旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2025年9月8日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

デルタ・フライト・ミュージアムを巡るエアラインファン最大の祭典 「AI2025ATL」 徹底レポート

デルタ・フライト・ミュージアムで行われたエアラインファン向けのイベント「エアライナーズ・インターナショナル2025アトランタ」の会場内zoom
デルタ・フライト・ミュージアムで行われたエアラインファン向けのイベント「エアライナーズ・インターナショナル2025アトランタ」の会場内

 6月26日から28日にかけて、航空ファンにとっての夢の祭典「エアライナーズ・インターナショナル2025 アトランタ」(略称:AI2025ATL)が開催されました。メインとなるのは、エアライングッズトレードコンベンションで、毎年開催都市が変わる中で、今年はハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港北側に位置するデルタ航空の本社に隣接したデルタ・フライト・ミュージアムが会場となりました 。

デルタ航空の歴史を物語る博物館そのものが一大展示場に
 デルタ・フライト・ミュージアムは、コンベンションの会場であると同時に、デルタ航空の歴史を伝える重要な施設でもあります 。屋外には、過去に空を飛んでいたボーイング747-400、757-200、ダグラスDC-7B、DC-9-51がずらりと並んでおり、特にボーイング747は機内を見学することができました 。

また、ミュージアムの建物内に入ると、デルタ航空の歴史を物語る貴重な機体たちが参加者を出迎えます 。2つの建屋のうち、レガシーハンガーには、DC-3をはじめ、ハフ・ダランド・ダスターモデル、スティンソン SR-8E リライアント、トラベルエア6Bセダンといった歴史的な機体が展示されていました 。

ミュージアム館内のスピリットハンガーではデルタ航空の歴史上重要な機体が並びますzoom
ミュージアム館内のスピリットハンガーではデルタ航空の歴史上重要な機体が並びます

 メイン会場となったスピリットハンガーの中央には、かつてデルタ航空が経営危機に陥った際に社員とOBが会社に寄贈したというボーイング767-200「SPIRIT of DELTA」(N102DA)が展示されています 。機体のそばには就航地を紹介する吊り看板があり、「Japan」があるのは日本のファンにとっては嬉しいものです。

館内にはコンベアCV880の機首部分や、胴体の半分ほどが残されたロッキードL-1011トライスターが展示され、トライスターの機内はデルタの歴史展示室として利用されていました 。

ミュージアムの前庭にはデルタ航空で運航していた機体が並びます この写真はボーイング747-400 遊ぶ心のあるBMW MINIとともにzoom
ミュージアムの前庭にはデルタ航空で運航していた機体が並びます この写真はボーイング747-400 遊ぶ心のあるBMW MINIとともに

航空ファンを魅了する体験と展示の数々
 このコンベンションでは、博物館の展示に加え、様々な体験やユニークな展示が航空ファンの心を掴んでいました。ボーイング737-200のフルフライトシミュレーター体験は、4人まで1時間460ドルという料金で、本物のパイロット気分を味わうことができる貴重な機会を提供していました 。

また、767機を囲むように総勢230ものテーブルが出展され、紙模型からダイキャストモデル、時刻表、安全のしおり、メニュー、ちらし、ロゴグッズなど、多種多様なレアアイテムが並びました 。

元パンナムのスチュワーデスであったアイミー・ブラットさんは著作を披露するテーブルを出展し、「パンナムはライフスタイルで、デルタは仕事エンジョイしました」という言葉を残しています。

パンアメリカン航空とデルタ航空の客室乗務員を務めたアイミー・ブラットさんzoom
パンアメリカン航空とデルタ航空の客室乗務員を務めたアイミー・ブラットさん

デルタ・フライト・ミュージアムの出展ブースでは、ジュディ・ビーンさんが案内してくれ、機内カートやエンジンブレードなどが目玉商品として並び、パイロットが配布するカードも販売されていました。「ミュージアムでは毎月余剰品セールをやっていますので、また遊びに来てください」と話してくれました。

デルタ・フライト・ミュージアムも店舗を出しており、責任者のジュディ・ビーンさんが案内してくれましたzoom
デルタ・フライト・ミュージアムも店舗を出しており、責任者のジュディ・ビーンさんが案内してくれました

航空会社との連携が生む特別なツアー
 コンベンションのもう一つの魅力は、航空会社との連携によって実現した特別なツアーでした 。今回は、デルタ航空本社内にある運航管理の心臓部オペレーションズ&カスタマーセンター(OCC)を訪問しました。

500人以上の従業員が、毎日5,000便を超えるフライトを管理し、年間1億6,000万人以上の顧客を安全に目的地へ送り届けています。OCCは、運航上の制約や混乱を調整しながら、顧客にスムーズな体験を提供することを目指しています。

OCCの業務は、以下の3つの主要な機能エリアに分けられます。

フライトマネジメント
 すべてのフライトにおいて、安全で法令を遵守した運航を保証します。この部門には、以下のチームが含まれます。
• フライトの事前計画や飛行中の監視を行うフライトコントロール
• 航空機の重量、重心、および性能に関するロードコントロールセンター
• リアルタイムの天気予報や過去の気象データを提供する気象部門(Meteorology)
• 航空機とOCC間の通信をおこなうアトランタラジオ
• パイロットや客室乗務員の運航上のニーズにリアルタイムで対応するフライトオペレーション

システムマネジメント
航空ネットワーク全体が計画通りに効率的に機能するように管理します。
• 運航のニーズに合わせて、飛行可能な航空機が確実に供給されるように管理する航空機ルーティング/デマンドプランニング
• パイロットと客室乗務員が法的に問題ないスケジュールで運航できるよう、当日のフライトの担当割り当てを調整する乗務員スケジューリング
• 24時間体制で運航全体を監督し、各部門の業務を指揮・優先付けする運航担当ディレクター(OCC Duty Director)

オペレーションズサポート

OCCとデルタ航空全体の運航に不可欠なインフラをサポートします。
• 主要な運航情報を顧客やメディアに伝えるコーポレートコミュニケーション
• 技術的、人員的、または自然災害による混乱からデルタ航空の重要な事業機能を保護するビジネス継続性計画(BCP)
• OCC内の技術的な問題に即座に対応するソリューションセンター
巨大なスクリーンで、毎日最大5000便を運航するデルタ航空の世界中のフライト状況や気象情報がリアルタイムで監視される様子は圧巻でした 。

ミュージアム近くにあるデルタ航空OCCの内部zoom
ミュージアム近くにあるデルタ航空OCCの内部

この他にも、アトランタ空港の制限区域で写真撮影ができるランプツアーや、デルタ航空パイロット訓練センター、退役したビジネスジェットや小型機が並ぶ、アトランタ・エア・エクスチェンジという飛行機の保管とリサイクルの現場の訪問など、貴重な内容のツアーが設定されていました 。

来年の記念すべき第50回大会は、2026年6月24日から27日までコロラド州デンバーで開催される予定で、ユナイテッド航空の訓練施設訪問など、ファンを喜ばせるツアーが企画されることが期待されています 。

このように、航空会社とその歴史を大事にする団体、そしてファンが一体となって作り上げる「AI2025ATL」は、デルタ・フライト・ミュージアムという素晴らしい施設を舞台に、航空ファンにとって忘れられない特別な体験を提供していました。
世界のTOP3ともなるエアラインは将来の発展の礎に歴史を忘れない姿勢を鮮明にしており、素晴らしい企業行動であると感心しました。

取材協力デルタ・フライト・ミュージアム 

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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