旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2022年3月1日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

モネの名画がモチーフ。「メズム東京」で楽しむアート感覚のアフタヌーンティー

名画をモチーフにしたアフタヌーンティーの第5弾は、印象派を代表する画家クロード・モネの作品。zoom
名画をモチーフにしたアフタヌーンティーの第5弾は、印象派を代表する画家クロード・モネの作品。
巷では今、空前のアフタヌーンティーブームなのだとか。アフタヌーンティーを楽しむ「ヌン活」なる言葉まで生まれているのだそうです。ホテルやレストランでは旬のフルーツメインのものから、スイーツ自慢、和風まで、嗜好を凝らしたメニューが続々と登場しています。そのなかで、斬新さとアート作品を思わせる美しさで評判となっているのが、「メズム東京」のアフタヌーンティーです。

世界の名画をモチーフにした『アフタヌーン・エキシビジョン』
東京のウォーターフロントを一望できるロケーションに立つ「メズム東京、オートグラフ コレクション」で楽しめる『アフタヌーン・エキシビジョン』は、絵画をモチーフにした新感覚のアフタヌーンティー。およそ4カ月ごとにテーマとなる絵画が変わり、女性ばかりか美術愛好家、“おひとり男子”も訪れ、新作メニューを楽しみにリピートする人も増えているのだそうです。
『アフタヌーン・エキシビジョン』を楽しめるのは、16階にあるバー&ラウンジ「ウィスク」。zoom
『アフタヌーン・エキシビジョン』を楽しめるのは、16階にあるバー&ラウンジ「ウィスク」。
2020年11月には第1弾:ダリの「記憶の固執」を表現した『メモリー(Memory)』を皮切りに、第2弾:フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」を表現した『パール(Pearl)』、さらに第3弾:レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作「最後の晩餐」を表現した『サパー(Supper)』、そして先月までは第4弾:マネの「笛を吹く少年」をモチーフにした『ファイファー(Fifer)』と続き、その都度大きな話題をさらってきました。

「次回はいったいどんな作品が…?」とワクワクしながら待っていたところ3月1日から新メニューが登場すると聞き、さっそく出かけてきました。第5弾となる今回は、印象派を代表する画家クロード・モネの代表作「散歩、日傘をさす女性」の世界観を表現した『パラソル(Parasol)』。初夏の草原を彷彿させるビジュアルとともに爽やかな味わいが、これからの季節にぴったりの内容です。
アフタヌーン・エキシビジョン第5弾『パラソル(Parasol)』5,350円(税・サ込み)。zoom
アフタヌーン・エキシビジョン第5弾『パラソル(Parasol)』5,350円(税・サ込み)。
モネの生涯をスイーツとセイボリーでたどる
最初に運ばれてくるのが、モネの生涯をそのゆかりの地や時代にちなんだスイーツとセイボリーで表現したプレートです。

長さ50cm近くある木製プレートには左から、モネが誕生した1840年ごろにパリの菓子職人によって考案されたといわれる「サントノーレ」に始まり、晩年を過ごしたノルマンディー地方の郷土菓子「ミルリトン」まで、8種類が並びます。左から順に年表をたどるように食べ進めていくと、モネの一生がヨーロッパの時代背景とともに蘇ってきます。甘さとしょっぱさ、食感のリズムも楽しく、美術の教科書や展覧会などで断片的にしか知らなかった出来事が、パズルのピースを当てはめるようにつながってくるのを感じます。
「世界史や美術史の授業がこんな感じだったら、すごく楽しかったのになぁ……」と思わずつぶやいてしまいました。

