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トラベルコラム
涼しさに誘われて、信州・白馬村「LA VIGNE DINING FŪDO」の美食体験
旅の扉
【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
2025年7月28日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子
涼しさに誘われて、信州・白馬村「LA VIGNE DINING FŪDO」の美食体験
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白馬の風土と素材を生かした“白馬ガストロノミー”を味わえる「ホテル ラ ヴィーニュ白馬」。
猛暑の夏、いちばんの贅沢は、涼しいところで美味しいものをいただくこと。そんな避暑旅にぴったりなのが、北アルプスの山々に囲まれた山岳リゾートの長野県・白馬村です。冬のパウダースノーを求め、最近では海外からもスキーヤー&スノーボーダーが訪れていますが、春から夏はハイキングやトレッキング、秋は紅葉の名所としても知られています。
白馬村に2024年12月にオープンしたばかりの「ホテル ラ ヴィーニュ白馬 by 温故知新(おんこちしん)」は、居ながらにして北アルプスの雄大な山々を望めるロケーションのなか、“白馬ガストロノミー”の料理を味わえるアルパインリゾートホテル。初めてのグリーンシーズンを迎えるにあたり就任した、新料理長の料理をいただくため出かけてきました。
ちなみに梅雨明け直後の東京は、最高気温35℃/最低気温26℃。一方の白馬村は、最高気温30℃/最低気温18℃。昼間の気温は30℃を超えるものの、高原の心地よい風が吹き日陰に入るとひんやり。夜は長袖の上着が必要なほどです。
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目の前が八方尾根スキー場。四季折々に白馬の雄大な自然を楽しめるうえ、キッチンとランドリー付きだから長めの避暑旅におすすめ。
全室キッチン付きのホテル「ラ ヴィーニュ白馬」
「ホテル ラ ヴィーニュ白馬 by 温故知新」があるのは、白馬村の中心街エコーランド。3,000m級の山々が連なる北アルプスのふもとに位置し、近隣には地酒を扱う酒店、人気のベーカリーやケーキ屋もあります。このホテルは、全室にキッチンとランドリー設備を備えていることが特徴。スタンダードツインから、寝室が2つあるジュニアスイート、3つの寝室を備え最大6名まで滞在できるラヴィーニュスイートまで客室のバリエーションは7種類。グループ、ファミリー、もちろんおひとりのおこもりステイまで、お好みに応じてお部屋を選べます。
しかも、すべての客室がコーナールームなので、プライベート感たっぷり。北アルプスビューのジュニアスイートからは、長野オリンピックの舞台にもなった八方尾根スキー場のジャンプ台が目の前。窓の外に広がる緑を眺めるだけで、都会の猛暑を忘れられます。
白馬ガストロノミーを日本ワインのコレクションとともに
併設の「LA VIGNE DINING FŪDO(ラ ヴィーニュ ダイニング フウド)」は、白馬の風土と旬の食材をふんだんに取り入れた料理が評判のレストラン。店内に入るとまず、小さな店ならカフェ1軒がすっぽり収まりそうな巨大ワインセラーに目を引かれます。
セレクトを担当するワインコンシェルジュの吉田裕之さんは、2008年に開催された北海道洞爺湖サミットで各国の首脳をもてなした経験の持ち主。オーベルジュホテルの先駆けとして知られる「白馬リゾートホテル ラ ネージュ東館」で30年間にわたりレストランマネージャーを務め、「ラ ヴィーニュ白馬」開業と同時にこのレストランに招かれました。セラーに並ぶ約100アイテム1,000本の日本ワインはいうまでもなく、すべて吉田さんのセレクト。出身地である山形を皮切りに、北は北海道から南は九州・宮崎まで、ほとんどのワイナリーに自ら足を運び、納得したものだけを取り寄せているそうです。
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日本ワイン約1,000本のコレクションが自慢。今年4月に就任したばかりの今西大和シェフの料理とともに楽しみたい。
朝採りの山菜と信州の食材をふんだんに取り入れ “今日しか味わえない一皿”を
一方、今年4月に新料理長に就任した今西大和(いまにし やまと)さんは、高知県出身。エコール辻大阪校を首席で卒業後20歳で渡仏し、フランス南部のライオール村にある三ツ星レストラン「Michel Bras」、パリ11区の「Septime」などそうそうたる名店で研鑚を積み、ミシュランレストランでは部門シェフを務めるまでになりました。帰国後は複数のレストランでシェフを歴任し、満を持して「LA VIGNE DINING FŪDO」の料理長に招かれました。
