旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2022年7月4日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

17世紀のオランダへタイムスリップ。名画鑑賞の気分で楽しむ「メズム東京」のアフタヌーン・エキシビジョン

アフタヌーンティーで、フェルメールが生きた17世紀のオランダへタイムスリップ。zoom
アフタヌーンティーで、フェルメールが生きた17世紀のオランダへタイムスリップ。
竹芝のウォーターフロントに立つホテル「メズム東京、オートグラフコレクション」といえば、名画をモチーフにしたアフタヌーンティー「アフタヌーン・エキシビジョン」がおなじみ。約4カ月ごとに変わるメニューを楽しみにしている人は少なくありません。遊び心とともにこだわりのスイーツ&セイボリー、ケーキとペアリングモクテルで表現した新感覚のアフタヌーンティー・シリーズが7月1日から新メニューになりました。

2020年11月から提供が始まり、今回が第6弾となるアフタヌーン・エキシビジョンのタイトルは『パール(Pearl)』。17世紀オランダ絵画の巨匠、ヨハネス・フェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女(Girl with a Pearl Earing)」をモチーフにしています。

フェルメールが生きた17世紀のオランダをアフタヌーンティーでたどる
これまでダリ、ダ・ヴィンチ、マネ、モネといった誰もが知っている画家たちの名画をモチーフにしてきたアフタヌーン・エキシビジョン。今回は、昨年春の第2弾で好評だった「真珠の耳飾りの少女」が再登場。メニューがさらに進化しているので、前回を体験している人も要チェックです。
最初のペアリングモクテルはオランダの名産のひとつ、リンゴをベースにしたノンアルコールのモクテル。zoom
最初のペアリングモクテルはオランダの名産のひとつ、リンゴをベースにしたノンアルコールのモクテル。
クリエイティブチームが一丸となり、モチーフとなる名画とその作者の生涯、時代背景までも徹底的にリサーチし完成させたメニューには、美術や歴史の教科書でも知りえなかったエピソードがたっぷりつまっています。
ペアリングモクテルとともに運ばれてくるのが、フェルメールが生きた17世紀のオランダで実際に食べられていたものや、作品からインスピレーションを得たメニューを8種類のスイーツとセイボリーで表したもの。その内容を簡単に紹介すると、オランダが発祥といわれる≪タイガーブレッド≫のバーガー、もっちりとした食感が特徴の≪セモリナプディング≫。鮮やかなブルーは、グレープフルーツとライチの果汁で作った爽やかな酸味のゼリー≪パート・ド・フリュイ≫。
20~30代の頃、すでに画家として安定した生活を送っていたフェルメールは、高級品のため画材として使用されるものではなかったラピスラズリが原料のウルトラマリンを、顔料として絵画に取り入れていたのだとか。“フェルメール・ブルー”とも呼ばれるように、青色は彼の作品を印象付ける重要な要素のひとつなのです。
スイーツとセイボリー、ひとつひとつのエピソードを知ると、オランダの食文化にも興味が湧いてくる。zoom
スイーツとセイボリー、ひとつひとつのエピソードを知ると、オランダの食文化にも興味が湧いてくる。
代表作のひとつ「牛乳を注ぐ女」に描かれた食材を使い作られたのが、≪パンプディング≫。涼しげなグラスに入った≪ワインゼリーシャーベット≫は、「紳士とワインを飲む女」に着想を得た一品。シャーベットには凍らせた赤ブドウがごろんと入っていて、口のなかで溶けながらワインとブドウの風味がいっぱいに広がる、これからの季節にぴったりのひんやりスイーツです。

キューピットの形をした≪スペキュラース・サレ≫は、ザクザクとした食感が小気味いいクッキー。この形にも理由があり、初期の作品「窓辺で手紙を読む女」が修復された際に見つかった、背景に描かれたキューピッドの姿にちなんだものなのだとか。ホウレンソウとチコリのシャキシャキ感とともに、ゴーダチーズの濃厚な風味が広がる≪パンネクーケン≫、さらに、旬のプルーンの甘酸っぱさと果肉感を楽しめる≪タルトプルーン≫は、17世紀ごろオランダで出版された料理本のレシピを基に再現しています。

ひとつひとつメニューの内容を読みながら食べ進めていくと、時と場所を超えてフェルメールが生きた時代にタイムスリップした気分になってきます。同時に、時代背景や当時のレシピ、さらには近年の修復内容までもさりげなく取り入れたメニューからは、シェフとともにスタッフの並々ならぬ熱意とこだわりが伝わってきました。

「真珠の耳飾りの少女」をモチーフにしたケーキの美しさにうっとり
そして、今回のアフタヌーン・エキシビジョンの主役が、“光の魔術師”と称されたフェルメールの最高傑作「真珠の耳飾りの少女」のシルエットを大胆に表現したケーキ。深い青色のトルコ風ターバンと、上品な光を放つ真珠の耳飾りが見事に再現され、神秘的な世界へといざないます。
フェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女」のシルエットをケーキで表現。zoom
フェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女」のシルエットをケーキで表現。
真珠の部分はひとつひとつ手作りの飴細工。割ると中からパッションフルーツ&オレンジの爽やかな酸味と、バターのコクが合わさったソースがあふれ、これをクレープで表現されたターバンに絡めて食べます。ふたつめのペアリングモクテルは、夏のヨーロッパでよく飲まれているエルダーフラワー・コーディアルをイメージしたもの。レモンの酸味が効いていて、ケーキの甘さと絶妙のハーモニーを奏でます。

真珠に見立てた飴細工の中は、パッションフルーツ&オレンジのキュンと甘酸っぱいソース。zoom
真珠に見立てた飴細工の中は、パッションフルーツ&オレンジのキュンと甘酸っぱいソース。
フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」は2012年に一度だけ、日本で公開されています。幸運にも鑑賞の機会があり、謎めいた少女の表情を引き立てる青と真珠の輝きが今でも記憶に残っています。その名画との再会を果たしたような気分でアフタヌーンティーのひとときを楽しみました。
バー&ラウンジ「ウィスク」から望む爽快な眺めとともに味わいたい。zoom
バー&ラウンジ「ウィスク」から望む爽快な眺めとともに味わいたい。
アフタヌーン・エキシビジョンの会場は、“芸術家(アーティスト)のアトリエ”がコンセプトのバー&ラウンジ「ウィスク」。プルーンやブドウなどフルーツの旬に合わせ、少しずつメニューにアレンジを加える予定があるというのも楽しみです。東京のウォーターフロントを一望できる爽快な空間は、真夏の暑さも忘れさせてくれるはず。午後のひととき、名画がモチーフのアフタヌーン・エキシビジョン『パール(Pearl)』とともに、ゆったりした時間を過ごしてみたいものです。

◆アフタヌーン・エキシビジョン『パール(Pearl)』
メズム東京、オートグラフ コレクション16階 バー&ラウンジ「ウィスク」
東京都港区海岸1-10-30
TEL 03-5777-1111
2022年7月1日(金)~10月31日(月) 14:00~/15:00~
※平日15食限定限定・前日の22:00までに要予約
https://www.mesm.jp/restaurant/whisk.html
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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