トラベルコラム

  • 【連載コラム】イッツ・ア・スモール・ワールド/行ってみたいなヨソの国
  • 2022年4月23日更新
夢想の旅人=マックロマンスが想い募らず、知らない国、まだ見ぬ土地。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス

Walkin in L.A

Cruel Worldの告知看板zoom
Cruel Worldの告知看板
2年前。ロサンゼルスで開催される巨大ロックフェスティバル「CRUEL WORLD」に「クリスチャン・デス」というバンドのサポートメンバーとして出演するというお知らせをしました。7、80年代に大活躍したレジェンドアーティストらが集結する夢の祭典です。僕にとっては間違いなく人生最大のチャンス!と、喜んでいたのも束の間、ご存じコロナの影響を受け、イベントは延期に次ぐ延期の末中止になってしまいました。バンドも活動休止を余儀なくされ予定されていたツアーも全て中止。夢で見たことすらないような素敵なプレゼントを一度は握らせておいて、手を開いた瞬間に消し去ってしまう。神さまもずいぶん意地悪なことをなさる。
その後、アメリカではアーティストらの活動規制が多少暖和され、バンドも活動を再開。小さな会場でライブをやっている様子がSNS経由で伝わってきました。うむ。ステージ上の僕がいたポジションにはしっかり新しいメンバーが立っている。そうなんだ。僕のように組織に属していないフリーランスのアーティストにおいては、仕事のオファーの通達はあるけれど、「オファーしない」という連絡はないんだよね。日雇い労働者と同じ。僕は何の連絡もないまま事実上バンドをお払い箱になってしまったわけです。30年間ぶりにバンド活動を開始して、まあまあ良いスタートが切れたと思っていたけど、人生そんなに甘くないね。またゼロからのスタートとなってしまいました。
と、思っていたら、中止になったフェスティバルが今年(2022年)5月に復活開催されるニュース。規模も大きくなって2日間になり、出演アーティストにも変更があり、より豪華なラインナップにアップデート。そして僕もこれに電撃出演することが決まりました。今回はツアーではなく、フェスティバルの2ステージだけの出演。まあ、スペシャル・ゲスト的なポジションと考えてよいかな。とにかく、こちらはもうバンドはクビになったと思っていたから全く何も準備ができておらず、新曲を解析したり、機材を集めたり、演奏の練習をしたり、1日24時間では足りないぐらい忙しい日々を送っています。ま、こういうので忙しいのは大歓迎だけどね。あと、引きこもりがちの生活の中で体重の方もジリジリと増えてしまい、ダイエットも。
ロサンゼルスについての一番古い思い出と言えば10代の頃。僕がアルバイトしていた喫茶店に、当時としては最先端のレーザーディスク(当時は絵の出るレコードと言われていました。)のシステムがあって、洋楽アーティストのライブやプロモビデオなんかが、今にして思えばけっこうな音量で店内に流されていました。その中にカリフォルニアで開催された音楽フェス=USフェスティバル(1983年)のライブドキュメントムービーがあってね。デヴィッドボウイやヴァンヘイレンらも出演したイベントで、動員は67万人と言うから、ちょっと想像できないぐらい巨大な規模、イベントというか事件だよね。錚々たる出演者の中で、少年マックロマンスの目を引いたのが「ミッシング・パーソンズ」というバンド。バンドの中心的存在の女性ボーカリスト=デイル・ボジオ、もうまるでバービー人形がそのまま人間になったみたいなグッドプロポーションの美人でね。衣装がプラスティックのブラジャーで、長くて細い脚にぴったり吸い付くシルバーのレギンス、ちょっとサイバーパンクっぽかったりするんだけど、何故か頭にサンバイザーを付けてるところがいかにもカリフォルニアという感じ。もうとにかく鼻血が出そうなぐらいセクシーでかっこいいんだ。少年マックロマンスには刺激が強すぎた。
彼女らの代表的なヒット・ソングが「Walking In L.A.」。文字通り「ロサンゼルスでは誰も歩かない」って曲なんだけど、子供心に「人が歩いていない近未来都市ロサンゼルス」みたいのを思い浮かべて、あれこれ妄想していました。その数年後にバンドマンとしてロサンゼルスを訪れた時も、やっぱりミッシング・パーソンズとその曲のことを思い出しました。僕の思っていたよりもけっこう人は歩いていたけどね。
「CRUEL WORLD」に何とミッシング・パーソンズが出演するそうです。デイル・ボジオさん、普通に考えて60代。会いたいような会いたくないような何とも言えない気分だけど、憧れのバービー人形と40年後に、同じイベントの同じステージに(しかも開催地は同じカリフォルニア)立つことになるとは、妄想キングの僕としても想像の遥かに範囲外でした。人生と言うのは本当に何が起こるかわからない。

ま、そんなわけで、音楽活動が再開できる喜びをリスヴェル読者の皆さんとも共有したく近況報告させていただきました。あ、フェスのチケットはまだ少し残りがあるようなので、興味のある方はぜひ今からでも。ロサンゼルスを歩きましょう。

Cruel World Festivalの詳しい情報はオフィシャルホームページがあるのでそちらでご確認下さい。 https://cruelworldfest.com

KOTA(僕のアーティスト名です。)のオフィシャルサイトは→https://www.kota-tokyo.com
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス
マックロマンス:プースカフェ自由が丘(東京目黒区)オーナー。1965年東京生まれ。19歳で単身ロンドンに渡りプロミュージシャンとして活動。帰国後バーテンダーに転身し「酒と酒場と音楽」を軸に幅広いフィールドで多様なワークに携わる。現在はバービジネスの一線から退き、DJとして活動するほか、東京近郊で農園作りに着手するなど変幻自在に生活を謳歌している。近況はマックロマンスオフィシャルサイトで。
マックロマンスオフィシャルサイト http://macromance.com
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