(シリーズ「富士急ハイランドに無事入らん!?」【第2回】から続く)
夏本番の暑さを逃れるためにJR東日本と富士山麓電気鉄道を直通運転して東京都心部と河口湖駅(山梨県富士河口湖町)を結ぶ特急「富士回遊」でたどり着いた遊園地「富士急ハイランド」は標高が800メートルを超えている上、さまざまな冷涼感を味わえる体験が待ち受けている。盛夏を迎えている中で、園内には訪日客が押し寄せている現象を象徴する「クール」な体験を味わえるアトラクション(遊戯施設)も。しかし、過ぎたるは及ばざるがごとしだった…。
【富士急ハイランド】富士急行の全額出資子会社、富士急ハイランド(山梨県富士吉田市)が運営している遊園地。1964年に「富士ラマパーク」として開業し、2024年に開業60年を迎えた。ジェットコースターなどの絶叫マシンが充実していることで定評があるほか、蒸気機関車(SL)を主人公とする物語「きかんしゃトーマス」を題材にしたエリア「トーマスランド」などには家族連れが楽しめるアトラクションも多く用意している。
▽ちょっとしたVIP気分を
単線の線路に沿って1本だけプラットホームがある富士急ハイランド駅で富士回遊を下車し、改札口を抜けると富士急ハイランドのゲートが目の前にある。
富士急ハイランドは2018年7月14日から入園料を無料した。それまでは入園料として中学生以上が1500円、3歳以上小学生以下は900円が必要だった。同時に、園内のセキュリティー強化などのために入園時に顔写真を登録する「顔認証システム」を導入した。
園内のアトラクションに原則として自由に乗れるフリーパスの購入者は、入り口にあるカメラを見るだけで入場できる。私もアトラクションに入るたびに、「顔パス」のちょっとしたVIP気分を味わった。
▽冗談のオンパレード
富士急ハイランドは楽しい気分で過ごしてもらおうと、園内には冗談のような文言を記した看板をあちこちに立てている。
「求人広告」ならぬ「Q人広告」と銘打った看板は、富士急ハイランドならぬ「富士Qローランドでは暗~く元気のないスタッフを大募集しています」と呼びかけている。時給は富士急と引っかけて「229円まで」と、山梨県の最低賃金(時給938円)を大きく下回る〝ブラック企業〟だ。
「お願い」と呼びかけた看板には「平成14年4月1日(月)午前10時頃この場所でツチノコが発見されました。目撃された方はご連絡下さい。」と記しており、脇に怪しい写真を載せている。見つかったとされるのがエープリルフールの日という点がポイントだ。連絡先には「富士急ハイランド UMA課」とあり、未確認動物(UNIDENTIFIED MYSTERIOUS ANIMAL)を担当する課があることに驚かされる。もちろん、これもエープリルフールの一環だ。
▽ポンチョを着ずに「ジャッパーン」
そんなユーモアセンスを発揮したネーミングで、訪日客が大勢押し寄せているご時世にもぴったりのアトラクションが「クールジャッパーン」だ。ボートに乗り、高さ30メートルの滑り台から時速80キロで池に落下すると、着水時に高さ18メートルの水しぶきが「ジャッパーン」と飛んでクールダウンできるという触れ込みだ。
他の利用者のほとんどはぬれないようにポンチョを着ていた。ポンチョは乗り場で200円を出せば買うことができる。
だが、「炎天下でちょっとした水浴びをできるのにポンチョで防いでしまうのはもったいないのではないか」と変なことを考えてポンチョを買うのを見送った。乗り込んだのがボートの1列目の座席だったこともあり、「落下した時の水しぶきは1列目を超え、2列目以降に直撃するのではないか」と高をくくっていた。
▽〝救済手段〟を発見も…
そんな期待感は「甘ーい!」と言わんばかりに、手荒い洗礼が待ち受けていた。勢いよく滑り降りたボートは、アトラクションの名前通りに「ジャッパーン」というけたたましい音を立てて着水した。次の瞬間、ゲリラ豪雨級の大量の水が飛び込んできた。
頭上を越えて後方の乗客を直撃した水もあったものの、1列目の座席に腰かけていた私もしっかりと水浴び、もといずぶぬれになった。
「後悔先に立たず」とうなだれたものの、ボートを下りた出口脇に私のようにずぶぬれになった乗客向けの〝救済手段〟があった。約3分間にわたって熱風を送り出して乾かす人間用のドライヤー「ボディドライヤー」があったのだ。
料金を確認すると、1回当たり300円!200円するポンチョより高い。さすが商魂たくましい富士急ハイランド、まるでポンチョを買わなかったことの「高い代償を払ってください」とあざわらうかのようだ。
代わりに編み出したのが、フリーパスを生かして無料で乾燥する方法だった。乗ったブランコが高さ50メートル程度まで上がり、最高時速51キロで空中浮遊するアトラクション「鉄骨番長」へ向かった。
工事現場の小屋に見立てた入り口の建物の看板には「整理整頓」ならぬ「整理無理」、「安全第一」ならぬ「絶叫第一」の文字が躍っていた。約3分間にわたった天空を舞った私の心境は「乾燥無理」で、「絶叫求ム」だった。さらなる乾きを求めて富士急ハイランド名物の絶叫マシンに向かうと、ショッキングな事実を知らされることになる…。
(シリーズ「富士急ハイランドに無事入らん!?」【第4回】に続く)
(連載コラム「“鉄分”サプリの旅」の次の旅をどうぞお楽しみに!)