ちなみにこのプレートの台座は、スタッフの一人がメニューに合わせて手作りしたものなのだとか。まさに、ここでしか味わえない唯一無二のメニューというわけなのです。
左上/サントノーレとピュイダムール、右上/サバランとスコーン、左下/ヴィクトリアサンドイッチケーキとフィナンシェ・サレ、右下/ガレット、ミルリトンの順に並ぶ、8種類のスイーツ&セイボリー。zoom
左上/サントノーレとピュイダムール、右上/サバランとスコーン、左下/ヴィクトリアサンドイッチケーキとフィナンシェ・サレ、右下/ガレット、ミルリトンの順に並ぶ、8種類のスイーツ&セイボリー。
ペアリングのモクテルは、酸味が心地よいフレーバーティー。レモンフレーバーの紅茶をベースにソーダとセルフィーユ、さらに梅の酸味がアクセントになっているのは、浮世絵に魅せられ日本びいきだったモネにちなみ、和のアレンジを加えたものだそうです。

爽やかな風が吹き抜ける野原と青空を、芸術的なケーキとモクテルで表現
モネは「日傘をさす女性」として3作品を描き残しています。その一連の作品から着想を得たケーキは、風に吹かれ波打つ野原に立つ、白いドレスの女性を表現したもの。
左/日傘をさした女性を表現したケーキ。右/初夏を青空を思わせるペアリングカクテル。zoom
左/日傘をさした女性を表現したケーキ。右/初夏を青空を思わせるペアリングカクテル。
風に揺れる野原はピスタチオビスキュイと食用花、草原の色に染まる日傘をピスタチオクッキー、柔らかな曲線を描く女性の上半身と風になびくベールはホワイトチョコ。また、風をはらんで膨らんだドレスは、フランスで親しまれているイチゴのケーキ「フレジェ」。女性が振り返った瞬間、ふわっと揺れるスカートのドレープを表現したクリームのフォルムも、芸術的な美しさです。クリームの下のケーキは、チェリーブランデーのシロップをしみ込ませたアーモンド・スポンジに、イチゴの果肉が入ったピスタチオクリームとピスタチオビスキュイ。イチゴの甘酸っぱさと濃厚なクリームの組合せ、しっとりとした食感は、大人向きの味わいといえるでしょう。

ケーキのモチーフになっている「散歩、日傘をさす女性」は、3枚の「日傘をさす女性」のなかで最初に描かれた1枚。妻カミーユと息子ジャンとの散歩中に二人を後ろから呼び止め、振り返った瞬間を写し取ったものといわれています。その鮮やかな情景が見事にケーキで表現されていることに感動を覚えました。

絵画の背景でもある、晴れやかな青空と白い雲、初夏を思わせる陽光を表現したのが、青色のペアリングモクテル。雲に見立てた綿あめの下のカクテルを太めのストローで吸い込むと、牛乳ゼリーとマスカットゼリー、ソーダが混ざり合って口のなかで軽やかに弾けます。一瞬、目の前に青空が広がったような爽快感です。
ウォーターフロントを一望できる「メズム東京」。レセプションとレストラン&バーがある16階から眺める景色も楽しみのひとつ。zoom
ウォーターフロントを一望できる「メズム東京」。レセプションとレストラン&バーがある16階から眺める景色も楽しみのひとつ。
レシピを考案したマスターキュリナリーアーティスト(パティシエ)の養父直人(やぶなおひと)さんにお話を伺うことができました。
「モネの生涯と作品を年表にまとめ、その世界観をどうやってレシピで表現するか考えました。少々大げさかもしれませんが、彼の画家としての喜びや苦悩も追体験しているような錯覚に陥ったんですよ。苦心した部分もありましたけど、満足できる仕上がりです」と養父さん。すでに新作の構想もあるとのことで、早くも第6弾が楽しみになっています。

寒く長かった冬もそろそろ終わり、確実に春が近づいていることを感じたこの日、「メズム東京」の『アフタヌーン・エキシビジョン』で、季節を先取りする「ヌン活」を楽しんだひとときでした。

◆アフタヌーン・エキシビジョン
メズム東京、オートグラフ コレクション16階 バー&ラウンジ「ウィスク」
東京都港区海岸1-10-30
TEL 03-5777-1111
3月1日(火)~6月30日(木)の平日限定・14:00~/15:00~(2日前の22:00までに要予約)
https://www.mesm.jp/restaurant/whisk.html
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
risvel facebook