旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2022年9月6日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

注目の和紅茶、それとも希少な山のお茶? 見て、味わって楽しむ、絶景茶畑でティータイム ~お茶を識る、駿河の旅②~

各地に絶景スポットはいくつもあるけれど、貸し切り利用できる茶畑ビューのティーテラスは駿河ならでは。(ティーテラス市之瀬)zoom
各地に絶景スポットはいくつもあるけれど、貸し切り利用できる茶畑ビューのティーテラスは駿河ならでは。(ティーテラス市之瀬)
お茶は飲んで、味わって楽しむもの……と思っていませんか。それだけではありません。お茶のくに・駿河には、美味しいお茶をいただきながら、茶畑を見て楽しむ絶景スポットがいくつもあります。
「お茶を識る、駿河の旅」は、第1回“日本茶の味わいが増す「合組(ごうぐみ)」とは?”に続き、第2回は、見て、味わってお茶を楽しめる絶景ティーテラスをご紹介します。

注目の「和紅茶」を味わえる「GREEN ∞ CAFE(グリーエイトカフェ)」
まずご紹介するのは、お茶農家直営のカフェ&ショップで、製茶工場も併設する静岡市の「GREEN ∞ CAFE」。駿河にいくつかあるお茶の産地の一つ、両河内(りょうごうち)という場所にあります。興津川上流に位置するこのあたりで栽培されているお茶は、朝夕に川から立ち上る霧や、昼間のやわらかな日差し、昼と夜の寒暖差もあり、雑味がなく上品な香りと甘みが特徴なのだそう。
製茶工場を併設する「GREEN ∞ CAFE」へは、背後にそびえ立つとっくり型のタワーが目印。zoom
製茶工場を併設する「GREEN ∞ CAFE」へは、背後にそびえ立つとっくり型のタワーが目印。
静岡市の中心部から車で約40分。目印は、とっくり型のタワー。高さ約45mあるこの建物は、浄水場の配水塔。もちろん、現在も現役で活躍中です。周辺を流れる興津川はアユ釣りの名所として知られていて、ここが水も豊かな地であることがわかります。
とっくりタワーのすぐ足元にあるのが、カフェと製茶工場。ここでは特に和紅茶に力を入れていて、その和紅茶のドリンクやフルーツティー、和紅茶のソフトクリームを使ったパフェなどのスイーツを味わえます。
「和紅茶」って、あまり聞きなれない言葉ですが、日本産の紅茶のこと。そもそも日本茶、紅茶、ウーロン茶などの原料は、すべてツバキ科チャノキの葉。生の葉を乾燥・発酵させる際、その発酵の度合いによって異なるお茶になります。発酵させないのが緑茶、半発酵茶がウーロン茶、完全発酵させたものが紅茶です。
和紅茶は、一度飲むと穏やかな苦みとコク、自然な甘さにハマると評判。「和紅茶ストレート」550円、「ロイヤルミルクティープリン」385円は店内・テラス席利用限定のメニュー。zoom
和紅茶は、一度飲むと穏やかな苦みとコク、自然な甘さにハマると評判。「和紅茶ストレート」550円、「ロイヤルミルクティープリン」385円は店内・テラス席利用限定のメニュー。
「和紅茶は、海外産に比べ味がやわらかく、さっぱりしているのが特長。苦みが少なく自然な甘みがあるので、苦いお茶が苦手な人や小さなお子さんも美味しく飲めるんですよ」と話すのは、代表取締役の北條広樹さん。ここでは「ニガクナイコウチャNo Bitter Tea」と名付け、「Sweet」から「Bitter」まで9種類の和紅茶を提供しています。原料になる茶葉の品種と発酵度合いも異なり、例えば最も苦みが少ないのは、優しい甘みが和食にも合う「琥珀スイート」、中くらいの苦みの「琥珀ナチュラル」はすっきりとした甘みと苦み。和紅茶のなかでも最も飲みごたえがあり、クセのある力強い苦みと香りを持ち味としているのが「琥珀ワイルド」。これだけあると選ぶのに迷ってしまいますが、その特徴と相性がいい食べ物、おすすめの飲み方を紹介したシートがあるので、参考にするといいですね。

