旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2025年9月18日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

世界自然遺産の西表島でエコツーリズム体験 ③マヤロックの滝を目指す、スローハイキング

スローハイキングで汗をかいた後は、滝つぼでクールダウン。撮影/Slow Tempo Adventure Clubzoom
スローハイキングで汗をかいた後は、滝つぼでクールダウン。撮影/Slow Tempo Adventure Club
世界自然遺産・西表島の大きさは、周囲約130km。沖縄県では本島の次に大きく、約90%が亜熱帯のジャングル。今回滞在した「西表島ホテル by 星野リゾート」の敷地に沿って流れる県下最長の浦内川や、「絶景!サガリバナ鑑賞クルーズ」で出かけた仲良川など、約40の河川が網の目のようにジャングルを潤し、滝の数は大小100を超えるといいます。4年前の訪問では、ゲータ川上流の滝までのトレッキングを楽しんだので、今回はコースを変えて国立公園ユチン川の支流にある、マヤロックの滝を目指してのんびりジャングルを歩く「ジャングルスローハイキング」へ出かけました。

手つかずのジャングルでたくましく生きる亜熱帯の植物たち
この日の案内役は、「Slow Tempo Adventure Club」の代表・堀之内辰朗さん。西表島でのガイド活動歴は10年以上あり、参加者の希望、年齢や体力に合わせ、島のさまざまなフィールドで楽しむツアーを主宰しています。ユチン川には上流にあるユチンの滝という三段の滝がよく知られていますが、その支流にひっそりとあるマヤロックの滝は、あまり人が立ち入らない秘境の滝。標高差が小さく、比較的歩きやすいルートなので、トレッキング入門にもおすすめとのことです。
西表島の自然とハイキングやトレッキングコースを熟知している、ガイドの堀之内さん。このツアーでは参加者のペースに合わせ、ゆっくり、のんびり歩いてくれます。zoom
西表島の自然とハイキングやトレッキングコースを熟知している、ガイドの堀之内さん。このツアーでは参加者のペースに合わせ、ゆっくり、のんびり歩いてくれます。
車道わきの駐車場に車を止め、ジャングルの中に分け入った途端、地表に根を張るアダンの気根(きこん)が目に飛び込んできました。頭上からは地表を目指して触手を伸ばすように垂れ下がってくる根もあって、複雑な姿はまるで生きているかのよう。多様な植物が生い茂るジャングルで、何とか生き延びようとするたくましさを感じます。水辺には支流が集まって水深が深くなる淵があり、吸い込まれそうなほど深い青緑色の水をたたえています。
地表に露出した根は、気根と呼ばれるもの。ジャングルの生存競争を生き抜くため、長い年月から進化した植物の知恵です。zoom
地表に露出した根は、気根と呼ばれるもの。ジャングルの生存競争を生き抜くため、長い年月から進化した植物の知恵です。
幹に楕円形の特徴的な模様があるのは、ヒカゲヘゴというシダの仲間。湿地帯で見かけることが多いシダ類は低木と思われがちですが、亜熱帯のジャングルでは頭上高くまで成長するものもあるのだとか。見上げると葉は確かにシダ類の形をしていて、巨大なゼンマイのような新芽も見つかります。楕円形の模様は葉を落としながら成長した痕跡。小判のような形をしていることから、この部分を触るとお金持ちになるとの言い伝えがあるそうです。
左/ヒカゲヘゴは幹の模様が独特。小判の形にたとえられるそうですが、私には魔女がニヤリと笑った顔に見えます。右/長い尾が特徴のキノボリトカゲ。手のひらにのる可愛いサイズのトカゲです。zoom
左/ヒカゲヘゴは幹の模様が独特。小判の形にたとえられるそうですが、私には魔女がニヤリと笑った顔に見えます。右/長い尾が特徴のキノボリトカゲ。手のひらにのる可愛いサイズのトカゲです。
クライマックスは滝つぼにダイブして小魚やテナガエビと戯れる
途中で見つけた昆虫やトカゲを観察しながらのんびり歩くこと、40~50分で目的の滝に到着。汗をかいて火照った体を、滝つぼに飛び込んでクールダウンします。頭上から滝の水を浴びて頭を冷やせば、爽快そのもの。水中には小魚が泳ぐ姿が見え、脚をツンツンとつつくようにテナガエビがぶつかってきます。縄張りを荒らす侵入者を追い払おうとしているのかもしれません。
このツアーは、岩の上や水の中で滑りにくいフェルトブーツと防水バッグ、ライフジャケットの用意があるので、濡れてもいい服装であればOK。足場の悪い箇所で岩や木の幹を触ることもあるため、軍手の用意もあります。トレッキング用のグローブをもっていれば、持参するのがいいでしょう。
川の中に転がる巨岩は、増水時に上流から流されてきたもの。岩の丸い穴は、小石が水流によって転がってできたポットホール。zoom
川の中に転がる巨岩は、増水時に上流から流されてきたもの。岩の丸い穴は、小石が水流によって転がってできたポットホール。
島の大部分がジャングルである西表島は、道路から近い場所に手つかずのジャングルが広がっていることが大きな魅力。台風などの荒天時を除き一年を通じてハイキングやトレッキング、沢歩きなどを楽しめ、カヤックで河口から川を遡り滝を目指したり、SUPツアーも人気です。
滝行、それとも打たせ湯? この爽快感は一度体験すると病みつきに。撮影/Slow Tempo Adventure Clubzoom
滝行、それとも打たせ湯? この爽快感は一度体験すると病みつきに。撮影/Slow Tempo Adventure Club
西表島には三度目の訪問です。一度目は石垣島から日帰りで、前回は1泊2日で、そして今回は2泊3日の行程で、「絶景!サガリバナ鑑賞クルーズ」「イリオモテヤマネコ痕跡ツアー」と、この「マヤロックの滝へ ジャングルスローハイキング」を体験しました。ほかにも、ホテルの敷地内を散策する「ジャングル&マングローブガイドウォーク」や、夕刻にはスパークリングワインを片手にビーチで寛いだり、早朝のビーチで海水浴を楽しむ時間もあり、たっぷり満喫できたように思います。でも、回を重ね西表島のことを知れば知るほど、訪れてみたいスポット、体験したいアクティビティがどんどん増えてきました。パイナップルやマンゴーといったフルーツが、安くて美味しいことも見逃せません。次の機会には別ルートのトレッキングコースや、カヤック、SUPなどにもトライしてみたいと思っています。

◎マヤロックの滝へ ジャングルスローハイキング
期間 : 通年
時間 : 9:00~12:30/13:30~17:00 ※片道約45分
料金 : 8,000円
予約 : 前日18時までに要予約
◆西表島ホテル by 星野リゾート
沖縄県八重山郡竹富町上原2-2
TEL 050-3134-8094(星野リゾート予約センター)
料金:2泊24,000円~(2名1室利用時の1名分、税・サービス料込み、食事別)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/iriomote/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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