旅の扉

  • 【連載コラム】「“鉄分”サプリの旅」
  • 2025年10月31日更新
共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎

夢の鉄道旅行プラン、「初受賞」の可能性も 第15回鉄旅オブザイヤーが募集開始

△「くまモン」を装飾した熊本電気鉄道の6000形。元東京都交通局の地下鉄三田線で使われていた車両(熊本市で大塚圭一郎撮影)zoom
△「くまモン」を装飾した熊本電気鉄道の6000形。元東京都交通局の地下鉄三田線で使われていた車両(熊本市で大塚圭一郎撮影)

 優れた鉄道旅行を表彰する賞「鉄旅オブザイヤー」を主催する鉄旅オブザイヤー実行委員会は2025年10月31日、一般の方や団体から「夢の鉄道旅行プラン」を募る25年度(第15回)の一般部門の募集を始めた。締め切りは25年12月19日金曜日。授賞式は26年4月15日にさいたま市の鉄道博物館で開催される予定で、最高賞「ベストアマチュア賞」(1点)の受賞者には賞状と賞金5万円、JR協賛による記念品が贈られる。募集対象に入っていながら受賞歴がなく、選ばれれば「初受賞」となるカテゴリーもある。

△鉄道博物館(さいたま市)で開催された2024年度(第14回)の「鉄旅オブザイヤー」授賞式。最後尾の列の一番右が筆者(鉄旅オブザイヤー実行委員会提供)zoom
△鉄道博物館(さいたま市)で開催された2024年度(第14回)の「鉄旅オブザイヤー」授賞式。最後尾の列の一番右が筆者(鉄旅オブザイヤー実行委員会提供)

 【鉄旅オブザイヤー】国内の鉄道旅行に贈られる代表的な賞で、テレビ番組で「鉄道旅行のアカデミー賞」と紹介された。旅行業界でつくる鉄旅オブザイヤー実行委員会が主催して2011年度から毎年実施しており、25年度で15回目。後援にはJR旅客6社全て、日本民営鉄道協会、日本観光振興協会、日本旅行業協会、全国旅行業協会が入っている。
 一般部門の最終審査員は、いずれも熱心な鉄道愛好家として知られるフリーアナウンサーの久野知美さん、ホリプロの南田裕介マネージャー、お笑い芸人「ダーリンハニー」の吉川正洋さんが務める。
 旅行会社のツアーを対象にした旅行会社部門も12月19日まで募集している。外部審査員は委員長の山口昌彦・月刊「旅の手帖」編集長、本連載コラム「“鉄分”サプリの旅」執筆者の大塚圭一郎・共同通信社経済部次長ら計10人が務める。

△JR九州豊肥線を走るディーゼル車両キハ47形(熊本県大津町で大塚圭一郎撮影)zoom
△JR九州豊肥線を走るディーゼル車両キハ47形(熊本県大津町で大塚圭一郎撮影)

 ▽26年度のDC開催地が対象に
 鉄旅オブザイヤーの一般部門は2016年度に開始。JR旅客6社と地元自治体が開催する大型観光企画「デスティネーションキャンペーン」(DC)が翌年度に開催される地域への旅行プランを募集するのが通例で、今回は26年度のDC開催地への旅行企画が対象となる。
 対象は福島県(DC開催は26年4~6月)、熊本県(同26年7~9月)、山口県(同26年10~12月)、京都市(同27年1~3月)となる。

△JR九州豊肥線を力走する電車815系(熊本市で大塚圭一郎撮影)zoom
△JR九州豊肥線を力走する電車815系(熊本市で大塚圭一郎撮影)

 ▽「こんな鉄道ツアーがあったらいいな」を募集
 鉄旅オブザイヤー実行委員会は「『こんな鉄道ツアーがあったらいいな』という夢の旅行企画をどんどん応募してほしい」とアピールする。
 応募者として想定しているのは「鉄道が好きな方、旅行が好きな方、企画・旅程作りが好きな個人」に加え、「鉄道研究会・旅行研究会など各種団体様、大学・専門学校の講義課題にも活用していただける」と提案している。

△JR西日本下関総合車両所新山口支所(山口市)に停車中のディーゼル車両キハ40形(大塚圭一郎撮影)zoom
△JR西日本下関総合車両所新山口支所(山口市)に停車中のディーゼル車両キハ40形(大塚圭一郎撮影)