お好みのドリンクとスイーツをテイクアウトして、ピクニック気分でティーテラスへ
カフェのメニューをテイクアウトして味わえるのが、茶畑のまん中にあるティーテラス。この日はお天気もよく、絶好のティーテラス日和。和紅茶のアイスティーと「ロイヤルミルクティープリン」を持ってピクニック気分で出かけてみました。
徒歩4~5分で茶畑へ。緑の茶葉の絨毯が広がるティーテラスで味わうお茶の美味しさは格別。(画像提供:するが企画観光局)zoom
徒歩4~5分で茶畑へ。緑の茶葉の絨毯が広がるティーテラスで味わうお茶の美味しさは格別。(画像提供:するが企画観光局)
ティーテラスがある茶畑までは、カフェがある場所から興津川沿いの小径を歩いて徒歩4~5分。どこか懐かしい里山の風景を眺めながら到着すると、目に飛び込んできたのは茶畑の上を横切る新東名高速の高架橋。この近未来的な組み合わせも、なかなかユニークです。
カフェは直売所も兼ねていて、実際に飲んでみて気に入った紅茶を購入することができます。ミルクティーで味わうのが好きな私は、“優雅な香りと深いコク”の「琥珀マイルド」と、スイート・ミディアム・ビターの3種類の飲み比べセットをお土産用に買いました。

●GREEN ∞ CAFE(グリーエイトカフェ)
静岡県清水区和田島349-4
TEL 054-395-2203
10:00~16:00 月曜休(休日の場合は翌日)、その他不定休
※テラスは予約制
http://www.green8.bz/

風の音と鳥の声がBGM、標高450mのプライベートティーテラス
もう一つ、おすすめの絶景ティーテラスは、四方を山で囲まれた市之瀬というエリアにある「ティーテラス市之瀬」。標高250~450mの山間地に広がる茶畑で採れるお茶は、「山のお茶」として古くから愛されているもの。大型機械が入らない場所のためとても希少で、人気スイーツ店の原料としても使われているそうです。
この景色をひとり占めできる「ティーテラス市之瀬」。zoom
この景色をひとり占めできる「ティーテラス市之瀬」。
その希少なお茶を味わえるのが、標高約450mの茶畑のまん中にあるティーテラス。午前と午後各1組のみ、完全予約制のプライベートスペースです。利用するときは、途中にある事務所に立ち寄ってチェックインし、お茶のセットを受け取ります。山道をさらに上り、ティーテラス到着するとすでにシートとテーブル、いすが用意され準備万端。山に囲まれながらも視界は開けていて、天気がいい日には茶畑の向こうに御前崎方面まで望むことができます。

谷筋を渡って吹き上げてくる風は心地よく、聞こえてくるのは風の音と鳥の声だけ。ここにゴロンと寝転がってぼんやり過ごすのもいいですね。平日は茶畑で作業をするお茶農家さんの姿が見えることもあり、そののどかな光景にも癒されます。周辺にキャンプ場のほか、自然公園や天然温泉、陶芸を体験できる施設もあり、合わせて訪れるプランを立ててみてはいかがでしょうか。
7~9月頃までは冷たいお茶を、10~6月頃までは温かいお茶を、スイーツとともに。zoom
7~9月頃までは冷たいお茶を、10~6月頃までは温かいお茶を、スイーツとともに。
●ティーテラス市之瀬
静岡県藤枝市瀬戸ノ谷7374
午前・午後の完全予約制、1組6名まで90分、1人3,000円。
https://www.visit-suruga.com/spot/tea-terrace-ichinose/37

お家でゆったり味わうお茶もいいけれど、茶畑を渡ってくる風に吹かれ、絶景とともに楽しむティータイムは、お茶のくに・駿河ならではの楽しみ方。その爽快さをぜひ一度、体験してみてください。

★第3回は、「世界初!焙煎温度が選べるカフェで日本茶の飲み比べ」をご紹介します。

写真/伊東武志 協力/するが企画観光局
駿河の旅の情報「VISIT SURUGA」 https://www.visit-suruga.com/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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