旅の扉

  • 【連載コラム】***独善的極上旅日記***
  • 2025年5月7日更新
フリージャーナリスト:横井弘海

♯東京メトロ銀座線で美術館巡り ♯相国寺展(藝大美術館) ♯三井記念美術館 ♯根津美術館

♯相国寺展 《竹虎図》 伊藤若冲筆 梅荘顕常賛 江戸時代 18世紀 鹿苑寺蔵zoom
♯相国寺展 《竹虎図》 伊藤若冲筆 梅荘顕常賛 江戸時代 18世紀 鹿苑寺蔵

 ゴールデンウィークの喧騒が終わり、人込みが緩和することが期待されるこの週末、美術館巡りはいかがでしょう。
 この物価高のなか、700円で東京メトロの全路線を、使用開始から24時間乗り降り自由で利用できる地下鉄株式会社『東京メトロ24時間券』で、沿線の美術館も効率よく回ることができます。
  今回は銀座線沿線の人気展覧会をめぐってみましょう。
 上野駅下車で、東京藝術大学大学美術館で開催中の「相国寺承天閣美術館開館40周年記念 相国寺展―金閣・銀閣 鳳凰がみつめた美の歴史」(~2025年5月25日)。三越前駅に直結した三井記念美術館「国宝の名刀と甲冑・武者絵 特集展示 三井家の五月人形」(~6月15日)。締めは表参道駅で下車。今週末までの駆け込みですが、根津美術館の特別展「国宝・燕子花図と藤花図、夏秋渓流図-光琳・応挙・其一をめぐる3章-」(~5月11日)は見逃したくないところです。
 毎年この時期恒例の国宝「燕子花図屏風」を、カキツバタの花が満開の庭園と共に鑑賞できることもあって、日時指定予約制の人気です。ただ、ゴールデンウィーク明けは、まだ予約の取れる時間帯があるようで、さらに11日まで開館時間が午後7時までになっていますから、お見逃しなく。

♯相国寺展 承天閣美術館の礎を築いた有馬頼底相国寺派管長・相国寺住職の賛、藝大の日比野克彦学長の画による詩画一致の合作zoom
♯相国寺展 承天閣美術館の礎を築いた有馬頼底相国寺派管長・相国寺住職の賛、藝大の日比野克彦学長の画による詩画一致の合作

 さて、メトロ美術館巡りは上野からスタート。東京藝術大学大学美術館では、「相国寺承天閣美術館開館40周年記念 相国寺展―金閣・銀閣 鳳凰がみつめた美の歴史」の後期展示が始まっています。
 相国寺は、室町幕府三代将軍・足利義満(1358~1408)が永徳2年(1382)に 発願し、京五山禅林の最大門派であった夢窓派の祖・ 夢窓疎石(1275~1351)を勧請開山に迎え、高弟の 春屋妙葩(1311~1388)を実質上の 開山とし創建された臨済宗相国寺派の大本山。義満は将軍としての権力を強めるとともに、その精神的支えとして禅の修行に励んだのだそう。この禅宗の古刹・相国寺と金閣寺、銀閣寺の通称で名高い鹿苑寺、慈照寺など塔頭の宝物を集めてできたのが承天閣美術館です。雪舟、狩野探幽、伊藤若冲、原在中、円山応挙など国宝・重要文化財40件以上を含む創建から現代にいたる各時代に生まれた名品が上野に集結しました。
 「文化財は埃をかぶってはいけない」との思いで承天閣美術館の礎を築いた有馬頼底相国寺派管長・相国寺住職の賛、藝大の日比野克彦学長の画による詩画一致の合作も展示されています。
 そして、やはり若冲の襖絵は圧巻です。

#「相国寺承天閣美術館開館40周年記念 相国寺展―金閣・銀閣 鳳凰がみつめた美の歴史」開催概要
開催場所:東京藝術大学大学美術館  
住所:東京都台東区上野公園12-8
開催時間:午前10時~午後5時
          (最終入場時間 16:30)
休館日:月曜日、5月7日(水)
観覧料:一般 1,800円(2,000円)
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
詳細はURL:https://museum.geidai.ac.jp/

♯三井記念美術館  三井記念美術館「国宝の名刀と甲冑・武者絵  特集展示 三井家の五月人形」展入口zoom
♯三井記念美術館  三井記念美術館「国宝の名刀と甲冑・武者絵  特集展示 三井家の五月人形」展入口