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左/高山村 佐藤さんのオレイン豚生ハムとサワドゥーブレッドのタルティーヌ。右/朴葉のお皿にのせた「白馬産蕎麦粉のガレットタコス」。この日の朝、摘んできたばかりのソーヴィニヨンブラン新芽のフリットに、アカシアの花びらを散らして。
「南国・高知出身の私ですが、初めて白馬の地に足を踏み入れた時、原点に立ち還った気がしました。白馬の景色はフランス修行時代に見たシャモニ=モンブランの風景と重なります」と今西料理長。目の前の食材と真正面から向き合う日々を思い起こし、素材の命に耳を澄ませながらシンプルな料理を提供することを信条としているのだそうです。
例えば早朝、自らスタッフを率いて山へ出かけ、採取してきた山菜をその日のメニューに取り入れるため、料理の内容はほぼ毎日変わります。“今日しか味わえない一皿に出合えるレストラン”と今西料理長が胸を張って語るには、このような理由があるからなのです。
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上左/清水牧場アルパージュチーズ カリフラワーの冷たいヴルーテとビターオレンジオイル。上右/アルプスの恵み 山菜と野草のリゾットヴェール。下左/風土のサラダ。下右/シナノユキマスのクラヴラックス 。
この日のコース料理で特に印象的だったのが、「白馬産蕎麦粉のガレットタコス」。料理の下に敷かれている青々とした葉は朝、採ったばかりの朴葉。乾燥させた葉に味噌と食材をのせて焼く朴葉焼きがよく知られていますが、生の葉を取り入れた料理は初めて。しかもその大きさに驚きました。
鮮やかな緑色が美しいリゾットは、「アルプスの恵み 山菜と野草のリゾットヴェール」。そして料理長のスペシャリテが、「風土のサラダ 本日の野菜とハーブの盛り合わせ」。どちらも北アルプスの懐に抱かれた、白馬の風景を思い起こさせます。
魚料理には信州大王イワナを、肉料理には信州黄金シャモ、信州牛などを取り入れた贅沢な内容。付け合わせに添えられたアスパラガスももちろん白馬産。見事な太さとともに、大地のパワーをギュッと閉じ込めたような力強い香りと甘さにも魅了されました。前菜からデザートまで全11皿というボリュームでしたが、新鮮な野菜がたっぷり使われているため重さは感じません。
ワインコンシェルジュ・吉田さんセレクトのワインは、日本ワイン愛好家のあこがれの的でもある「城戸ワイナリー/ブラン2023」、2012年設立の比較的新しいワイナリーながら国内外から高い評価を受け“幻のワイン”とも呼ばれている「VOTANO WINE/ソーヴィニヨンブラン2022」。そして、日本ワインをけん引するワイナリーからは「小布施ワイナリー/セパージュヨーロピアン2022」の3種類。今後は料理に合わせて吉田さんがセレクトしたワインから、ゲストが自由に組み合わせて味わえるフリーフローでの提供を予定しているとのこと。店頭にほとんど出回らない希少な日本ワインを味わえる機会と聞けば、ワクワクしてきますよね。
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左/信州大王イワナのムニエール。中央/信州黄金シャモのローストと白馬農場のアスパラガス。右上/信州牛カイノミのポワレ ソースピノノワール スイパと空心菜のトンベ 安曇野わさび添え。右下/ヨモギのおやき。
ビュッフェスタイルの朝食も、信州の野菜やフルーツをふんだんに取り入れたもの。目の前で焼いでくれるオムレツに加え、地元ベーカリーのパン、トッピングを選べる蕎麦粉のガレットや握りたてのおむすびもあり、スパークリングワインの提供も。どれもこれも食べたくなるメニューばかりなので、早起きをして朝の清々しい空気のなか周辺の散策を楽しんでから食べることをおすすめします。
チェックアウトの朝はあいにくの雨模様。見送りに出てくれた今西料理長は、悪天候にももかかわらずこの日も山菜を探しにフィールドへ出かけるとのこと。その姿からは、白馬の地を心から楽しみ料理を創作する様子が見て取れました。四季折々の滞在と料理が楽しみな「ラ ヴィーニュ白馬」。次はスノーシーズンに、パウダースノーとともに味わいに訪れたいと思っています。
◆ホテル ラ ヴィーニュ白馬 by 温故知新
HOTEL LA VIGNE HAKUBA by Onko Chisin
長野県北安曇郡白馬村大字北城字新田3020-1116
TEL 0261-85-5166
料金:1室57,110円~(税込み、2名1室利用時)
https://lavigne.by-onko-chishin.com