旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2022年5月20日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

東京人こそ知りたい! “イイ街”赤坂の知られざる魅力 ~OMOホッピングの旅 #03 「OMO3(おもすりー)東京赤坂」~

赤坂のローカル情報を発信する「ご近所マップ」。“手土産の街”のお土産選びは、ダーツにおまかせするのが楽しい。zoom
赤坂のローカル情報を発信する「ご近所マップ」。“手土産の街”のお土産選びは、ダーツにおまかせするのが楽しい。
東京・赤坂というと、どんなイメージがありますか。
ビジネスと政治の街、高級料亭街、某テレビ局の本社ビル……、などなど。
2月25日にグランドオープンした「OMO3(おもすりー)東京赤坂 by 星野リゾート」は、そんな都心の一等地・赤坂の魅力を発掘できるホテル。旅やビジネストリップの拠点としてはもちろんですが、東京に暮らす人が滞在し、歴史や文化にまつわるエピソードや、今までノーマークだったスポットを知るのが楽しいホテルなのです。

坂の街・赤坂をディープに楽しむ「まさかの赤坂さんぽ」
江戸幕府のお膝元として発展し、官庁街に隣接する現在は、高級ホテルやレストランが多いことで知られる赤坂。そのなかで「OMO3東京赤坂」は、この界隈にしては気軽に利用できるリーズナブルな宿泊料金が魅力です。ホテルが立つのは、各国料理のレストランや居酒屋、老舗商店などが並ぶ一ツ木通り。この通りの歴史は平安時代まで遡り、当時このあたりの街道沿いは人や馬の往来が絶えず、人足の交代を意味する「人継ぎ」が通りの名前の由来と伝わっています。
「まさかの赤坂さんぽ」(1名1,000円)。江戸時代に時を告げた「時の鐘」が残るのが「円通寺」(上)。薬研坂などの坂を巡り、パワースポットととして知られる「豊川稲荷東京別院」へ。zoom
「まさかの赤坂さんぽ」(1名1,000円)。江戸時代に時を告げた「時の鐘」が残るのが「円通寺」(上)。薬研坂などの坂を巡り、パワースポットととして知られる「豊川稲荷東京別院」へ。
「OMO(おも)」のコンセプトは、「寝るだけでは終わらない、旅のテンションを上げる都市ホテル」。ここ赤坂で旅のテンションを上げるために参加したのが、「OMOレンジャー」によるガイドツアー。赤坂にまつわる「ま・さ・か」をキーワードに約1時間、ご近所の散歩を楽しむ内容です。

坂の街・赤坂には名前が付いている坂だけでも19あり、そのほとんどが江戸時代から伝わる名前なのだそう。たとえば、「薬研坂(やげんざか)」は、坂の形状が漢方などの薬材を砕くために使った薬研に似ていることから名付けられたのだとか。お寺の名前がそのまま坂の名になった円通寺坂にある「円通寺」では、敷地内に社殿と高級ホテルが同居する、ちょっと不思議な光景を見ることができました。

七福神のすべてが祀られ、敷地内だけで七福神めぐりができるのが「豊川稲荷東京別院」。音楽や知恵をつかさどる神様で、役者さんやアーティストからの信仰が厚い弁才天には、見知った名前の提灯が多く奉納されています。さらに、悪運を断って開運招福を授けてくれるとされる「叶稲荷」、白亜のお堂が立つ奥の院、石造りの狐がぎっしり並んで迎えてくれる狐の参道を巡ると、ここが都心であることを忘れそう。
境内の裏手にある1870(明治3)年創業の「家元屋」は、注文を受けてからご飯を詰めてくれるいなり寿司が人気のお店。楽屋の差し入れにまとめ買いする役者さんも多く、私も夜食用に購入しました。

