旅の扉
- 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
- 2025年9月30日更新
- よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子
【秋の沖縄旅①】のんびり、ゆったり。夏疲れを癒す、「星のや竹富島」の島時間
zoom
- 琉球赤瓦の屋根、琉球石灰岩を積んだ石垣、魔よけのヒンプンは、竹富島の民家の伝統的な様式。屋根から見守るシーサーにも注目を。
- 経験したことがない猛暑に襲われた2025年の夏。ようやく涼しくなってほっとした半面、「暑すぎて出掛ける気分にならず、夏を楽しめないまま終わってしまった」という声も聞こえてきます。そこでおすすめなのが、これからの季節の沖縄。夏のビーチリゾートのイメージがありますが、じつは秋から冬がとても心地よいのです。本当に沖縄好が好きなリピーターは、この時期を狙って訪れる人も多いのだそう。
夏疲れを癒してリセットしたい人も、まだもう少し夏の気分を味わいたいという人も、「星のや竹富島」でのんびり、ゆったり過ごす島時間はいかがですか。
小さな島の伝統文化に触れ、暮らすように過ごす愉しみ
竹富島は周囲約9km、人口330人ほどの小さな島。八重山諸島の玄関口・石垣島の離島ターミナルから船でわずか10分という近さもあり日帰りで訪れる人が多いのですが、滞在してこそわかる魅力がこの島にはいくつもあります。
zoom
- 敷地内の見晴台から眺める「星のや竹富島」の全景。沖縄の原風景がそのまま残り、“竹富島第4の集落”と呼ばれることもあります。
- 竹富島には沖縄の伝統的な町並みが今も残り、島に3カ所ある集落はいずれも国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。その島に2012年6月に開業した「星のや竹富島」。数年ぶりに訪れてみたら、珊瑚石灰岩を積み上げた石垣や、琉球赤瓦の屋根がいい具合の色味になって、すっかり島の景色に馴染んでいることが分かりました。今では島の人から、“竹富島第4の集落”と呼ばれていることにも納得です。
zoom
- 木造平屋づくりの客室は、リビングの窓を開けると心地よい風が吹き抜けてお昼寝タイムが最高に気持ちいい。開放的なバスルームにもリラックスできます。
- 竹富島の伝統的な様式を踏襲した客室が48あり、すべて独立した木造平屋づくり。琉球赤瓦の屋根から見守るシーサーも、一つひとつ表情が異なります。母屋と門の間の垣根は“ヒンプン”と呼ばれ、魔よけとともに台風による風の直撃を避け、目隠しの役割もあります。南向きの客室は、リビングの窓を開けると風が吹き抜ける造り。ヒンプンのおかげで、窓を全開にして寛いでいても、外から見える心配はありません。
沖縄では南から吹く風を“南風(ぱいかじ)”と呼び、幸せを運ぶ縁起が良い風とされているのだとか。チェックイン後やランチの後に、この風を浴びながらお昼寝タイムを過ごすのは最高の贅沢。こんなゆったりとした時間を過ごせるのも、宿泊すればこそ。庭に咲く南国の花々に蝶々が戯れることもあり、まさに南の島の桃源郷です。
「畑あそび」と「はた織り体験」で暮らすように過ごす
滞在中にぜひ体験してみたいのが、施設の敷地内での「畑あそび」。現在では観光がメインの竹富島ですが、かつては小さな島で土地に合った雑穀や野菜、薬草を育てる自給自足の生活が営まれていました。流通や観光業の発展に伴い衰退しつつある島独特の畑文化を継承するためスタートしたのが「畑プロジェクト」。島の畑文化や生活の知恵に精通する人々から学んだスタッフが施設内の畑を案内してくれ、ハーブの摘み取りなどの畑仕事を体験できます。驚いたのは、薬草の豊富さ。月桃、フーチバ(ヨモギ)、クミスクチンなど、昔から栄養源になり、暮らしの道具になり、ときには安らぎのエッセンスにもなり、人々の暮らしに寄り添ってきたものです。
畑仕事を体験した後は、摘みたてのハーブで作るドリンクと島の伝統菓子でおやつタイム。朝の涼しい時間に畑仕事をし、休憩を取って午後の仕事に備えるのは、かつての島の人々の生活リズムに合わせた過ごし方なのだそうです。
zoom
- 上/敷地内の畑では約40種類のハーブを栽培。摘み取り体験のあとは、ハーブドリンクと伝統菓子で休息タイム。下/「はた織り体験」では、自分で織った短冊を利用してオリジナルの風鈴を作ります。
