旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2025年10月25日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

スイス・チューリッヒから日帰りでいく欧州最大の滝と古都を巡る旅

古都シュタイム・アム・ライン街中の噴水zoom
古都シュタイム・アム・ライン街中の噴水

チューリッヒからライン川を北上し、雄大なライン滝と中世のおもむきが残る古都シュタイン・アム・ラインを訪れる日帰り旅は、スイスの魅力を凝縮したような体験でした。

チューリッヒから列車に揺られて小一時間
 チューリッヒ中央駅からスイス連邦国鉄(SBB CFF FFS)の都市間急行(IC)列車で、冒険は始まりました。朝の光が差し込む車窓からは、のどかなスイスの田園風景が流れていきます。広々とした牧草地には、のんびりと草を食む牛たちの姿。遠くには雪を抱いたアルプスの山々が霞んで見え、旅への期待を高めてくれます。

列車はライン川に沿って北上し、次第に川の流れが速くなっていくのがわかります。約50分の乗車後、目的地のラウフェン城ライン滝駅に到着しました。

ライン滝で降り、進行方向のケンツェリ見晴台を目指しますzoom
ライン滝で降り、進行方向のケンツェリ見晴台を目指します

ヨーロッパ最大のライン滝の迫力に圧倒される
 時間があれば城から滝を見下ろすこともできますが、駅を降りて歩き、滝の観光の拠点となるケンツェリという見晴台までエレベーターで昇っていくと時間が短縮できます。

滝を目指すと地鳴りのような音が聞こえてきました。そして、目の前に現れたのは、想像をはるかに超える水の壁。それが、ヨーロッパ最大の水量を誇るライン滝の様子でした。しぶきが身体に降り注ぐ、幅150メートル、高さ23メートル、毎秒約70万リットルもの水が轟音を立てて流れ落ちる様は、まさに圧巻の一言でした。

遊歩道を歩き、様々な角度から滝を眺めました。滝壺から舞い上がる水しぶきが、まるで白い霧のようにあたりを覆い、太陽の光に反射して虹を創り出しています。滝の上には乗ってきたスイス連邦国鉄の車両が見えており、高低差のあるジオラマの世界が広がっているようでした。

ライン滝の迫力が伝わるでしょうかzoom
ライン滝の迫力が伝わるでしょうか

中世の面影を色濃く残す街、シャフハウゼン
ライン滝の興奮冷めやらぬまま、鉄道1駅の移動で隣接するシャフハウゼンの街へ向かいました。ここは、チューリッヒ湖からボーデン湖へと続くライン川の航路をコントロールする要衝として栄えた古都です。街の中心部に入ると、時間旅行でもしたかのように、中世の建物がそのまま残されています。

特に目を引くのは、美しいフレスコ画や装飾で彩られた壁画です。建物の壁一面に描かれた緻密な絵画は、まるで街全体が美術館のよう。ひとつひとつの壁画には、物語や歴史が描かれており、見飽きることがありませんでした。

街のシンボルであるムノートは、16世紀後半にライン川を見下ろす丘の上に建てられた巨大な円形の要塞です。息を切らせて螺旋状の階段を上り、最上部にたどり着くと、そこには息をのむようなパノラマビューが広がっていました。

眼下には、まるで絵本から飛び出してきたようなシャフハウゼンの旧市街。そして、緩やかにカーブを描きながら流れるライン川。市が所有するワイン用のブドウ畑が広がり、のどかな風景がどこまでも続いています。ムノートの上で、しばし、中世の街並みが織りなす絶景に酔いしれました。15分ごとに鳴る教会の鐘の音が心地よく響きます。

ムノート要塞からみた街並みzoom
ムノート要塞からみた街並み

 シャフハウゼンを後にして、ライン川を下るウンターゼー・アンド・ラインの船に乗り込みました。次の目的地は、ボーデン湖へと注ぐ手前に位置する美しい村、シュタイン・アム・ラインです。船内では、ライン川の美しい景色を眺めながら、ランチをとりました。

地元の食材を使った料理は美味しく、木の盆に載り、深いガラス容器に入ったひよこ豆とポテトのマサラカレーとサラダを堪能しました。ゆったりと流れる時間の中でランチを楽しむ。これもまた、スイスの旅の醍醐味だと感じました。


心地よい風が吹き抜けるデッキに出ると、ソファーでは寝転がってゆったり休むスペースを見つけました。パンナコッタとコーヒーでカフェタイムも用意されています。船の左舷にはすぐそばにドイツが迫っており、国境であることを考えながら両国の街並みを比べる楽しさもあります。

船はゆっくりと川を進み、両岸には中世の古城や教会、ブドウ畑が次々と現れます。まるで絵葉書の中にいるような風景の中、優雅な時間を過ごしました。

ウンターゼー・アンド・ラインの船中ランチzoom
ウンターゼー・アンド・ラインの船中ランチ

童話の世界に迷い込んだような村、シュタイン・アム・ライン
船は2時間後にシュタイン・アム・ラインに到着しました。この村は、ドイツ語で「ライン川の宝石」とも称される、まさにその名にふさわしい場所です。船着き場から数歩歩くと、そこには色彩豊かな建物が軒を連ねる可愛らしい旧市街が広がっていました。

シャフハウゼンと同様に、ここシュタイン・アム・ラインも、建物の壁面には見事なフレスコ画が描かれています。しかし、シャフハウゼンの壁画が物語性や歴史を強く感じさせるのに対し、シュタイン・アム・ラインの壁画は、より色彩豊かでファンタジーのような雰囲気でした。童話の主人公や騎士が描かれた壁画は、まるで絵本の中に迷い込んだような錯覚を覚えます。

自由時間を利用して、迷路のように入り組んだ石畳の路地を散策しました。どの角を曲がっても、愛らしいカフェや小さなブティック、そして美しい壁画が迎えてくれます。特に、村の中心にある市庁舎広場は、中世の趣きがそのまま残されており、広場に面した建物全体がフレスコ画で彩られている光景は圧巻でした。写真を撮るのも忘れ、ただただその美しさに見惚れていました。小さな村ですが、歩くたびに新しい発見があり、時間を忘れて散策を楽しんでしまいました。

11世紀建立の聖ゲオルグ修道院に入ってみると、石柱が並び、重厚な室内が残されており、ステンドグラスからの光が淡く綺麗に光っていました。

ライン川添いのシュタイム・アム・ラインzoom
ライン川添いのシュタイム・アム・ライン

旅の終わり、チューリッヒへ
シュタイン・アム・ラインでの自由時間を満喫した後、再び列車に乗り、チューリッヒへと戻りました。車窓からは、夕日を浴びて金色に輝くライン川の美しい景色が流れ、旅の余韻に浸ることができました。

取材協力:スイス政府観光局

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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