旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルエディターの旅コラム
  • 2013年8月7日更新
世界で一番好きな場所
Editor:スミタナオコ

羽田発でシアトルへ!vol5.ワインと地ビールの街シアトル(地ビール編)

シアトル近郊、ウッディンビルにあるワイナリーのひとつzoom
シアトル近郊、ウッディンビルにあるワイナリーのひとつ
コーヒーだけでなく、ビールとワインの愛好家にとっても、シアトルは魅力的な街。街にはビアパブが点在し、昼過ぎから地ビールを楽しむ人々で賑います。
気の利いたレストランに行けば、地元ワシントン州のワインを取りそろえ、それぞれのワインの魅力について力説してくれるはず。実は、ワシントン州は、ビールに欠かせないホップの生産量が全米第一位、またワインの原料になるブドウの生産量もカリフォルニア州に次ぐ全米第二位と、ビールとワインの生産には適した土地なのです。

レッドフックのブルワリーツアーでは製造工程やレッドフックの歴史が学べるzoom
レッドフックのブルワリーツアーでは製造工程やレッドフックの歴史が学べる
大手の醸造所を除いてシアトルの多くの地ビールの醸造所は、敷地内に醸造所とパブを併設した「ブルーパブ」と呼ばれるスタイル。元々は充分な資金がない個人の経営者などが、醸造所の一角でビールを提供することから始まったスタイルですが、グルメコーヒーが生まれ、そして目覚ましい発展を遂げたシアトルのこと。人々の飲物に対する感度は圧倒的に高く、新鮮で、大手メーカーのビールにはない独特の香りや個性溢れる地ビールの味わいは、すぐにシアトルの人々を魅了し、街には次々にブルーパブが誕生していったのです。

そんなシアトルの地ビールの先駆けとなったのは、あのスターバックスの生みの親の一人であるゴードン・バウカー氏が創設した、「レッドフックブルワリー」。1981年に生まれたこのブルワリーはアメリカのクラフトビールビームの火付け役ともなりました。

現在のレッドフックはシアトルの東30㎞、クルマで小1時間ほどのところにあるウッディンビルに、できたてのビールと食事が楽しめるレストランを併設した醸造所を構えています。小さなブルワリーから始まったレッドフックも今は、全米中に展開する大手ビールメーカーに。ただし、創業以来、大麦やホップに対する品質へのこだわりは今も全く変わっていません。
5種類のビールをテイスティングzoom
5種類のビールをテイスティング
醸造所では見学も受け付けており、醸造所見学ツアーに参加すれば、テイスティングも可能です。所要時間1時間で、ビールのできあがるまでの行程の見学と、5種類の試飲ができて1ドルと、とってもリーズナブル。見学ツアーは季節により異なるので、醸造所のホームページで確認してみてください。

見学ツアーを終えたら、併設のレストランで出来たてのビール&お食事を。ハンバーガーを始め、サラダやBBQなど、アメリカンサイズのメニューがずらり。ビールのお勧めはやはり定番である、ESB(Extra special Bitter)。伝統的なイギリススタイルのビールで、アンバー色の力強いボディとホップのキレのある香りが最高です。
併設のレストランは地元の人々もご愛用zoom
併設のレストランは地元の人々もご愛用
さて、ここで、ビールを選ぶときのワンポイントアドバイス。シアトルで人気なのは、やや苦みの強いビターなビール。深い琥珀色に輝くしっかりとした味わいのビールは、ビール愛好家にとってはたまらない味わいですが、ラガービールに慣れている方にはちょっと抵抗を感じる方もいるかもしれません。そんな方は、是非、メニューに記してあるIBUという数値に注目してみてください。これは、international bitterness unitの略で、1リットルのウォート(ビールの元となる液体)にイソ化されたアルファ酸(iso-alpha-acid)が何ミリグラム含まれるかということを示す値なのですが、そんな難しいことをはおいていて、ビールの苦みを現す指標の一つだと捉えればOKです。ちなみにレッドフックの「ESB」のIBUは28.0。同じくレッドフックには「WISE CRACKER」という小麦のビールがあるのですが、このIBUは8.0。これは、日本で飲める代表的な小麦のビール「ヒューガルデンホワイト」くらいの味わいで、苦みは少なく、小麦ならではの淡い黄金色、香りも爽やかです。一方、「LONG HAMMER」というビールのIBUは44.0。がつんとくるホップの香りと力強い飲み口が特徴です。「LONG HAMMER」は、India Pale Ale=IPAと呼ばれる種類のビールで、これはその昔、イギリス人が植民地インドでビールを楽しもうと、イギリスからインドへ船で運ぶのに耐えられる長期保存が可能なビールとしてつくられたもの。麦芽を通常のビールより多く使い、また防腐作用のあるホップを大量に投入したため、苦みが強く、アルコール度数の高いビールに仕上がりました。当初は保存を目的に作られたビールですが、やがてこの力強い味わいこそがビールの旨味だと主張するほどの熱狂的なファンが増え、今ではシアトルの地ビール蒸留所の多くでIPAが作られています。ぜひ、アルコール度数以外にもIBUに注目して、自分好みの地ビールを探してみてはいかがでしょうか。
パイクプレイスマーケットの中にあるパイクブルワリー。店内には貯蔵タンクがあるzoom
パイクプレイスマーケットの中にあるパイクブルワリー。店内には貯蔵タンクがある
さて、レッドフックは素晴らしい醸造所ですが、シアトルからクルマを利用しなければならない点が難点。もちろん、ドライバーは飲酒は厳禁なので、ビールを楽しみたければツアーを利用する方が良いでしょう。ウッディンビルには、ワイナリーが点在しているので、それらを組み合わせたツアーもお勧めです。

もう一軒、シアトルの街中、パイクプレイスマーケットの中の地ビールパブをご紹介しましょう。

その名も、「パイク・パブ&ブルワリー」は、パイクプレイスマーケットの中にあって旅行者には至便、買い物ついでにふらりと立ち寄れる立地が魅力です。
地元の人々が集うパブ。買い物ついでにビールを一杯!zoom
地元の人々が集うパブ。買い物ついでにビールを一杯!
創業は1989年。こちらも店内に醸造所があり、エールからスタウトまで8種類ほどの定番ビールの他、季節限定のビールをドラフトビールで味わうことができます。店内のカウンターでは地元の常連が、ビールを片手に世間話を楽しむ地域密着型のビアパブ。16時〜18時はハッピーアワーでリーズナブルにビールが楽しめるので、ぜひ買い物次いでに一杯どうぞ。

▼続いてシアトル近郊のワイナリー案内へ
http://www.risvel.com/column/120
Editor:スミタナオコ
大学在学中から海外を旅し、そのまま旅行ガイドブックの編集を仕事に。その後、ライフスタイル紙のライター、編集を経て、現在はウェブサイトのコンテンツ制作などに携わる。趣味はダイビング、ハイキング、キャンプ、ビール造りなど。今年はカヌーを始めたい!
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