- 島には今でも多くの手仕事が残っています。これを体験できるのが、はた織り機を使ったオリジナルの風鈴づくり。月桃などの草木染めの糸を使用して短冊を作り、琉球ガラスの風鈴に組み合わせます。頭の中を空っぽにしてはた織りに没頭していると、時間が過ぎるのを忘れてしまいます。風鈴の中に短冊とともに吊り下げるのは、珊瑚のかけら。琉球ガラスと珊瑚がなんとも涼やかな音色を奏で、滞在中は客室内にぶら下げて楽しみました。また、大切に持ち帰って時々その音色に耳を傾け、竹富島で過ごした時間を懐かしんでいます。
ほかにも、島に伝わる民具作りを継承する女性から、月桃を使ったコースターづくりを教わりました。月桃でつくるマットや帽子、カゴもまた、かつてはどこの家庭でも手づくりして使われていたもの。たわいないおしゃべりをしながら手を動かし、つかの間ですが島の住人になった気分を味わいました。
春・夏・秋・冬、24時間思い思いに過ごすプールタイム
島の伝統的な集落で暮らすように過ごす体験ができる「星のや竹富島」。ここがリゾートであることを感じさせてくれるのが楕円形のプール。加温式のため年間を通じて24時間利用できることも自慢で、泳ぐだけでなく足を浸したり、浅瀬に座って水の中で寛ぐのも心地よいもの。また、プールサイドの芝生では毎晩、「てぃんぬ深呼吸」というストレッチの時間が設けられています。満天の星や月の下、芝生に寝転がって耳を澄ますと、“ホゥ、ホゥ”というシマフクロウの鳴き声が聞こえてきて、まるで子守唄のようです。
ぐっすり眠ったら、翌朝は日の出に合わせ、施設に隣接するビーチで「よんなー深呼吸」に参加。早朝の海風を浴びながら少しずつ体を目覚めさせた後は、朝食がさらに美味しく感じられました。
zoom
- 周囲の木々が映り込むプール。毎晩、芝生の上で行われる「てぃんぬ深呼吸」で星空を眺めながらリラクゼーションタイムを。
- ヤギ、マグロ、エビ……、「島テロワール」を味わうディナーコース
食の楽しみも見逃せません。ダイニングで味わうのは、「島テロワール」のコンセプトのもと、沖縄食材と竹冨島独自の調味料を組み合わせ、フレンチの技法で仕上げたディナーコースです。
前菜は「ヤギとキャビアのタルタル フーチバの香り」。子ヤギのタルタルはとてもやわらかくてクセがなく、滋味豊かな味わい。ヤギ汁にも使われるフーチバ(ヨモギ)との相性も申し分ありません。魚料理は、沖縄で古くから祝いの席の食卓を彩ってきたエビを使った「イセエビのパイ包み焼き 2色のソース」。肉厚のイセエビを包むムースに豚肉を使っているのも、沖縄らしいアレンジです。
メインの肉料理は、「熟成牛サーロインとマグロの炭火焼き 島醤油と黒糖のアクセント」。意外に知られていませんが、沖縄は近海マグロの水揚げ地。そのマグロを島醤油と黒糖をブレンドした特製調味料に漬け込み、ローストしています。一方の牛肉にはミックススパイスを纏わせ、炭火で焼きあげて旨みを凝縮。それぞれの素材がもつ旨みを、島ならではの調味料が引き立てています。
デザートの「ジーマミのマジョレーヌ パイナップルのコンフィチュールを添えて」は、フランス発祥のケーキを、沖縄で親しまれているジーマミ(落花生)で作ったもの。甘酸っぱいパイナップルのコンフィチュールがアクセントになっています。
zoom
- 料理長の岡野竜也さんと、島テロワールのディナーコース(18,150円)。ワインペアリング(6,600円)と合わせて味わいたい。※入荷の状況により、食材は変わることがあります。
- 手仕事を楽しんだり、プールタイムや夜と早朝のリラクゼーションタイムに癒され、暮らすように過ごす島時間を満喫するには、最低でも2泊3日の滞在がおすすめ。3日後、島を後にするときには、夏疲れがすっかり抜けて、リフレッシュしたことを実感できます。
次回のトラベルコラムでは、「プライベートサバニで幻のビーチをひとり占めする、竹富島の海遊び」をご紹介します。
◆星のや竹富島
沖縄県八重山郡竹富町竹富1955
TEL 050-3134-8091(星のや総合予約)
48室・チェックイン15:00/チェックアウト12:00
1泊147,000円~(1室あたり、税・サービス料込・食事別)
※通常予約は2泊より
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/hoshinoyataketomijima/