元芸者の女将さんが営むバーで赤坂の流儀を教わる?
国会議事堂や議員会館にも近い赤坂は、料亭街としても知られています。ツアーの最後には、元芸者の女将さんが和服姿で迎えてくれるバーへ。赤坂のバーと聞くと、「さぞかし敷居が高いお店なのでは……」と、身構えてしまいますが、ご心配なく。昼間はティーサロンとして営業し、席料(1ドリンク込み、1,500円)で利用でき、食べ物の持ち込みもOK。そのためランチタイムやリフレッシュに、リモートワークや打ち合わせなどに利用する常連さんもいるのだそうです。ピアノやアンティークの家具が置かれ、ベランダから赤坂の街を見下ろせる店内は、ふらりと立ち寄ってくつろげる雰囲気。都心でこういうお店を知っておくと、いろいろ利用できそうです。
左/着物姿の女将が迎えてくれるサロンバー「のら犬」では、自家製レモネードを。右/ウェルカムビールと限定メニュー「赤YONA宴ボール」を味わえる「YONA YONA BEER WORKS赤坂店」(2人分、3,500円)。zoom
左/着物姿の女将が迎えてくれるサロンバー「のら犬」では、自家製レモネードを。右/ウェルカムビールと限定メニュー「赤YONA宴ボール」を味わえる「YONA YONA BEER WORKS赤坂店」(2人分、3,500円)。
ホテルの宿泊者だけが注文できる食事のメニューも楽しみ。赤坂の料亭文化から着想を得て開発したのが、クラフトビール専門店「YONA YONA BEER WORKS(ヨナヨナビアワークス)赤坂店」とのコラボレーションメニュー。ウェルカムビールのサービスに加え、看板料理でもあるローストチキンを中心に、和の要素も取り入れた10種類のおつまみを味わえます。
朝食は、ホテル1階にあるカフェ「上島珈琲店 赤坂一ツ木通り店」で、「真鯛出汁香るスクランブルエッグサンド」を。和風の出汁が利いたスクランブルエッグに青ネギがアクセントのサンドイッチは、モーニングコーヒーによく合います。
ホテルがあるのは、一ツ木通りの中ほど。部屋着に着替え、夜食に「豊川稲荷東京別院」名物のいなり寿司を。zoom
ホテルがあるのは、一ツ木通りの中ほど。部屋着に着替え、夜食に「豊川稲荷東京別院」名物のいなり寿司を。
早朝の都心散歩が気持ちいい「早起きは三文の徳ツアー」
OMOレンジャーが案内してくれるもう一つのツアーが、早朝の街を歩く「早起きは三文の徳ツアー」。オフィスビルや商業ビルが多い赤坂ですが、じつは寺社仏閣も多い土地柄。「豊川稲荷東京別院」と並ぶパワースポットが「日枝神社」です。本殿がある場所まで長いエスカレーターで上り早朝のビル街を見下ろすと、1日の活動が始まる前のピリッと張り詰めた空気が漂うのが感じられます。
昼間は参拝客で賑わう境内も、早朝はほぼ貸し切り状態。清々しい空気の中で参拝すれば、御利益がアップしそうな気がしてきませんか。国会議事堂、首相官邸周辺をぐるっと巡った後は再びホテルの近くに戻り、近隣の料亭やレストランにも商品を提供している創業125年の老舗豆腐店「伊勢幸(いせこう)」に立ち寄ります。都心のビル街の一角に昔ながらの手作り豆腐の店が残っているとは、この街の懐の深さを感じずにはいられません。
上左/「日枝神社」から赤坂の街を見下ろす。上右/早朝の首相官邸前。下左/「早起きは三文の徳ツアー」の締めくくりは、作り立ての温かい豆腐を味わう。下右/手土産に選んだのは、お寺の敷地内にお店を構える「松月」のみたらし団子。zoom
上左/「日枝神社」から赤坂の街を見下ろす。上右/早朝の首相官邸前。下左/「早起きは三文の徳ツアー」の締めくくりは、作り立ての温かい豆腐を味わう。下右/手土産に選んだのは、お寺の敷地内にお店を構える「松月」のみたらし団子。
滞在中はOMOベースの壁面を飾る「ご近所マップ」のチェックもお忘れなく。赤坂には著名人が御贔屓にする手土産のお店が多くあります。お店選びに迷ったときは、ダーツにおまかせを。命中したお店の豆知識やお得情報をOMOレンジャーが教えてくれるほか、お店からのメッセージ動画を見れるQRコード付きのカードをプレゼントしてくれます。
私が選んだのは、一ツ木通り沿いのお寺の入り口にある1917(大正6)年創業の和菓子店「松月(しょうげつ)」。前日の夜、OMOレンジャーから「午前中の開店直後は、作りたての温かいみたらし団子が並びますよ」と聞いていたので、開店時間を目指して訪れました。

旅の拠点に、ビジネスに、週末のリフレッシュやアフターシアターにも
客室はダブルルームとツインルームの2タイプ。コンパクトながら機能的にまとまっていて、バスルーム、トイレ、洗面台がそれぞれ独立しているので、友人同士の滞在も快適です。週末のリフレッシュに利用したり、劇場やコンサートホール、美術館も多い場所柄、アフターシアターの余韻に浸るのもいいですね。
客室はすべてバスタブ付き。ゆったりとバスタイムを過ごせるのがうれしい。zoom
客室はすべてバスタブ付き。ゆったりとバスタイムを過ごせるのがうれしい。
思いついたらいつでも出掛けられる気軽さが魅力の「ご近所旅」。よく知っているつもりの街も、旅する気分で訪れると新たな発見がたくさんあります。わが街・東京の知られざる魅力を発掘する旅に出掛けてみてはいかがでしょうか。

●OMO3東京赤坂 by 星野リゾート
東京都港区赤坂4-3-2
1泊1室12,000円~(税込み・食事別)
TEL 0570-073-099(OMO予約センター)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/omo3tokyoakasaka/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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