 ▽DC開催時期には限定せず
 企画内容については、DCの開催時期に限定しない。例えば福島県では2026年4~6月にDCが開催されるが、秋の紅葉を楽しむために東武鉄道の特急「リバティ会津」と路線バスを乗り継いで福島県檜枝岐村を訪れるプランを応募することも可能だ。
 1泊2日以上のプランを応募する場合には宿泊する地域も記載するが、宿泊施設を特定する必要はない。

△JR東日本の新津駅(新潟市)と会津若松駅(福島県会津若松市)を結ぶ蒸気機関車(SL)列車「SLばんえつ物語」の前に立つ筆者zoom
△JR東日本の新津駅(新潟市)と会津若松駅(福島県会津若松市)を結ぶ蒸気機関車(SL)列車「SLばんえつ物語」の前に立つ筆者

 ▽「初受賞」の可能性も
 また、一般部門、旅行会社部門ともに募集要項で「訪日外国人を対象とした企画も対象となります」と明記している。2025年10月13日に閉幕した大阪・関西万博の開催も追い風になり、日本政府観光局によると25年1~9月累計のインバウンド(訪日客)は3165万500人と過去最速で3千万人を突破した。25年通年では4千万人を初めて突破し、2年連続で過去最高を更新するのは確実な情勢だ。
 ところが、これまでの鉄旅オブザイヤーでは訪日客に特化した企画の受賞歴はない。このため、もしもインバウンド向けの鉄道旅行企画というカテゴリーで選ばれれば「初受賞」となる。共同通信社のニューヨーク、ワシントン両支局に駐在した経験を持ち、アメリカに通算10年住んだ審査員の大塚圭一郎は「鉄旅オブザイヤーがよりグローバルな賞に育ってほしいので、インバウンドが喜びそうな鉄道旅行プランを是非応募してほしい」と話している。
 応募者は、鉄旅オブザイヤーのホームページでダウンロードできる応募用紙に必要事項を記入し、資料を添えて電子メールで事務局へ提出する。応募できるのは未発表作品に限り、他のコンテストなどの入賞作品や出版した作品は応募不可。また、応募したプランが実際に旅行商品化される場合には著作権を放棄し、利益還元を受けないことに同意することが必要となる。
(連載コラム「“鉄分”サプリの旅」の次の旅をどうぞお楽しみに!)

共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎
1973年4月、東京都杉並区生まれ。国立東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒。1997年4月に社団法人(現一般社団法人)共同通信社に記者職で入社。2013~16年にニューヨーク支局特派員、20~24年にワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。2024年9月から現職。国内外の運輸・旅行・観光分野や国際経済などの記事を積極的に執筆しており、英語やフランス語で取材する機会も多い。

日本一の鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」(http://www.tetsutabi-award.net/)の審査員を2013年度から務めている。東海道・山陽新幹線の100系と300系の引退、500系の東海道区間からの営業運転終了、旧日本国有鉄道の花形特急用車両485系の完全引退、JR東日本の中央線特急「富士回遊」運行開始とE351系退役、横須賀・総武線快速のE235系導入、JR九州のYC1系営業運転開始、九州新幹線長崎ルートのN700Sと列車名「かもめ」の採用、しなの鉄道(長野県)の初の新型車両導入など最初に報じた記事も多い。

共同通信と全国の新聞でつくるニュースサイト「47NEWS(よんななニュース)」や「Yahoo!ニュース」などに掲載されている連載「鉄道なにコレ!?」と鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」(https://www.47news.jp/column/railroad_club)を執筆し、「共同通信ポッドキャスト」(https://digital.kyodonews.jp/kyodopodcast/railway.html)に出演。

本コラム「“鉄分”サプリの旅」(https://www.risvel.com/column_list.php?cnid=22)、カナダ・バンクーバーに拠点を置くニュースサイト「日加トゥデイ」で毎月第1木曜日掲載の「カナダ“乗り鉄”の旅」(https://www.japancanadatoday.ca/category/column/noritetsu/)も執筆している。

共著書に『わたしの居場所』(現代人文社)、『平成をあるく』(柘植書房新社)などがある。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。東京外大の同窓会、一般社団法人東京外語会(https://www.gaigokai.or.jp/)の広報委員で元理事。
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