旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2022年2月8日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

島旅・五島 #3 おやつタイムも楽しみな爽快サイクリング

絶景ビーチだけじゃない、ツリートンネルがある森のコースも走るサイクリングツアー。zoom
絶景ビーチだけじゃない、ツリートンネルがある森のコースも走るサイクリングツアー。
離島の旅を満喫するには、島内での足の確保が大きな課題。五島列島で唯一、航空機の定期便が就航する長崎県五島市の福江島では、島内の見どころを巡る観光バス以外では、レンタカーかタクシーが交通手段になります。でももうひとつ、忘れてならないのがサイクリングというチョイス。歩くよりずっと早く、風を感じて走る自転車は、気になった場所でいつでも立ち止まれることも魅力。そんな爽快感を味わいたくて、プロのサイクリストが案内してくれる、サイクリングツアーに参加してきました。

地元の人にも人気のベーカリーでチェックイン

日本有数の美しいビーチに囲まれ、豊かな緑の森にも恵まれた福江島。その見どころとともに、ガイドブックに紹介されていない秘密の絶景スポットまで連れて行ってくれるのが、サイクリングガイドのウィリアム・リュウ(通称、ウィル)さんのツアーです。
ツアーを主催するベーカリーと、サイクリングガイドのウィルさん。使用するのは九州生まれのスポーツバイク。※ツアーにより集合場所は異なる。zoom
ツアーを主催するベーカリーと、サイクリングガイドのウィルさん。使用するのは九州生まれのスポーツバイク。※ツアーにより集合場所は異なる。
ニューヨーク生まれのウィルさんは、サイクリングガイドのエキスパート。福岡を拠点にして活動中に訪れた福江島が気に入り、移住してしまったのだそう。わずか1年足らずで島の人にもすっかりなじみ、人気ガイドとして活躍しています。もちろん、日本語は堪能だから、言葉の心配はなし。英語、中国語、五島弁でも対応してくれますよ。

今回のツアーのチェックインと集合場所になっている「wondertrunk & co. travel・bakery(ワンダートランク・トラベル・ベーカリー)」は、古民家のベーカリー。天然酵母を使ったハード系のパンは地元の人にも人気で、午前中に売り切れてしまうこともあるそう。事前に予約後、ここで参加手続きをし、ウィルさんからツアーの概要と見どころのレクチャーを受けます。

参加者の希望と体力に応じてコースをアレンジ

ツアー所要時間は3~5時間。予約申し込み時に希望するコースのエリア、体力やレベルを伝えて相談できるので、自転車に乗れれば運動オンチでも心配なし。また当日、島の地図と見どころの写真を見せてもらいながら、「ここは見てみたい」「やっぱり、こっちがいいわ」なんて、気まぐれなリクエストにも、可能な限り対応してくれます。

今回はスポーツバイクに乗るのが初めてであることを伝え、コースを組み立ててもらいました。人気のパンで軽く腹ごしらえをして、いざ出発!
森を抜けるとその先に広がる絶景ビーチ。安定感抜群のスポーツバイクは、こんな道でも楽に走れる。zoom
森を抜けるとその先に広がる絶景ビーチ。安定感抜群のスポーツバイクは、こんな道でも楽に走れる。
ママチャリより軽くて扱いやすいスポーツバイク

使用する自転車は、福岡県の「Bike is Life」が製造するスポーツバイク。参加者の身長やレベルに合わせてウィルさんがバイクを選び、サドルの高さも調整してくれます。ママチャリか電動アシスト付き自転車しか乗ったことがない私は、高めのサドルとまっすぐなハンドルが不安だったのですが、実際に乗ってみたらんなと楽なこと! 車体は軽くて扱いやすく、舗装されたアスファルト道路はもちろん、デコボコ道でも抜群の安定感を発揮します。ギア付きなので、坂道もスムーズ。

最初に向かったのは、トップの写真にある森の中のツリートンネル。海に囲まれた島に、こんなに深い森があったとは、驚きです。
石垣が続く風景は、どことなく沖縄の小さな集落にも似ている。zoom
石垣が続く風景は、どことなく沖縄の小さな集落にも似ている。
ほおにあたる風にのって、どこからか甘い花の香りが漂ってきます。その香りを楽しみながらしばらく走ると、視界が開けた先には深いブルーの海! 海と森、まったく異なる景色が、この島にあることを知りました。
海が見える場所にバイクを止めて、コーヒーブレイク。zoom
海が見える場所にバイクを止めて、コーヒーブレイク。
お楽しみのおやつタイムは、薫り高いコーヒー&熱々のかんころもち

島の絶景とともに、このツアーのお楽しみがウィルさんおすすめのスポットで過ごす“おやつタイム”。小さな集落でウィルさんが立ち寄ったのは、地元の女性が営む「かんころもち」の工房。「かんころもち」とはサツマイモを練り込んだおもちのことで、五島の郷土料理のひとつです。突然の訪問だったのですが、「もう少しで焼きあがるから、あとで取りに来てね~!」と、うれしい差し入れの申し出がありました。

この日の休憩スポットは、海に面して建つ小さな東屋。地域の人が会合やバーベキューなどに利用している場所ですが、「ご自由にお使いください」の張り紙があることに驚きました。その場で挽いた豆から淹れるコーヒーと、差し入れのかんころもちを味わいながら海を眺めて過ごすひとときに、日ごろの疲れも凝りもみるみるほぐれていくのを感じます。
「自然のなかを一緒に走り、コーヒーを味わいながら、ゆったりした時間も過ごしてもらいたい。おしゃべりもたくさんして、島の自然や歴史のすばらしさを伝えることができたらうれしいな」とウィルさん。
ウィルさん自らコーヒーを淹れてくれる。スペシャルな差し入れのかんころもちが、この日のおやつ。。zoom
ウィルさん自らコーヒーを淹れてくれる。スペシャルな差し入れのかんころもちが、この日のおやつ。。
ほかにも、洞窟を訪れたり、川遊びを楽しんだり、ミニキャンプを体験したり、さまざまなコースがあるのだそう。さらに新しいコースやスポットもどんどん増やしてくため、ウィルさんは島中を自転車で走っているといいます。
移住からおよそ2年、すっかり島になじんでいるのは、フレンドリーで誠実な彼の人柄とともに、地元の人々のおおらかさもあるに違いありません。その相乗効果がもたらす感動もまた、五島ならではの魅力です。レンタカーや観光バスでは決して体験できない爽快感と充実感を味わったひとときでした。

■wondertrunk & co. travel・bakery(ワンダートランク・トラベル・ベーカリー)
長崎県五島市富江町田尾1302
TEL 0959-86-3151
ベーカリー8:00~12:00、サイクリングツアー10:00~15:00
※イートインは休止中。
水曜~金曜休
https://www.jp.wondertrunk.co/island-cycling-tour
★注:ツアーにより集合場所が異なります。
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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