしら?

ね。こんな話は旅行ガイドブックには絶対載ってないですね。ほんとか嘘かわからないけれど、僕が現地で耳にしたお話。僕の作ったネタじゃないですよ。真意のほどは妹夫婦に聞いてみればすぐにわかるんだけど、こういうものごとはあまり突き詰めないで頭の中にとっておいた方が面白い。と、僕は日頃から考えて生きております。血液型の話で盛り上がってる時に「いやいや、それは医学的に全く根拠がないのだよ。」なんて言う人がいるとつまんないじゃんね。あとクリスマスになると必ず聞くの、「僕たちはクリスチャンじゃないからクリスマスとは無関係だ。」ってセリフ。いいじゃんね、楽しんでいこうよ。
おっと話がそれました。ま、いいか。オチがない話をダラダラ続けるのがマックロマンス流。うむ。

さておき、リヒテンシュタインについて特筆すべきことがひとつある。それは貧乏そうな人がいない。と、いう事実。街は奇麗でよく整備され、人々は裕福で幸せそうに見える。ブルーワーカーと呼ばれる人たちでも、例えば僕が泊まっていたホテルで見かけた窓ガラスの掃除人は、ピカピカの新車のゴルフに乗って出勤していた。あんな小さな国で経済のシステムがどうなっているのか知らないけれど、あまりにも負の部分が見えない世界観は、ディズニーランドのように完璧に作られたフェイクな街にいる時の感じと少し似ているように感じました。

って話を義理の弟にしたら、彼がそれを憶えていて、自分の父親が来日した時に「お兄ちゃんがリヒテンシュタインはディズニーランドみたいだって。」って言ったもんだから、お父さん頭を抱え込んでしまいました。おいおい、はしょり過ぎだよ。

次にリヒテンシュタインに行くことがあったら、ぜひその妙な風が吹くシーズンを狙って、どんなものか体感してみたいと思います。あるいはそれは日本人には作用しなかったりして。そして必ず、山に登って森の原住民とコンタクトを取るのだ。いざと言う時のために、今のうちからトレイルランとかで身体を鍛えておかねばなりませんな。姿を見た者は生かしては帰せぬ。なんて追っかけられてはかなわんわい。何を着て行くかも重要ですね。身軽で動きやすく機能的でなくてはならない。インナーはスキンズで良いとして、キャメルバッグはナイキかしら。なんて旅行は行く前にいろいろ想像するのが一番楽しいところです。
そうそう。義理の弟は普段、僕のことを「お兄ちゃん」と呼ぶのだけれど、ある日突然「アニキ」と呼び出したことがありました。どうやら北野武監督の「ブラザー」を観たらしい。「アニキ」だってさ。笑っちゃうね。

いかがでしたか?ずいぶんとっちらかった内容になってしまいましたが、少しでもリヒテンシュタインに興味持っていただけたら幸いです。スイスのチューリッヒから電車で1時間ぐらいで行けますので、ヨーロッパに旅行に出かける方はぜひ寄ってみてはいかがでしょう?それではまた次回。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス
マックロマンス:プースカフェ自由が丘(東京目黒区)オーナー。1965年東京生まれ。19歳で単身ロンドンに渡りプロミュージシャンとして活動。帰国後バーテンダーに転身し「酒と酒場と音楽」を軸に幅広いフィールドで多様なワークに携わる。現在はバービジネスの一線から退き、DJとして活動するほか、東京近郊で農園作りに着手するなど変幻自在に生活を謳歌している。近況はマックロマンスオフィシャルサイトで。
マックロマンスオフィシャルサイト http://macromance.com
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