旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2019年11月16日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

台湾・台中に誕生した温泉渓谷の楼閣『星のやグーグァン』 【前編】星野リゾートがプロデュースするラグジュアリー温泉リゾートで極上のリラックスタイム

山上のラグジュアリー温泉リゾート『星のやグーグァン』は、星野リゾートが手掛ける2軒目の海外施設。zoom
山上のラグジュアリー温泉リゾート『星のやグーグァン』は、星野リゾートが手掛ける2軒目の海外施設。
日本から約4時間でアクセスできる便利さもあり、相変わらず人気が高い台湾。その台湾第二の都市・台中郊外に2019年6月30日に開業したのが、『星のやグーグァン』です。ここは星野リゾートが台湾で初めてプロデュースしたリゾート施設。海外の施設としては、2017年開業の『星のやバリ』に続き2軒目になります。
九州とほぼ同じ広さの国土に富士山より高い3000m級の山々が連なる台湾は日本同様、温泉大国。100カ所以上の温泉地があり、泉質のバリエーションも豊富。しかも、明治時代の日本統治下に温泉文化が持ち込まれたと聞けば、なおさら親しみが湧いてきます。そんな期待を胸に、出掛けてきました。

3000m級の山々に囲まれた台中・谷關温泉のラグジュアリーリゾート
『星のやグーグァン』がある谷關(グーグァン)温泉は、台中から東に約60km離れた標高約800mの山岳地帯。周囲を3000m級の山々が囲み渓流に沿って開けた場所は、ここを通らなければどこへも行けない関所のような立地であることから、この名が付けられたのだそうです。
渓谷がもたらす湧水と豊かな温泉を活かした施設内。ゲートから竹林を抜けるとエントランスが現れる。zoom
渓谷がもたらす湧水と豊かな温泉を活かした施設内。ゲートから竹林を抜けるとエントランスが現れる。
台湾の人たちにとっても身近な温泉。日本のように温泉を引いたホテルや日帰り入浴施設はたくさんあるものの、意外なことに温泉、宿泊、食事、アクティビティが同一施設内で完結するリゾート施設は少ないのだとか。そんな環境に、星野リゾートが台湾で初めてプロデュースして誕生したラグジュアリー温泉リゾートが『星のやグーグァン』です。
コンセプトは“温泉渓谷の楼閣”。谷關温泉のいちばん高台に位置するため、ここから先に人工物は一切ありません。自然の地形を活かした敷地内には深い谷から湧き出る水が配され、この場所に自生していたランダイスギなどの植物もできる限り残しているとのこと。自然と共鳴するような配慮がなされた建物には台湾と日本の建築様式を取り入れ、これが見事に融合しているのが感じられます。