 
#三井記念美術館「国宝の名刀と甲冑・武者絵  特集展示 三井家の五月人形」

 三越前駅に直結する三井本館は建物自体が国の重要文化財に指定されています。7階の三井記念美術館では、「国宝の名刀と甲冑・者絵 特集展示 三井家の五月人形」を開催しています。国宝6点、国の重要文化財71点を含む約4000点の美術工芸品を三井家から寄贈されてできた同美術館。今回は館蔵品の国宝の短刀2点「名物 日向正宗(ひゅうがまさむね)」と「名物 徳善院貞宗(とくぜんいんさだむね)」をはじめ、重要文化財7点を含む刀剣、および蒔絵の拵こしらえが、とくに目を引きます。
 国宝「短刀 無銘正宗 名物日向正宗」は、鎌倉時代末期の名工で、相州伝の巨匠である正宗が作刀。名刀中の名刀といわれます。「日向正宗」の展示を記念し、人気ゲーム「刀剣乱舞ONLINE」のキャラクター刀剣男士「日向正宗」の等身大パネルおよび御供散歩パネルを展示し、写真撮影もできます。ゲーム世代から日本刀に興味を持つ人が増えるというのが興味深くもあります。
 国宝「徳善院貞宗」は、正宗の実子とも養子とも伝えられる貞宗作。豊臣秀吉が所持し、五奉行の一人前田徳善院玄以(とくぜんいんげんい)が拝領したところから、「徳善院貞宗」と呼ばれました。その後徳川家康、紀州徳川家、西条松平家へと伝わり、おそらく近代になってから三井家に伝わったという伝来のヒストリーもロマンを掻き立てます。
 日本刀のことを正直筆者はよく知らないのですが、そんな素人が見ても、「日向正宗」の美しさと力強さ、厳格な精神性のようなものに吸い込まれるような気がしました。
 また特集展示は、近代に製作された三井家伝来の五月人形。まとめて公開するのは初めて。「三井家のおひなさま」の展示は毎年人気ですが、端午の節句には、こちらも恒例になるかもしれませんね。

♯国宝 短刀 無銘正宗 名物日向正宗 三井記念美術館zoom
♯国宝 短刀 無銘正宗 名物日向正宗 三井記念美術館

#三井記念美術館「国宝の名刀と甲冑・武者絵  特集展示 三井家の五月人形」

展示構成 
展示室1・短刀と刀装具 国宝「日向正宗」
展示室2・国宝「徳善院貞宗」
展示室3・如庵 茶道具の取り合わせ
展示室4・名刀と甲冑・武者絵 酒呑童子絵巻
展示室5・十二類合戦絵巻と武者人形・能人形
展示室6・ミニチュア五月飾り
展示室7・三井家の五月人形

開催場所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7F
開催期間:2025年6月15日(日)まで
開催時間:午前10時~午後5時まで開館
入場料:一般1200円
問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

*音声ガイド(日本語のみ、貸出料700円)
ナビゲーター: 梶 裕貴 氏(声優・ナレーター)
ゲーム「刀剣乱舞ONLINE」(日向正宗役)、TVアニメ「進撃の巨人」(エレン・イェーガー役)をはじめ、アニメ、ラジオ、洋画吹き替えなど多方面で活躍中の方です。

♯根津美館 財団創立85周年記念特別展「国宝・燕子花図と藤花図、夏秋渓流図 光琳・応挙・其一をめぐる3章」ポスターzoom
♯根津美館 財団創立85周年記念特別展「国宝・燕子花図と藤花図、夏秋渓流図 光琳・応挙・其一をめぐる3章」ポスター

#根津美術館の財団創立85周年記念特別展「国宝・燕子花図と藤花図、夏秋渓流図 光琳・応挙・其一をめぐる3章」

 表参道駅から徒歩8分、館内にある広大な庭園は都会のオアシスと親しまれ、毎年この時期には、満開のカキツバタと国宝「燕子花図屏風」を一緒に楽しむことができると大人気です。
 根津美術館が所蔵する国宝・重要文化財あわせて100件のうち、日本近世の絵画は3件。尾形光琳の国宝「燕子花図屏風」と、円山応挙「藤花図屏風」、鈴木其一「夏秋渓流図屏風」の2点の重要文化財は、6曲1双の金屏風。本展は、こうした3件の屏風を中心に据えた3章構成とし、各々の真価を際立たせる、あるいはその魅力をさらに高める作品の取り合わせとなっています。
 何度見ても、見飽きることがありません。

開催場所:東京都港区南青山 6‐5‐1
Tel. 03-3400-2536 (代表)
開館時間:午前10時~午後7時‼
      5月5日(月・祝)から11日(入館はいずれも閉館30分前まで)
入場料:オンライン日時指定予約、一般1500円
website https://www.nezu-muse.or.jp

♯根津美術館 可愛らしい燕子花のにおい袋のお土産はいかが?zoom
♯根津美術館 可愛らしい燕子花のにおい袋のお土産はいかが?

 それにしても、現代にいたるまで多くの人々を魅了してやまない尾形光琳(1658~1716)、円山応挙(1733~1795)、伊藤若冲(1716~1800)など18世紀の異才・天才はどのようにして生まれたのでしょう?
 彼らが生まれた時代背景も含めて、もっと知りたいなぁと思いながら、時間が過ぎるのを忘れる一日でした。

フリージャーナリスト:横井弘海
元テレビ東京アナウンサー。各国駐日大使を番組や雑誌でインタビューする毎に、自分の目で世界を見たいという思いが強くなり、訪問国は現在70カ国超。著書に「大使夫人」(朝日新聞社刊)。国内旅行は「一食一風呂入魂!」。美味しいモノと温泉を追いかけて、旅をしています。
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