アメリカ(米国)の首都ワシントンで、日本から贈られた桜の花が今年は3月21日月曜日に満開となった。今年は最初の植樹から110周年の節目。中心部を流れるポトマック川沿いの名所には大勢の米国人らが押し寄せ、美しく咲き誇る花々をめでていた。
▽ワシントンの象徴に
手始めに植えられたのは1912年、現在の東京都知事に当たる尾崎行雄・東京市長が贈ったソメイヨシノなどの約3千本の苗木だ。日米の友好関係発展の願いが込められ、両国が争った第二次世界大戦という不幸な歴史を乗り越えて毎年春に花を咲かせてきた。
その後も植樹されて現在は3700本を超える桜の木がポトマック川の流域に連なり、ワシントンの象徴の一つとしてすっかり定着した。例年ならば150万人を超える人が花見に訪れるとされる。
▽今年の満開は3月21日
名所となっているのが「タイダルベイスン」と呼ばれる入り江で、国立公園局はここにある桜の花の7割以上が咲くと満開と判定する。2022年は、3月21日に満開を迎えた。
ワシントンでは桜が開花する時期に合わせて「全米桜祭り」が開かれている。地元の多くの人たちは桜の木が日本から贈呈されたことを知っており、日米の絆を再確認する重要なイベントとなっている。
▽新型コロナ禍を乗り越えて本格再開
新型コロナウイルス流行のため20年と21年の全米桜祭りは行事の中止や、オンラインへの移行が相次いだ。公園の桜の木が多い区域は立ち入れないようにする規制が敷かれ、地元在住の女性は「桜の木々の下を歩くという毎年春の楽しみを失って肩を落とした」と打ち明ける。
しかし、22年は新型コロナが収まってきたため3年ぶりに行事が本格再開した。3月20日に始まり、4月17日までの期間中にコンサートやたこ揚げ大会、パレードといった幅広い行事が順次催されている。
▽お花見はメトロに乗って
桜が咲く時期には多くの人がマイカーでポトマック川沿いに押しかけるため、周辺の道路はしばしば渋滞する。対策としてワシントン首都圏交通局の地下鉄「ワシントンメトロ」は電車の運転本数を増やしており、私はメトロに乗って訪れた。
タイダルベイスンでは薄いピンク色の桜花が見事に咲き誇っており、散策中に話した元政府職員の女性は「桜は毎年春の楽しみで、東京に行った時も桜を見物したのよ」と話していた。桜のバックに撮影する定番はワシントンで最も高い建造物のワシントン記念塔(高さ169メートル)だ。その比較的近くにある重さ2トンの石灯籠も人気撮影スポットだ。
これは17世紀に造られて東京・上野公園にあったもので、日本は1921年に贈る予定だった。しかし、日米関係の悪化で延期され、第2次大戦後の54年に日米友好と平和の象徴として贈られた。
▽日米親善大使の「最高の形」
1912年3月27日に2本の桜が植樹されたことに端を発するワシントンの桜は、ジョー・バイデン米国大統領夫人のジルさんが「桜の木は、象徴となっている日米の友情と同じように大きく育った」と評したようにすっかり大きく育った。
私はワシントンの桜について今年3月29日火曜日のクロスエフエム(福岡県)の番組「Urban Dusk」でご説明した。当日ナビゲーターを務めたMASAKIさんが「桜が日米友好のシンボルになるといいですね」とお話になったのに対し、私は「ワシントンで桜は日米親善大使の最高の形ではないでしょうか」と申し上げた。
他国に目を転じると、残念ながらロシアが侵攻したウクライナで戦火が勃発し、平和の大切さを改めて問いかけている。そんな時代だからこそ、日米友好と平和の象徴となっているワシントンの桜をめでることができることの貴重さを噛みしめるとともに、日米両国の友好という花も満開であり続けてほしいと強く思った。
(連載コラム「“鉄分”サプリの旅」の次の旅をどうぞお楽しみに!)