旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2022年9月9日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

世界初!焙煎温度が選べるカフェで日本茶の飲み比べ ~お茶を識る、駿河の旅③~

80~200℃まで、5段階の焙煎温度で選んだ茶葉をコーヒーのように1杯ずつハンドドリップして味わえるカフェ。zoom
80~200℃まで、5段階の焙煎温度で選んだ茶葉をコーヒーのように1杯ずつハンドドリップして味わえるカフェ。
コーヒー豆が「浅炒り」と「深炒り」で味わいが異なるように、日本茶も焙煎温度によって香りや味わいが変わります。さらに、短時間で蒸した「浅蒸し」と、その2~3倍の時間をかけて蒸した「深蒸し」があって、味わい方は多彩。そんな、蒸し方や焙煎温度による違いを楽しめるのが、静岡駅に近い「MARUZEN Tea Roastery(マルゼンティーロースタリー)」。「お茶を識る、駿河の旅」第3回は、創業70余年の老舗製茶問屋「丸善製茶株式会社」が手掛けるカフェで、焙煎温度別のお茶の飲み比べとともに、ティージェラートの食べ比べを楽しみました。

お茶の飲み比べができるカフェは、“おまち”の注目スポット
「MARUZEN Tea Roastery」があるのは、“おまち”と呼ばれるエリア。静岡では市役所を中心とした市内随一の繁華街(ダウンタウン)のことを指し、このあたりでショッピングや食事を楽しみに出かけるときは、「おまちへ行こう」が合言葉なのだとか。アーケードが続く一角にあるカフェは、白を基調としたスタイリッシュなインテリア。カウンターにドリップスタンドとジェラードのショーケースが並び、「えっ、ここはハンドドリップのコーヒー専門店!?」、一瞬、そんな錯覚に陥ります。
白を基調にした店内。奥が焙煎工房で、2階がゆったり過ごせるイートンスペース。zoom
白を基調にした店内。奥が焙煎工房で、2階がゆったり過ごせるイートンスペース。
ロースターを併設する店内では、静岡県内産の最上級一番茶のみをその場で温度帯別に焙煎。ハンドドリップで淹れたお茶とともに、ティージェラートも選んで飲み比べ、食べ比べができます。

5段階の焙煎温度と蒸し加減が選べるハンドドリップティー
選べる焙煎温度は80℃・100℃・130℃・160℃・200℃の5段階。焙煎温度を選ぶ前に知っておきたいのが、「浅蒸し」と「深蒸し」の違い。10~30秒の短時間で蒸し上げる「浅蒸し」は、カップに入れたときの水色(すいしょく)が透き通った黄金色。清涼感がある香りで瑞々しさを味わえるのに対し、じっくり時間を掛けて蒸しあげた「深蒸し」は、濃い緑色の水色と香ばしさ、甘味とコク、渋みがあるのが特徴です。
静岡県産の最上級一番茶をその場で焙煎。店内には茶葉のふくよかな香りがあふれる。zoom
静岡県産の最上級一番茶をその場で焙煎。店内には茶葉のふくよかな香りがあふれる。
茶葉の産地によっても適した蒸し加減があり、この店では浅蒸しには興津川上流の両河内産茶葉を、深蒸しには県北西部・遠州森町産の茶葉を使っています。浅蒸し・深蒸しに加え、5段階の焙煎温度と、さらにホットとアイスを選べるので、セレクトは20種類。これだけあると迷ってしまいますが、130℃までは煎茶、160℃以上は焙じ茶になるので、そのあたりを目安にメニューを見ながら選ぶといいでしょう。こうして選んだ茶葉は、焙煎具合によって湯温を変え、1杯ずつハンドドリップで淹れるというこだわりよう。そのため少し時間はかかりますが、その待ち時間がワクワク感を盛り上げてくれるのがわかるはず。
注文を受けてから1杯分ずつ茶葉を量り丁寧にドリップ。zoom
注文を受けてから1杯分ずつ茶葉を量り丁寧にドリップ。
「浅蒸し」と「深蒸し」の飲み比べができる飲み比べセット
じっくりと時間をかけて飲み比べができるのが、「急須で淹れる飲み比べセット」です。このメニューでは、浅蒸しと深蒸しのそれぞれからお好みの焙煎温度別に茶葉を2種類選び、急須で淹れて味わえます。ポットのお湯も用意されているので、二煎目、三煎目と少しずつ変化する味わいも楽しみ。浅蒸しの瑞々しさに対し、深蒸しの甘みとコク、さらに焙煎温度を上げていくと香りと旨みが増してきて、その味わいのバリエーションにいろいろな組み合わせで飲み比べてみたくなります。お茶請けのスイーツにもこだわっていて、最中は加賀の最中皮専門店「加賀種」の、あんこは地元の老舗和菓子店「大国屋」のもの。スイーツ好きなら、その組み合わせの妙にも感動しますよ。
「急須で淹れる飲み比べセット」1,320円。左が「浅蒸し」、右が「深蒸し」、その水色の違いは歴然。zoom
「急須で淹れる飲み比べセット」1,320円。左が「浅蒸し」、右が「深蒸し」、その水色の違いは歴然。
ホットティーと合わせて楽しみたい焙煎温度別ティージェラート
この店のもう一つのこだわりメニューが、両河内産の浅蒸し一番茶のみを使い、焙煎温度別の茶葉で作ったティージェラート。こちらの焙煎温度は0℃~200℃まで6段階。抹茶・荒茶・玉露・煎茶・玄米茶・焙じ茶に加え、「ホワイトクリーム」と「季節のジェラート」の全10種類が並びます。渋めの味がお好みなら0℃の抹茶、旨みと甘みを楽しむなら80℃の玉露、200℃の焙じ茶はチョコレートのように濃厚な味わい。シングルのほか、食べ比べができるダブル、トリプルがあり、友達とシェアして食べ比べてみるのがいいですね。温かいお茶との組合せで味わうのがおすすめですよ。
焙煎温度別ティージェラート、シングル各460円(玉露は+50円)。zoom
焙煎温度別ティージェラート、シングル各460円(玉露は+50円)。
店内の一角にある焙煎工房では、オーダー焙煎にも対応。普段はコーヒー党の人も、ここに来れば日本茶の奥深い味わいにきっとはハマります。“おまち”歩きのティータイムに外せないスポットです。

●MSRUZEN Tea Roastery(マルゼン ティー ロースタリー)
静岡市葵区呉服町2-2-5
11:00~18:00(L.O.17:30) 火曜休
http://www.maruzentearoastery.com/

★第4回は、「お茶がアートになる! サステナブルなお茶染め」をご紹介します。

撮影/伊東武志 協力/するが企画観光局
駿河の旅の情報「VISIT SURUGA」 https://www.visit-suruga.com/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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