すべての客室が源泉かけ流しの半露天風呂付き!
客室は全50室。そのすべてが、自家源泉かけ流しの半露天風呂付きという贅沢さに驚かされました。チェックインすると湯舟にはすでにお湯が満たされ、到着後すぐに旅の疲れを癒すことができます。そして、ほとんどの客室がリビングと寝室、浴室のフロアが分かれたメゾネットタイプ。まるで一軒家にいるような感覚です。寝転がって寛げるスペースを設けたリビングには床から天井まで開けた窓があり、周囲の山々やビオトープ風のウォーターガーデンを一望できます。
なかでも、他の客室の約2倍の広さがある温泉フロアを備えているのが『月見』。半露天風呂にはゆったりとしたソファが置かれ、い草の香りが心地いい畳敷きの湯上り処も設けられています。
他の客室の2倍の広さがある浴室フロアを備えた『月見』。心ゆくまで温泉を楽しんだら、天井まで開けた窓から広がる景色を眺めながらまどろみの時間を。zoom
他の客室の2倍の広さがある浴室フロアを備えた『月見』。心ゆくまで温泉を楽しんだら、天井まで開けた窓から広がる景色を眺めながらまどろみの時間を。
今回、おひとりステイの私はスタンダードタイプの客室に滞在しました。こちらもメゾネットタイプで、ひとりには十分すぎるほどの広さ。洗面台のシンクが2つあり、定員の2名で宿泊してもゆったり過ごせます。夜は星空を、翌日は早朝、昼間、夕刻と、緑が眩しいウォーターガーデンを眺めながら温泉を満喫。入浴後には上の階にあるリビングフロアに寝っ転がり、時間とともに少しずつ趣が変わる景色を眺めながら、ゆるりとした時間を過ごしました。
また、一部メゾネットタイプではないフラットな客室もあるので、階段の上り下りが億劫な年配の方も心配ありません。2つのベッドルームで4名まで滞在できるため、子供連れのファミリーにもおすすめです。
すべての客室が源泉かけ流しの半露天風呂付き。こんこんと流れ出る温泉から豊富な湯量がうかがえる。zoom
すべての客室が源泉かけ流しの半露天風呂付き。こんこんと流れ出る温泉から豊富な湯量がうかがえる。
水音と風が流れ、光に癒されるパブリックスペース
高台に立ち、周囲を囲む山々以外に遮るものがないロケーションにある『星のやグーグァン』は、豊富な温泉とともに湧き水にも恵まれた場所。尾根の上にありながら比較的平らな地形であることから、敷地全体が「水の庭」のような設計になっていることも特徴です。どこにいても水の気配と風の流れ、光を感じることができ、とてもよい気が流れていることが感じられました。客室内の温泉だけでも十分、楽しめるけれど、湯上りのひとときや、ダイニング、レセプションフロアへ移動するときなど、のんびりと散策しながらこの気持ちよさを味わってみたいものです。
風と光が通り抜けるようにデザインされたパブリックスペースのひとつ『風の間』。zoom
風と光が通り抜けるようにデザインされたパブリックスペースのひとつ『風の間』。
ジャパニーズ・スタイルの大浴場で“美肌の湯”を存分に!
谷關温泉の泉質は無色・無味の弱アルカリ性炭酸水素塩泉。肌への刺激が少なく、“美肌の湯”とも呼ばれているのだとか。さらりとしていて一見、普通のお湯のようですが、浸かってみるとあたりがとても穏やかで、肌を滑らかに潤してくれるのがわかります。短時間の入浴でもじんわり温まってきて、冷え性の悩みも解決してくれそう。

台湾の温泉は基本的に男女混浴で、プールのように水着着用が一般的なのだそうですが、ここの大浴場は男女別に分かれ、水着なしで入浴できる“ジャパニーズ・スタイル”。
「せっかくの美肌の湯に、水着で浸かるのはなんだかもったいないわ」なんて、心配は無用です。湯上りには廊下に備え付けられたソファや緑が見渡せる湯上り処でくつろいだり、ウォーターガーデンを散策したり。台湾茶やコーヒーが用意されたライブラリーで思い思いの時間を過ごすのもいいでしょう。
露天風呂付きの男女別大浴場。水着は必要なく、日本の温泉と同様にゆったりくつろげるのがうれしい。zoom
露天風呂付きの男女別大浴場。水着は必要なく、日本の温泉と同様にゆったりくつろげるのがうれしい。
ここでは温泉はもちろん、食事や谷關の自然と文化を体験するプログラムも用意されています。次回の【後編】では『星のやグーグァン』の食の楽しみとアクティビティをご紹介します。

●星のやグーグァン
台湾台中市和平区博愛里東關路一段温泉巷16号
TEL 0570-073-066(星のや総合予約)
料金:1泊18,000台湾ドル~(1室あたり、税・サービス料別、食事別)
※1台湾ドル=約3.60円(2019年11月現在)

アクセス:台北松山空港より台北駅で乗り換え、高速鉄道・台中駅から車で約90分/台中国際空港から車で約90分(台中からの有料送迎も可能)
https://hoshinoya.com/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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