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  • 2022年12月19日更新
リスヴェル旅コラム
Editor:リスヴェル編集部

【岐阜県土岐市観光】② 美濃桃山陶を学ぶ「織部の里公園」

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織部の里公園内は緑も豊か
織部の里で美濃桃山陶を学ぶ

土岐市泉町に位置する「織部の里公園」では、古窯跡郡や遺跡、古墳を巡ることができます。

400年前の桃山時代、美濃地域は日本最大のやきもの産地でした。「大窯」「連房式登窯」と呼ばれる地上式の窯は当時の技術の粋を極めたもので、ここで生産された陶器は全国へと出荷されました。土岐市にある元屋敷窯は、美濃窯最古の連房式登窯で、当時の姿をよく留めており、その重要性から、ここ一帯が昭和42年に国指定史跡となりました。織部の里公園は、この元屋敷窯周辺を「歩く」「見る」「触れる」ことで美濃桃山陶への理解を深め、楽しむことができます。
実際に見ると大きく、圧倒される登窯zoom
実際に見ると大きく、圧倒される登窯
元屋敷陶器窯跡は、大窯3 基(元屋敷東1~3 号窯)、連房式登窯1 基(元屋敷窯)からなる古窯跡群で、昭和42年(1967)に国史跡に指定、平成25年(2013)に出土品が重要文化財に指定されています。

安土桃山時代、「茶の湯」の流行の影響を受け、美濃窯において茶陶(美濃桃山陶)の生産が始まりました。元屋敷陶器窯跡は、その前段階の天目茶碗・小皿・すり鉢を主要器種とする時期から、黄瀬戸、瀬戸黒といった茶陶生産が始まり、志野、織部で茶陶や懐石用食器の生産が最盛期を迎えるまでの変遷を捉えることができます。

元屋敷窯(連房式登窯)

全長約24m、幅約2.2m 燃焼室 焼成室14房。
昭和33年(1958年)に発掘され、その重要性が広く知れ渡るきっかけとなった窯。焼成室が地上に露出し、階段状に連なるこの窯の構造は「連房式登窯」と呼ばれ、九州の唐津から導入されたと考えられています。

各房にはそれぞれ出入り口があり、織部黒、黒織部、志野織部、青織部、赤織部、鳴海織部、総織部、美濃伊賀、美濃唐津に分類される織部製品が生産されていました。織部には、茶碗・茶入、水指、花入、香合、香炉などの茶道具、向付、鉢、徳利などの懐石道具のほか、文房具や喫煙具など、多彩な意匠を持つ多種多様なやきものが生産されていました。
17世紀初頭、美濃桃山陶の集大成「織部」©︎土岐市美濃陶磁歴史館zoom
17世紀初頭、美濃桃山陶の集大成「織部」©︎土岐市美濃陶磁歴史館
織部は、それまでの瀬戸黒・黄瀬戸・志野の技法を受け継いで作り出された美濃桃山陶の集大成といえるやきものです。美濃初の連房式登窯「元屋敷窯」では最盛期の織部が焼かれました。茶碗、茶入、水指、向付、鉢、水注、香炉、香合など、多種多様な茶陶が作られましたが、その中でも特にひょうげた沓茶碗(くつぢゃわん)の需要が高かったようで、 元屋敷窯の製品全体の30%程が沓茶碗でした。

銅緑釉の緑色のイメージが強い織部ですが、黒・白・赤といった色彩に加え、多様な絵付け技法がもたらす自由な表現、歪みや型等を駆使した奇抜な造形といった様々な特色があり、全 9 種類に分けられています。織部は、当時の作陶技術の限りを尽くした器でした。

織部のデザインには、南蛮渡来品、着物や漆器等に見られた最新の流行が巧みに取り入れられており、その背後には大商人ら流行の仕掛人の姿も垣間見えます。織部は 当時の茶の湯の流行が生んだ焼きものだったのです。
元屋敷東1号窯zoom
元屋敷東1号窯
元屋敷東1号窯(大窯)

全長不明、幅3.9メートル。16世紀後半にこの窯が最初に築かれました。天目茶碗、灰釉皿、すり鉢などが生産されていました。この窯は発掘された跡から当時の姿へと完全復元しています。
元屋敷東2号窯zoom
元屋敷東2号窯
元屋敷東2号窯(大窯)

全長7.5メートル、幅3.9メートル。東1号窯の次に築かれたこの窯では、天目茶碗、灰釉皿、すり鉢に加え、新しい意匠の瀬戸黒、黄瀬戸、灰志野が登場しました。東2号窯は廃棄後取り壊され、床面は元屋敷東3号窯の作業場として使われていました。この窯は内部の構造がわかるように復元しています。
暮雪庵 ©︎土岐市美濃陶磁歴史館zoom
暮雪庵 ©︎土岐市美濃陶磁歴史館
織部の里公園内には、松坂屋の創業家である伊藤家の別荘「揚輝荘」から移築された茶室「暮雪庵」があります。建築年代は不明ですが、江戸時代中後期の久田流茶人、久田耕甫が揮毫(きごう)、命名したことが茶室の扁額(へんがく)に刻まれた落款から分かりました。

茶室は、台目三畳松の中板入り。床は枡床で中柱は赤松。天井は掛け込み天井で突上窓があり点前座の上は網代天井。屋根には布袋様が描かれた拝み巴瓦があります。躙口のほかに貴人口を設け、連子窓や下地窓など窓を多くし明るい造りの茶室です。

そのほか、美濃桃山陶が体験できる作陶施設「創陶園」(現在休止中)、元屋敷窯跡から出土した遺物の展示室などがあります。また、織部の里公園内には、春を感じる花々が咲きます。5月上旬にはヒトツバタゴ、5月下旬にはあやめ、6月上旬には花菖蒲が満開になります。

暮雪庵と創陶園の詳細:
http://www.toki-bunka.or.jp/oribe/point#motoyasiki333
暮雪庵(YouTube土岐市公式チャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=Fyd_eV9YyZs&t=5s

織部の里公園
住  所:〒509-5142 岐阜県土岐市泉町久尻1246-1
電  話:0572-54-2710
開園時間:午前9時〜午後5時
休園日 :月曜日(祝日の時は水曜日休み)
     祝日の翌日(祝日が金・土・日曜日にあたる時は翌火曜日)
     年末年始(12月29日〜1月5日)
入園料 :無料


公益財団法人 土岐市文化振興事業団 織部の里公園
http://www.toki-bunka.or.jp/oribe

土岐市 織部の里公園
https://www.city.toki.lg.jp/docs/hpg000000571.html

角山製陶所で作陶体験のコラムへと続く・・・
Editor:リスヴェル編集部
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